4-3
ジャンプボールに出たのは海道君とライガ。これはライガの勝ち。しかも、チラッとよそ見をしながらだ。背の高さであっちがずっと上だし。
「備えろ!」
海道君が私や味方ドッジロイドにさけぶ。海道君自身は敵に背中を向けているけど、狙われることはない。ジャンパーにいきなり当てるのは、トンデモドッジでも普通のドッジでもナシ。
ボールを取った敵ドッジロイドは私を見ていた。投げた相手も私!
私たちがよけると、ボールは敵の外野へ。ミイは小柄な姿に似合うすばしっこさでボールを取って、私たちに投げる。いや、これはさっき指示されたとおりの内野へのパス。
受け止めたのはライガ。また私を狙う!
海道君が「ココ狙いをする」といっていたとおり。この大会は私をやっつけることがメインだ。
「食らえ!」
ライガが投げたボールは速い。でもまだ試合が始まったばかりで、私は余裕をたっぷり残している。ボールを受け止めて、すぐに投げ返す。
狙ったのは敵ドッジロイド。ボールはすねの辺りに命中して、敵ドッジロイドが取れないまま地面に落ちる。一人倒して十一対十! いい出だし!
ドッジチームだと、うまく当てたときや受け止めたときに仲間とサインを出し合って「ナイス!」って伝えたりする。私もやりたい。サインを考える時間がなかったからできないけど。
当てられた敵ドッジロイドは外野へ。ライガはボールを拾って、乾いた笑みを浮かべる。
「姫サン、あんた元はヘタクソだったらしいな。記憶を取り戻してうまくなったとか」
前の自分と比べればそうだけど、他の人と比べたらうまいってほどかな? 照れそうになった……そんなことしていられない。
「当てられる側から当てる側に回ったってわけか!」
ライガはまた私を狙う。と見せかけてフェイント! 海道君に投げつける。
「ごちゃごちゃうるさいやつだ」
海道君は冷静に受け止めて、外野にパス。外野の味方ドッジロイドはライガに投げつける。
ライガは素早く外野に身を向けていて、軽くキャッチ。振り返りざまに私たちへ投げてきた。
今度は本当に私を狙う。私、また他の人に行くかなと思って気を抜いたりしないでよかった。ボールを受け止めて、敵ドッジロイドに投げつけた。
敵ドッジロイドは軽い足取りでよける――ように見えたけど、つまずくように立ち止まった。体勢を整えられなかったせいでボールを食らって、外野へ。
これで十一対九! 私はこぶしを握ったけど、不気味なことに気づいてひるんだ。
ライガが私を見ている。先に二人やられて怒った、なんて雰囲気じゃない。にやついている。
「誰かに当てて傷つけるのは楽しいだろ? 人間相手だったらもっとよかったって思うだろ?」
傷つけるって……私は背筋が冷えた。
「はずかしがる必要はない!」
ライガがまた私に投げてくる。私は急だと感じて取れそうにない。
「よけろ!」
海道君がいってくれて助かった。ギリギリでかわす。よけた先に爆弾がうまっているんじゃないかと思うと怖いけど、反射的に動いた。爆発はナシ。
ボールは外野へ。ミイが拾って、こっちに投げる。
やっぱりこれもパス。でも、さっきより低い。味方ドッジロイドが取ろうと動いて――
ズガーーーーン!
地面が破裂。爆弾を踏んだせいだ。爆破された味方ドッジロイドは投げ出されるように倒れる。
意外なくらい大きな音だったので、間近で聞いた私はひるんでしまった。よく見ると、投げたミイもビクッとしていた。
ホイッスルが鳴らされて、爆破された味方ドッジロイドは外野へ。十対九。
これでまた別の爆弾にスイッチが入った。どこにうめてある爆弾かはわからない。
自分が踏んだら? 私が血の気を引かせていると、海道君が肩に手を乗せてきた。
「爆破ドッジのことをくわしく思い出していないか。音はハデだが、ひどい破壊力が出ないように火薬の量を調節してある。ドッジロイドが大きく投げ出されたように見えたのは、受け身を取るために自分で飛びのいたからだ」
そうかもしれないけどさぁ、あんなの怖いよ?
「景気よく当たりを引いたな!」
ライガは笑っていた。腹を抱えるくらいに。
「どうしてそんなに楽しそうなの」
私は口の中でつぶやいただけのつもりだったけど、ライガの耳には入ったみたい。
「何をいってるんだ。傷つけることこそドッジの基本だろ!」
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