第1話 目覚めと出会い
「うぅ⋯⋯」
俺はうめきながら目を開く。
そこには、金髪ロングの美少女の姿があった。
「ここは⋯⋯ どこ?」
周りを見渡しながら彼女にそう聞く。
「ここは、わたしの家。私は君を生命の森から拾ってきたの」
「生命の森?拾う?」
「ここはなんて言うとこ?」
「ヴァースランドよ」
何がどうなっているのかさっぱり分からない。
「君、名前は?」
「
「トウマね。私は、フレア・マリー。よろしくね」
マリーはそう言ってニコッと微笑む。
怪しい人ではなさそうだが、問題はそこではない。
なぜ俺は、このヴァースランドにいるのか。殺されたはずなのになぜ生きているのか。
「なぁ、マリー。どうして俺は、生命の森にいたんだ?」
「確実にとは言えないけど⋯⋯ 生命の森に別世界から死んだ人が送られてくるっていう噂は聞いたことあるのよ。恐らく、トウマはどこか別の世界で死んでここに送られてきたのかもしれないわ」
そう言いながら、彼女は俺の目の前に机を用意してスープを置く。
ギューゥ
スープのいい香りをかぐとお腹が鳴る。
「お腹すいてるのね。いいわよグリフィンピッグのスープよ」
グリフィンピッグ?聞いたことのない動物だ。
それに、知らない場所で口にするものは少し警戒する。さっき殺されたばっかりだし。
「なんで飲まないの?美味しいわよ?」
「い、いやぁ⋯⋯ その、毒とか入ってんのかなぁって⋯⋯」
「毒!?そんなの手に入らないわよ!」
そう言ってマリーはスプーンをもう一つ用意してスープをすする。
「ほら、毒は入ってない!証明したわよ?」
「お、おう。それじゃあ、いただくよ」
スープをすくい、おそるおそる口に運ぶ。
美味い!とんこつラーメンのスープのような味。グリフィンピッグは豚なのだろうか?名前にピッグが着いてるからおらくそうだろう。
「フゥ、美味かった⋯⋯」
「ほんと!?私、人に料理食べさせるの初めてだからドキドキしたわっ。ふふふっ」
マリーはとても嬉しそうにそう語る。
「マリー。ありがとう。おかげで少しだけ元気が出たよ」
そう言って立ち上がろうとする。
地面に足を着いてベッドから腰を浮かせる。
っと、バランスを崩して倒れる!
「うわぁぁ」
ドサッ
上手く立てずにマリーの上にかぶさる。
「んんっ」
なんだ?この甘い声は⋯⋯
顔に柔らかいものが⋯⋯ ムニュ
「きゃぁっ」
顔を上げると赤面したマリーがこっちを睨んでいる。
「トウマのスケベ!変態小僧!死ね!」
さっき死んだばっかなのに死ぬのは嫌だ!
「ご、ごめんって!立とうと思ったら上手く立ち上がれなくて⋯⋯」
「その癖に、下は一丁前に立ち上がったのね!」
ん?なんのこと?
マリーが俺の股間を凝視する。
「ど、どこ見てんだよ!」
「それに、丸一日昏睡状態だったんだから立てるわけないでしょ!」
丸一日!?たった数時間寝ていただけかと⋯⋯
マリーは俺の体を起こしてベッドに再び寝かせる。
「でも、俺はこれからどうすれば⋯⋯」
「うちに住めばいいわ!体調が治ったらお役所に住人登録しましょ!」
「と、唐突だな!」
「それに、お役所に行けば何か分かるかもしれないでしょ?」
それもそうだな。何もわからないままでは困る。ここは一つマリーの意見に従おう。
「分かった。明日にでも俺をお役所に連れて行ってくれ」
「分かったわ」
急に眠気が襲う。まだ体調が万全ではないらしい。
俺は、死んだように再び眠りにつく。
一年だけ死んでください 瀬戸内 光 @setouchi_book
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