決勝戦 VS大仁チーム
7-1
二回戦から二日後、決勝戦の時が来た。
私たちが集められたのは、学校から少し離れたところにあるショッピングモール。その一階にあるイベント広場。
前回と同じで全館貸し切り。連休なのにお客さんも店員さんもいない。何度も出入りしてきた場所だけど、こんな風景は初めて見た。
どうしてここに? 答えはわからないし、どうでもいい。ものすごく腹の立つことがある。
「どうしたバカココ? お前だけで、ドッジロイドを引き連れてきたのか?」
妙にキラキラしたユニフォーム姿の
大仁君がいったとおり、いつもなら私のとなりに
二日前、海道君はプールで倒れた。今日も家で安静にしておかないといけない状態。大仁君だってそのことをわかっているはずなのに、調子に乗ったまま話し続ける。
「この大会は、人間を二人まで出していいことになってる。お前たちが二人だから合わせてやってたのになぁ。一人しか出ねえならいいぜ? おれたちは二人で行くけどな!」
うちは人間二人&ドッジロイド十人だったけど、今日は人間一人&ドッジロイド十一人。最初にツグミちゃんが私のそばからいなくなって、海道君まで……
九歳から十二歳までって決まりがなければ! マオさんが「私がもう少し年下なら!」とくやしがっていた。
そんなルールを守っているのは私たちだけかも。私は大仁君たちを見ながら考えた。
「そっちは二人っていうけど、その人は何?」
大仁君の隣にいる人は、背が高くてがっしりした体型で、ヒゲを生やしている。ニヤニヤした表情が大仁君そっくり。
「息子の大事な試合ということで駆けつけただけですぞ。わしの顔を覚えていませんかな?」
覚えている。というか、顔を見た瞬間にはっきりと思い出した。
「元大臣……!」
私は背の差があるけどにらまずにいられなかった。元大臣は、おどけたようにひるんでみせる。
「姫、そこまで敵対心をむき出しにしなくてもいいでしょうに。スポーツマンシップに乗っ取って試合をよろしくお願いしますぞ」
ニヤニヤを強める。気持ち悪く見えるほどに。
「おっと、試合の後は息子の嫁としてよろしくということになりますかな?」
冗談じゃない!
「どうして大人がユニフォームを着てそこにいるの! 参加できるの十二歳まで!」
「のけものにしないでほしいですなぁ」
元大臣は当たり前の突っ込みを受けたはずなのに、落ち着いたまま。
「わしの同級生は五十歳となっています。しかし、わしはまだ十二歳でしてな」
「どう見ても小六や中一じゃないよ!」
「小中学生ではありませんが、十二歳なのは本当です。二月二十九日生まれでしてなぁ!」
うるう年? 誕生日が四年に一回なら、同い年の人が五十二歳になる年やっと十三歳?
「そんな無茶苦茶、通るわけないよ!」
審判を見ると、首を横に振った?
「先日、新しい法律ができました。うるう年の日生まれは四年に一回カウントの年で扱われると」
何ですと?
大仁君はバカ笑い。元大臣も同じ。すごく似た声。ダブルで響いてくるのがうっとうしい。
「わしは政治の場を追われた身です。しかし、わしをしたう現役政治家もいましてな。そういう法を作ってくれたのですよ! 反対意見をドッジで押さえて!」
王国ではいろいろなことをドッジで決める。変な法律も「ドッジ勝負で決着をつける!」って流れに持ち込めば……
そういえば、この大会は三日連続じゃなくて間に日にちがある。王国で元大臣の手下が変な法律を完成させるまでの時間かせぎだったのかもしれない。
「パパがどれだけドッジうまいか知ってるか?」
大仁君が、ものすごく楽しそうに語る。
「三十年くらい前、王国のドッジ大会で五年連続優勝したんだ! オリンピックにドッジがあったら、絶対に金メダルだったろうな!」
「そうやって勝ちほこるものではないぞ」
元大臣は大仁君を止めたけど、得意げなのは同じ。
「姫、ハンデを差し上げましょう。わしは子ども二人分と考え、そちらは人間二人でなく三人までOKということで。出せるものならですがなぁ!」
王の権力を奪うって野望があるにしても、大人げなさすぎ。この腹が立つ感じは大仁君と通じる。さすが親子。
私はそんな二人からのセリフを一人で浴びないといけない。
メイドさんたちはいるけど、ずっと守ってくれていた海道君はいない。
観客は何人もいるけど、みんな大仁君が集めた大会参加者で、私の味方じゃない。そう思うと、ここにいること自体が不安になってくる。
「じゃあ、おれが姫サンのチームに入ってやる」
私はハッとして振り返った。
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