事件



事件はわたしとユミが睨んだ通り、リサイタルの日に起こった。


事件は、リサイタルが終わった後に発生。


ユミがトイレに行くために楽屋から出たときに、楽屋のドアを閉める前に何者かに後ろから鼻に(おそらく)睡眠薬が染み込まれた布をあてられて気を失った。


見張りについていた私も、その何者かに近づこうとした瞬間にまた別の誰かに後ろから襲われ眠らされた。



目が覚めたときには監禁されているわけでもなんでもなく、襲われた場所にそのままいるだけであった。



そこからの私とユミの動きは省略するとして、

結論を言うと、大変奇妙なことが起こっていた。


一見すると、ユミがドレスの胸元につけていたルビーは奪われていないかのように見え、ほっとしたかのように思えた。

しかし、ユミによると胸元のルビーはユミが先程まで身に付けていたルビーとは少し違うと言う。


なんでも、



というのだ。


ユミはいくつもルビーを持っているため、ルビーを見る目はたしかである。

そんなユミによれば、怪盗ルビィによってすり替えられたルビーは確実に本物であるしユミがもともと持っていたルビーより確実に上質なものだと言う。


ちなみに怪盗からの【お宝は頂いた】というような趣旨の手紙のようなものはまわりに何一つ落ちていなかった。



すり替えられたルビーにも、不審な点は特に見当たらず、警察に通報することはしなかった。

はあ。


ニセモノとすり替える怪盗はいても、もとより上質なものとすり替える怪盗なんていただろうか。


まあ、そんなわけで特に被害もなく(というより得をした)謎の事件は幕を閉じたわけであるから、私とユミはそのことを長い間すっかり忘れていたわけだが。




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