第23話 モノローグ.2
結局のところ、全ての原因は私の姉、茜にあると思う。
私に姉がいたなんて初耳?そりゃそうよ。誰にも話していないんだから。
何があって私たちが児童養護施設に引き取られたか、詳細はよく知らないし、思い出したくもない。私たちの両親は私たち姉妹を虐待していて、食事もまともに与えなかった。サンドバッグがわりにされていた。
姉が通報したことにより、通報の翌日には、私たちは市の職員の人たちに発見された。
そうして私たちは、あの腐った環境を抜け出して、児童養護施設『葉光園』に入った。
私の姉はどんな人だったかって?簡単にまとめれば、今の響みたいな人よ。そう。あなたのお察しの通り響も『葉光園』の一員。でも私たちと出会った頃は、今みたいな感じじゃなかった。
そう。私の姉が、彼女を変えたのよ。
姉の話では一番印象的なのは……あの雪の日のことかしら。
この辺では珍しく雪が降ったあの日、私たちはみんなで公園に行った。みんなで雪合戦をしたり、雪だるまを作ってみたり……楽しい思い出よ。
でも帰り際、事件があった。
姉が犬を連れてきたのよ。見るからにみすぼらしい、捨て犬をね。
うちの施設は、それまでペットを飼うことはしてこなかった。
だから今回も慣例に従って、姉に元の場所に戻すように職員は伝えた。
でも、姉は意思を曲げなかった。犬を連れて帰るまでは、テコでも動かないっていう態度をとった。
それを見てね、周りの子供達も同調し始めた。可哀想だろ。連れて帰ろうよって。その声の中には、響も混ざっていた。
それだけなら、職員が諭して終わり。でも姉はそこで終わらせなかった。
飼育係を自分たちで決めて、しっかり飼うと決めたのよ。他の子供達も賛成した。
これを見て職員も折れて、子犬は引き取られた。少なくとも私たちがあそこを出るまでは、子犬は生きていた。
姉は他にも色々な事をした。といっても、その内容は大体が子供達のいざこざの解決だけどね。でもそれが、彼女に一つの看板を背負わせた。
正義の味方っていうね。
そんな姉には、たくさんの人が味方した。中には真似する子供達もいた。響みたいにね。
そうして月日は流れ、私たちにとっては事件があった。
私が小学一年になる頃、私たちの両親が、私たちを引き取りたいって言い出した。
さらに言うと、今の私の両親が私たち二人を引き取りたいって言ってくれた。ほぼ同じタイミングでよ。
私は断然今の両親に引き取られたかった。だってそうでしょう?自分たちに暴力を振るった相手よ。でも姉は、実の両親に希望を抱いた。
だから私たちは姉妹なのに、別の家族との交流を始めた。
最初は順調だった。姉も毎日生き生きとしていた。私の心配も杞憂だったのかと思うぐらいにはね。でも、お互いがお互いの家に引き取られてから、事件は起きた。
姉が自殺したのよ。自分が通う学校の屋上から飛び降りてね。
何があったかは簡単にわかるでしょう?暴力を振われたのよ。結局、あの人たちの微笑みは嘘だった。
姉を知る全ての人が、彼女を惜しんだ。そして一部の人が、姉の真似事をしていた人達が、彼女の意思を継ぐためなのか、その姿勢をさらに強めた。
そうして、あの星川響が完成したのよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます