第9話 高校生2

「皆さんこんにちは自分です」

「今回は夏祭りの話ををしたいと思います」

「それで始まります楽しんで行ってください」



海に行った日、今年も夏祭り一緒に行こうと約束してから、数週間が経ち今日は夏祭り当日だ。

今年も近所の神社で夏祭りは行われる、もちろん花火もある。

近場なので、待ち合わせはいつも通り家の、前ということになっている。

今年こそ、彼女 悠見雪花ゆうみゆきかより先に待っていてやると思い、20分前に家を出たのだが、そこには、もう待ちくたびれたかのように雪花が待っていた。

「本当に、雪花何分前から待ってんの?」

そう眼鏡をかけ、前髪のサイドを伸ばし、後ろ髪を団子状に纏めている彼女に聞いた。

「ふふ、ナイショ! あなたじゃ一生かかってもわからないよ、だってあなた鈍感だもん」

少しバカにしているのか、表情は微笑んでいた。

すると雪花はそんなことより、というような表情で、前髪のサイドを弄りながら。

「どうかな今日の浴衣、似合って、るかな?」

黒色の浴衣にデザインはアサガオが入っている。

うんとても良い、色合いといいデザインといい、綺麗であり、少し天然というかドジというか、そんな雪花に似合っている。

それに中学の時は、気にならなかったが、雪花のうなじとてもいい、なんというか、色気を感じるというか、流石に本人は言えないが、とてもいい。

そんなことを考えていると、雪花が。

「ねぇどうなの? 項ばっか見てないで感想頂戴よ、あ、ちなみに項見ていた分でもう1個何か奢ってね。」

ええーと思いながら、でも項見れたし、項見て怒ってる雪花も見れたし、何か奢ればチャラなら安いもんだ。

「うん、奢るのは別にいいよそれより感想だよね」

奢るのはいいよと言った時、小声でやった、と聞こえた気がしたが無視する。

「うん、めちゃくちゃ似合ってると思うよ、色合いとデザイン、全部いい! それに可愛い!」

一昨年恥ずかしくて、言えなかったこと全部言ってやった。

「あ、ありがと! やっぱりあなたに可愛いって言われると、凄く嬉しいと同時に、凄く照れる」

頬赤くしながら、そんなことを言う雪花を見ていると、こっちも照れくさくなってきたので、話を切る。

「と、とりあえず神社向かお!」

そう言いながら、歩きだす、雪花は後ろを付いてきた。


神社に向かう途中、雪花に何を奢れば良いのか聞いた。

「今年は何を奢れば良いの? またわたあめと、たこ焼き?」

そう聞くと雪花は、またもや照れながら。

「こ、今年はね、わたあめはいらない、食べ物はたこ焼きだけでいい」

「そ、その代わりね、2つ私の言うこと聞いてほしいの!」

2つ、少し怖かったが、まぁ雪花になら何されてもいいしと思い返事をした。

「うん、いいよで何をしたらいいの?」

こんなあっさりいいよと、言うと思っていなかったのか、驚いた表情で、前髪のサイドを弄りながら。

「1つは神社に着いたら言うね、もう1つはね、い、今から家に帰るまで手を繋いでいてほしいの」

そんなこと何か変な権限使わなくても、頼んだらしてあげるのにと思いながら、手を伸ばす。

少しすると雪花も手を伸ばし、手のひらを重ね歩きだす。


それから少し歩き、神社に着くやいなや、たこ焼きの屋台を探す。

たこ焼きの屋台を見つけ、たこ焼きを買い、どこか座れる場所を探す。

すると、一昨年雪花と隣同士で座った場所を見つけ、すぐさま座る。

たこ焼きを食べている、雪花を見ながら和んでいると、突然つまようじをたこ焼きに刺し、自分の口元に近づけてくる。

「一昨年やった時は、これは、恋人同士がやるもんだしー、とか言ってたけど私たち今はもうれっきとした、恋人同士だし、堂々とできるよね」

なぜか笑顔でそう言う雪花に一応聞いてみる。

「これ間接キスってことになるけど大丈夫?」

そう聞くと雪花は。

「むしろしたいぐらいだし。」

一瞬下を向きながら、何かを言ったような気がしたが、聞き取れなかった。

