第5話 襲来

それから六日間のことを話そう。

 側から見ると、星川のクラス運営は、成功していた

 授業中や休み時間にとてもうるさかった乃田達が、授業中静かになった。乃田となにかパイプでもあったのか、とても円滑に。


乃田には聞いてみたが、彼女は曖昧な笑みを返すだけ。それ以上を聞こうとすると、


「お前もこれを望んでたんじゃないのか?」


と、浦山に言われる始末で、答えを引き出せない。でも僕を止めた浦山に聞いてみても、「何もしらねぇよ」という答えしか来ない。おまけに嘘はついていないように見えるのだ。


つまり、なぜ乃田がああいう動きをしたのかわからない。だが、いずれにせよわかることはある。


 星川は只者ではなかった。


 しかし、委員として目立つ仕事は、特になく、なんの問題もなく、全ては進んでいた。

 一週間後、いつもと同じように起きて、いつもと同じように朝食をとり、どっかの外相の発言がセクハラだーとか、ある会社が、リコールを出したとかのニュースを見て、着替えて、玄関の扉を開けた。

 三階建てのアパートから見えるいつもの景色が、そこにはなく、最近見慣れたばかりの学級委員の顔があった。


 「おはよう、浅井」


 開けたばかりのドアを閉める。


 「いや、ちょっと待って!」


 バタン、という音と共に、ドアが閉まる。


 「どうしたの?」


 母親に不審がられてしまった。


 「なんでもない」


 というか、そういうしかない。

 再び、ドアを開ける。


 「怒った?」


 「怒ってない」


 そんな、眉間をぴくつかせて言われても……


 「あら、お友達?」


 しまった、母親に気づかれた! こういうとき、母親は必ずと言っていいほど絡んでくる。

 つまりめんどくさい。


 「祥、一緒に行きなさいよ。友達いないでしょ、あんた」


 そんなに人の痛いところを突くのは親だとしても、いや、むしろ親だからダメだと思うのだが。


 「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて息子さんをお借りします」


 星川がいつもの無表情ではなく、口元に笑みを浮かべている。

 いやいや勝手に話を進めるのはやめましょうよ!


 「ちょっ、待って……」


 バタン、という音がして、ドアは無慈悲に閉まった


 「さあ、行きましょうか」


 ニコリと笑った星川。


 「お前のせいで、調子狂ったよ……」


 と、小声で悪態をついたが、意に介されなかったようで、星川は歩き出した。しかし、数歩歩いて、振り返り、


 「何か問題でも?」


 聞かれてたのかよ。


 「なんでもない」


 僕はそう答えて、歩き出した。

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