第2話


= ボウリング場で頭を打って死ぬ =



また同じ夢を見た。ボウリング大会は終わったのに、また同じ夢を見た。

予知夢はまだ続いているのか?

もしかして、これから俺はボウリングによく行くようになり、

そのボウリング場でやっぱりコケて、頭を打って死んでしまうのか?

そんな不安がよぎった。


アルバイト先に行くと、いつもは会話もしない新聞配達員の人達が話しかけてきた。


『おっ、優勝おめでとう!』

『ボウリング、上手いねぇ!』


いつもなら話しかけても来ないオジサンたちが気軽に声をかけてくる、

まぁボウリング大会の翌日だから当たり前なのだが、

気になるのは、またボウリング大会があるのか?ということ。

話の流れで俺はボウリング大会はまたあるのか?毎年開催されてるのか?

ということをオジサンたちに聞いてみたのだが、

ボウリング大会自体が今回初めてで毎年やってることではないらしい。

俺はしばらくはボウリング場に行くことはなさそうだ。




= ボウリング場で頭を打って死ぬ =




…夢は続いている。やっぱり同じ夢を見る。

ボウリング大会は終わってるし、しばらくはボウリングに誘われる気配もない、

その夢が気になるから自分でボウリング場に行こうとも思えない。

意識的にボウリングは避けている。しかし、同じ夢は続いている。


数日後、俺が仕事からボロアパートに帰って来ると、隣に住んでる住人に会った。

俺はそのボロアパートの角部屋の101号室に住んでいる。

つまり102号室の住人だ。会話したことは無かったし、

その日も会話はしなかったが、

俺と同じくらいの歳の男性だった。背格好も俺と似ていた。

俺から話しかけてみようと思ったこともあったのだが、

その男性はすぐに家に入ってしまう。まぁ俺もそうなのだが…

ともかくお互い顔は知っていたが会話したことは無かった。




= 部屋の中でテレビを見ながら孤独死 =




見る夢が変わった、いきなり変わった、怖かった。

ボウリング大会が終わったから、

俺の死に方が『テレビを見ながら孤独死』に変わったんだと思った。

そうなると、もう逃れようがなくなった。

自分の部屋には必ず帰ってこなくちゃいけないし、暇だからテレビは見るし、

自分自身いつも部屋にいるし、孤独死は十分考えられる死に方だった。



= 部屋の中でテレビを見ながら孤独死 =


= 部屋の中でテレビを見ながら孤独死 =


= 部屋の中でテレビを見ながら孤独死 =



夢はやっぱり続いた。ボウリング場で頭を打って死ぬ夢は全く見なくなった。

タイミング的に予知夢を見てるのは間違いないと確信できた。


数日後、俺のボロアパートの102号室の引っ越しが行われていた。

俺は『あー隣の人、引っ越しちゃうのかー』ぐらいに思ったのだが。

その102号室の引っ越す男性とも話してみたかったなーとか、

もしかしたら友達になれたかもしれないなーと思い、

最後に102号室の男性に話しかけてみることにした。


…引っ越し作業をしばらく見ていたのだが、その男性の姿はなかった。

引っ越し業者の従業員と、おそらく不動産屋のスーツを着た人が

102号室の部屋を出入りするだけで、102号室の男性の姿はなかった。

俺は不動産屋のスーツを着た人に聞いてみた。



『いやいや、ここの102号室の方、亡くなってしまったんですよ、

なんでもボウリング場で頭を強く打って亡くなってしまったらしいですよ』



その瞬間、すべて理解した。

俺が見ていた夢は予知夢だったのは間違いないが、

それは『他人の死に方』の予知夢だったのだ。

怖かったし、隣の住人の死に方を先に知っていたんだという事に

俺はパニックになった。

不動産屋のスーツを着た人は変な目で俺のことを見ていた。


自分の部屋に戻り少し冷静になった。

まず、『予知夢は自分の死に方ではない』というのは理解した。

そしてまだ予知夢は続いている。

その日は予知夢の事が気になってなかなか眠りに着けなかった。

そのまま寝ずにアルバイトに行き、仕事を終えてボロアパートに帰ると、

さすがに疲れて眠りについた。

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