4-2

 大会はトーナメント形式で、一回戦から三回戦まである。メンバーは「人間は二人まで。他でうめて合計十二人にする」だとか。

 トーナメント表を見ると、私のチームは左端・大仁君のチームは右端と最初から書かれていた。シード選手みたい。

 他のチームはくじ引き。私たちと対戦するチームが決まったとき、周りから声が上がった。

「いきなりしてやられた」

 開会式が終わると、海道君は面白くなさそうに吐き捨てた。

「ぼくたちは第一試合。後からなら、どんなルールか先に見られた。対策を練ることもできた」

 これはトンデモドッジの大会。一回戦、二回戦、三回戦とそれぞれルールも場所も変える。ルールを教えてもらえるのは、試合が始まるときだそうだ。

『第一試合を始めます。羽場はばチームと安座真あざまチームは第一コートに集まってください』

 私たちはアナウンスどおり第一コートに入った。すぐさま第二試合のアナウンスも始まって、海道君が舌打ち。

「ぼくたちが次にぶつかるチームも同時に試合か」

 何がまずいのか、私もすぐに察した。同時だと、あっちの試合を見られない。つまり、「次はどういう相手?」「どう試合したら有利?」なんて観察ができない。それもまた、大仁君の作戦。

「もう勝った気でいるのか。余裕だな」

 対戦相手たちもコートに入ってきた。

 話しかけてきたのは、ひょろっと背が高い男子。肌の色が濃くて、ニヤニヤした視線を向けてくる。年は私たちと同じ? もしかしたら上かも。

 その隣にいる子は、いろいろと逆。女の子で、小柄な私より背が低い。ビクビクとした目で私たちを見ている。こっちは間違いなく年下。

「てめえ、ライガ!」

 大仁君がコートの外から怒鳴った。にやついた男子――ライガに。

「ミイを出すつもりか! てめえの妹は弱えだろうが! 強えやつは他にいるだろ!」

 ミイっていうのは大人しそうな女の子のことみたい。兄妹にしては似ていない……同じなのは肌の色が濃いことくらいか。

「悪い。他のやつらは偶然にも出られなくなった」

 ライガは乾いた笑みを大仁君に返す。

「ケガをしてな。試合直前の練習でがんばりすぎたみたいだ」

「まさか、妹を出すために自分で……」

「要は姫サンに勝てばいいんだろ」

 私はゾッとした。ライガはにやついた顔のまま。

「それでは第一試合を行う! ルールは爆破ドッジ! 制限時間は十分!」

 審判がいった直後、コートの真ん中にならんで礼。ミイは深々と頭を下げたけど、ライガはちょっと首を動かした程度。

 私は連想したことがあって、審判が持ってきたボールをまじまじと見た。

「まだ思い出してないことがいろいろあるんだけど……爆破ドッジって、ボールが爆弾なんだっけ? そんなのじゃないよね?」

 海道君がうなずく。よかった。

「それは爆弾ドッジ。爆破ドッジとは別だ」

 爆弾ドッジは爆弾ドッジであるんかい!

「よく思い出してみろ。きっと陛下から教えられている」

 そうなの? いわれたとおりに考えてみると……記憶が浮かび上がってきた。

 爆発するのはボールじゃない。爆破ドッジっていう名前は爆弾ドッジと区別するため。

 爆弾が内野のどこかにいくつもうめてあって、どれかを踏めば爆破される。

 爆発するごとに、爆発する爆弾は変わる。普通に当てられたらアウトで、爆破されてもアウト。

「爆破なんかされたらケガで試合どころじゃないよ。かんしゃく玉くらいでやればいいのに」

「ちゃちなこというなよ、姫サン」

 ライガはからかうような声を私に投げかけて、ミイの背中を押す。

「お前は外野だ。取ったときは内野にパスしろ。敵を狙うな」

 ミイはおずおずとうなずいて、小走りで外野に向かった。大回りで私たちをさけるようにしながらだ。私たち、怖がられている?

 こっちはドッジロイドの一人が外野に立つ。海道君は残りのドッジロイドに指示を出す。

「あいつらはきっと……する。注意しろ」

 本当に、そんなことをしてくる? 私がオロオロしているなか、試合開始!

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