「これがもう一つのお願い?」

これを聞いていなかった。

「違う、むしろしてあげるんだから、感謝してよ!」

これだけ頑固に言われると、恥ずかしい気持ちはどっかに行き、自然と口を開けていた。

雪花のアーンという声と同時に口の中にたこ焼きが入れられた。

それで終わりかと思っていたのだが、雪花の顔をみるともう一回と言わんばかりに、こちらを見ている。

しょうがないなと思いながら、口を開ける、次は声はなかったが、たこ焼きが近づいてくる。

口に入る直前、雪花が自分の耳元で。

「大好きだよ」

と囁きかけた。

こんなにも近くで、好きなんて言われたことがなかったので、思わず動揺してしまい、雪花から目をそらす。

雪花も照れているようでこちらから、目をそらす。

しばらくすると、動揺が収まり時間を見てみると、もうちょっとで花火が始まってしまう時間だった。

急がなくちゃと思い、雪花の腕を掴み、無理矢理もう一度手を繋いだ。


少しだけ歩き、花火がよく見える位置まで来た。

すると雪花が喋り出した。

「最後のお願いなんだけどね!」

前髪のサイドを弄りながら、こちらを見ている。

「ここでできることなのか?」

目を合わしてくれているのだから、こちらも目を合わせなければ、そう思いながら雪花の目を見ながら質問をした。

「うん、ここで、できる逆にここじゃないとできない」

「あのね、花火が始まったら、私が手を離すから、そしたらこっちを向いてほしいの」

「え? それだけでいいの?」

「うん、それだけ」

本当に恥ずかしいのか雪花は、右手で前髪のサイドを弄り、左手で胸元を隠し、頬を赤く染め、目線を外し、俯いている。

雪花がいつもやっている、照れ隠しを全て同時に見れたのは、奇跡かと思い、記憶の絶対忘れない所に記録した。

そんなことを考えていると、花火が始まった。

雪花が手を離したら、雪花の方を見ればいい、再確認して花火を見る。

しばらくすると、雪花の手が離れた、すぐさま雪花の方を見る、暗くて雪花がいるのかわからない。

すると、自分の両肩に手が乗り、何!? と一瞬びっくりするが、そのような驚きは一瞬で消し飛んだ。

両肩に乗った手で、体が雪花がいる方へと引き込まれる。

すると、自分の唇に何か柔らかなそして少し暖かいものが触れた。

その後タイミングを計っていたかのように花火が、ドーンと大きな音を立てて暗かった空中を明るくしてくれた。

明るくなった瞬間、自分は目を開いた、そこには、雪花の顔があった。

花火の明かりがなくなると、唇に触れていたものは離れていく。

もう一度花火が打ち上がり、辺りが明るくなる、雪花の方を見てみると、もう一度と言いたげに、上目遣いでこちら見ていた。

花火の明かりがなくなり辺りが暗くなったのを確認してから、少し雪花に近づき、ゆっくりと顔を近づけ、雪花の唇に、自分の唇を重ねた。

次の花火が打ち上がるまでの、5秒間ほど、唇を重ねあわせていた。


それから、花火を見ている最中も、帰り道でも自分と雪花は無言で帰っていった。

家の前に着くと、雪花が喋りだす。

「今日は楽しかったね、また来年行こう」

まだ照れているのか、こちらとは目を合わせてはいない。

かくゆう自分も動揺が収まらないの。

「そうだね」

としか返せなかった。

今日はもうこれで別れると思っていたのだが、雪花は続けて喋りだす。

「今回は全然できなかったけど、来年の夏祭りは、花火中ずっとキスしてよ!」

そんなこと言われると思わず、やっと収まり始めてた動揺もマックスまで、戻り顔熱くなってしまった。

雪花もそれは同様のようで、一目散に家に入っていった。

それを見て自分も走って家に帰っていく。




「皆さんどうでした?夏祭りの話」

「次はクリスマスの話です」

「それでは次の話でお会いしましょうさよならー」

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