怪盗ルビィ

私は、10年前に起きた怪盗ルビィ事件の謎がやっと今解けたのでこれを記すことにした。





さかのぼること10年前___。


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大学時代からの親友のユミに謎の予告状が届いたのは数日前。

私がユミの親友でありミステリファンだから私に相談することを思いついたらしい。

言っておくが、ミステリファンであっても謎を解決することは苦手だ。というより出来ない。

まあ、大抵のミステリファンがそうである気はするけれど。


予告状は、朝起きたら家のポストに入っていたという。

ちなみに消印はディズニーランドに設置してあるポストに投函したときしか押されない限定の消印だったそう。

はあ、なかなかファンシーな怪盗である。

おそらく身元がバレないようにするためなのであろうが、もう少し他になかったのだろうか。

しかし、たしかにディズニーランドで投函するというのは上手い手のようには思える。


そもそもこのような怪盗が存在することが驚きであるし、宝石を身につけたら危害を加えると警告してくるとはなんだか親切である。

どうしてもユミの宝石が欲しいが暴行の罪は犯したくないというただの怪盗のエゴかもしれないが。


怪盗ルビィという名も、その場で作った感が否めない。

なぜなら、ユミが数日前に購入した宝石というのはルビーだからだ。

ルビーを盗むからルビィ。

ずいぶんと安直である。


もちろん警察は相手にしてくれなかった。


でも、多分この予告状はイタズラではないのだ。

ユミがルビーを購入したことを知っているのはほんの数名しかいないから。

おそらく、ユミの家族と恋人くらい。

私はというと、この予告状をユミに見せられてからユミがルビーを購入したことを知った。


そういうわけであるから、ユミは人間不信に陥りそうになっている。

自分の身近にいて信頼していた人物が自分から高価な宝石を盗もうと言うのだから当然と言えば当然であるが。

それに、キッドやらルパンやらのように日にちと時間を指定してくれればまだ良いものの、1週間以内という指定の仕方がより一層、ユミの恐怖を高めている。


真っ青になってしまったユミは、怪盗ルビィの言う通り忠実にその宝石を持ち歩かず、家に保管しているらしい。

とはいっても、私もユミも、この怪盗ルビィがいつ盗むかというのはなんとなく検討がついている。


そもそもユミがルビーを購入した理由は、近々ユミのピアノリサイタルがあるからだ。

ユミはそれなりに有名な若手ピアニストであり、コンクールでも何度か優勝したことがある。

期待の星という感じである。


ユミの誕生日は7月にあり、誕生石がルビーであるせいか、ルビーを身につけていると何事も上手く行きやすい傾向があると言う。

まあ、ユミの精神的なものによるものが大きいのだろうが。


そんなユミは、いつも、リサイタルの度に違うルビーを購入し身につける。

つまり、リサイタルの数だけルビーが集まるらしい。

今回もそういった理由でルビーを購入したのだ。

予告状が届いた日から1週間後に控えるリサイタルのために。

なんでも、いつもはリサイタルの1ヶ月前にはルビーを購入するのだが今回は時間がとれなくてギリギリになってしまったのだと言う。

だから、宝石店でも値段にしては質の悪いルビーしか見つけられず少し不満に思っていたため、盗まれるルビーが今回購入したものであることは、不幸中の幸いと言ったところらしい。


以上のことから、宝石が盗まれるのはリサイタルの日ではないかと思う。

わたわたしているであろう会場は、怪盗にとっては格好の仕事場(?)となるだろう。


キッドやルパンのようにすれば、少なからず会場の警備が強化されてしまうだろうから、「△▽月〇〇日〇〇時に宝石を頂く。」というようなマネは出来なかったらしい。

ずいぶんと小心者である。



ここで疑問点がいくつか。

①会場の警備を警戒するならそもそも予告状を送らなければいい。

②身につけたら危害を加えるといったようなことを書いたら宝石が外には持ち出されず(リサイタルの日に盗むのでなければ)家に忍び込むしかなくなってしまう。

外に持ち出してくれた方が盗みやすいのではないか。



ということである。


そして厄介なことがひとつ。

ユミは、リサイタルの日は絶対にこの宝石を身につけたいと言うのだ。

そうしないと失敗してしまうから、と。



さてここでもう一度予告状を確認してみよう。


「あなたが数日前に購入した宝石を1週間以内に頂戴する。

あなたがそれを身に付けていればあなたの身に危険が及ぶだろう。

しかし、そうでなければあなたに危害は加えない。


              怪盗ルビィ」



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