第6話 中学生3

「皆さんこんにちは自分です」

「今回はクリスマスの話そして⋯⋯」

「それでは始まります楽しんで行ってください」



夏祭りの日から数ヶ月が経ち、季節は冬になり、12月に入っていた。

数ヶ月経った、今もあの夏祭りの日の、ドキドキが何だったのかは、わかっていない。

そんなある日の通学路で悠見ゆうみ 雪花ゆきかといつもどおり、一緒に登校している時のこと。

雪花は髪型を少し変えていた。

髪を以前は肩につくかつかないかぐらいの長さだったが、今は少しだけ伸ばし、肩に余裕でつくぐらいの長さになっている。

「ねぇもうちょっとで、あれくるじゃない?」

髪を耳にかきあげながら、目線は雪花自身の足元を見ながら、聞いてきた。

可愛い、けど あれとは? そんな風に思いながら、普通に聞き返した。

「あれって何?」

そう聞き返すと雪花は上目遣いで、眼鏡の奥にある尖っているもので睨みながら。

「もう! 毎回毎回、何で私が誘う側なの! 1回ぐらい察してよばか」

そんな風に言われると、真剣に考えなきゃなー、意外とすぐに答えは出た。

クリスマスだ、そうとわかったらすぐ雪花に聞かないと。

「雪花が誘って欲しいのって、クリスマスのこと?」

俯きながら、少し頬も赤くなっているだろうか。

「うん、そうだよやればできるじゃん」

小声だったので、うん以外は聞き取れなかったが、まぁいつものことなので気にしない。

「でもクリスマスっていっても、毎年自分と雪花の家合同で、何かしらやってるから、何も新鮮味なくない?」

自分がクリスマスに気づかなかったのは、それが理由だ、クリスマスに雪花と過ごすのは当たり前で、わざわざ誘うというのが無いのだ。

「そうなんだけど、だからその⋯⋯」

もじもじしながら何かを言おうとしている。

「だから、今年は2人で過ごしたいなって!」

おおー言えたと思わず、拍手しそうになるが、無理矢理とめる。

冷静に考えてみると、2人で過ごしたいってことは、両者の家は無い、どちらも親が家にいるから。

ってなると外になるが、この辺クリスマスっぽいことしてる店なんて、無いしどこに行くというのだろう、結論が出たところで雪花に聞いてみる。

「この辺クリスマスっぽいことしてる店なんて、無いけどどこ行くの?」

雪花はまたもやこっちを睨めつけながら。

「場所とかは、どうでもいいの! とりあえず2人で一緒にいたいなって、そう思っただけ!」

なるほど、そういうことか。

「いいよ、別にそれぐらいじゃあ、クリスマスの日あの神社に出かけるでいい?」

そう聞くと、雪花は満面の笑みで。

「うん!」

今までの雪花からは想像できないぐらい、元気に返事をしてきたので、思わず可愛いと思ってしまう。



それから数週間が過ぎ、クリスマス当日2人で神社まで向かっていた。

「なー雪花」

「うん? 何?」

「自分さー家を出るとき親が、ニヤニヤしながら送り出してくれたんだけどさ、雪花の親はどうだった?」

こんなこと初めてだった、親に雪花と遊びに行くと、いつも決まって、きおつけてとしか言わない親が、わざわざ玄関まで来て、しかも頑張るのよ、とか言ってきた。

何を頑張ればいいのか全くわからない。

「私の親もそんな感じだったけど、な、な、なんだろうねー、大人の考えることはよくわかんないからなー」

俯きながら、頬赤くしてそう言った。

「本当に大人の言うことはわけがわからないよなぁ」

そんなこんなで話していると、神社に着いてしまった。

神社に着いたら聞こうと、思っていたことを、雪花に聞いた。

「神社で何するの?」

単純な質問問いかける。

「いや何をするとかじゃ無いけど、まぁとりあえず座ろ」

慌てながら、言われると。

「あっうん」

としか返事ができなかった。

座る場所を見つけ、2人で座る。

しばらく2人とも無言だったが、無言の壁を壊したのは、雪花だった。

「今私寒くて、手が冷たいの、だから、あなたに手を暖めて欲しいんだけど!」

こっちをじーっと力強い眼力で見てくる。

そんな眼をされたら断るわけにもいかず。

スーッと手を出し雪花の手のひらに覆い被せ、手を繋ぐ。

手を繋ぐと夏祭りの日を思い出してしまう、あの日と同じ状況ならもう1回、あのドキドキがくるかもしれない、あれが何なのかわかるかもしれない。

そう思いながら、雪花の方を見るとさっきまでじーっと見ていた眼は、そっぽ向いている。

「言われた通りやったんだから、せめてこっち向いて欲しい」

向いていても向いてなくてもどちらも、いつもどおりの雪花なので、どっちでもよかったのだが、まぁせっかくなら顔をみていたかった。

「うー、わかったよ」

そう言いながらこっちを向く、可愛い、夏祭りの時と同じ感覚だ、雪花いつもの何倍も可愛く見える。

心臓もバクバク鳴り始めた。

何なのだろうと真剣に考える、いつも近くにいる雪花と、もっと近くになると、こんな気持ちになる、ってなると、近くにいるのが当たり前過ぎて、気づかなかったけど、ずっと前から雪花に恋してたのか。

やっと気付けた、雪花に恋をしたいた、だから最近やたらとドキドキしたいのかもしれない。

気付いてから雪花の顔を見るとさっきよりももっともっと可愛く見えた。

今すぐ気持ちを伝えたいが、もうすぐ受験生になる自分たちが、恋愛にかまけて高校落ちました、とかなったら、元もこうも無い。

だからこの日決めた、受験が終わり落ち着いた時、卒業式の日に告白しようと。


今日はもう帰ることになった。

神社からの帰り道、自分たちはまだ手を繋いでいた。

雪花は顔をこっちに向けてからずっと無言だった。

家の前に着くと照れ臭そうに喋りだした。

「今日は今までのクリスマスの中で1番楽しかった」

「うん、自分も」

どちらも少し照れながら会話をした。

自分は勇気を振り絞りこう言った。

「じゃあ高校入っても一緒に過ごそう!」

「うんいいよ!」

会話をし終わった2人は、手を離し家に帰って行く。



「皆さんどうでした? 自分が雪花に対する思いを完全に気づき、告白を決意する話」

「次は卒業式そして⋯⋯」

「それでは次の話でお会いしましょうさようならー」

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