2-5

 私たちはならんで試合前の一礼をしてから位置についた。外野はそれぞれドッジロイド一人。

 ジャンプボールには海道君と大仁君が出た。相手側のコートに入って、向かい合わせで立つ。

 ドッジロイドたちは横並びになって、低めの姿勢で構えた。ドッジの公式戦と同じだ。私も同じようにする。

 この構え方、やってみたかったんだよね。昼休みにドッジで遊ぶときは、みんなここまでせず適当に構えるし。並んでいるのがドッジロイドじゃなくてチームを組んだ仲間だったら、そして私の嫁入りなんてものがかかっていなければもっとよかったのに。

 審判がボールを上に投げて、海道君と大仁君が手を伸ばしながらジャンプ!

 背は大仁君が上。でも身軽さは別。海道君がボールをはじいてこっちのコートに動かした。

 味方ドッジロイドがボールを取って、敵側に投げた。ぶつけるんじゃなくて、頭越しに外野へ。こっちを向いていた大仁君たちは外野に向き直る。

 外野の味方ドッジロイドが大仁君たちを狙う! でもよけられて、ボールは私たちの内野に戻ってきた。

 大仁君たちは私たちの方に振り返っていたけど、今ならまだ体勢が整っていない。その隙に海道君がボールをつかんで、大仁君たちに投げた!

 敵ドッジロイドが取ろうとしたけど、手からこぼした。審判がホイッスルを鳴らす。

 取りそこねた敵ドッジロイドは外野に向かう。これで一人減らした!

「このポンコツが!」

 大仁君はあらっぽい言葉で送る。そこまでいわなくても。

 ボールは敵側へ。持っていたのはコウモリ仮面の人。地面に一度ついて、ストレートにこっちを狙う!

 いきなり? 外野と投げ合ってこっちの隙をうかがわないの? それに……

 案の定、味方ドッジロイドはボールを軽く受け止めた。でも、私は忘れそうになっていた。これは普通のドッジじゃないって。


 ギャーーーーーッ!


 受け止めたボールがあばれ始めた。味方ドッジロイドの手にガブリ。間近で見た私は、みっともないくらいひるんでしまった。

 ボールじゃない。アルマジロだ。

 続けて投げればアルマジロにイライラがたまって、あばれやすくなる。コウモリ仮面の人がいきなり攻撃してきたのは、そろそろあばれるので取った瞬間にアウトだと予想したからだ。

 地面に落ちてうなっているアルマジロを、審判が抱え上げた。背中をさすって大人しくさせる。

「どうして審判はかまれないの?」

「アルマジロドッジの審判をするために、アルマジロのなだめ方を学んだからです。ちょうどいいなだめ方はアルマジロごとに違い、見ただけでそれを判断できるのは審判くらいです」

 丸くなったアルマジロを海道君が受け取って、試合再開。さっきは一人分リードしたのに、同点に戻ってしまった。

 それに、私は不安なことに気づいていた。


 最初はちょっとだけリードした私たちだったけど、ずっといいペースじゃなかった。何せこっちは私が全然戦力になっていない。

 増えたり減ったりして、今の内野はこっち五人のあっち六人。ボールを持っているのは敵ドッジロイド。

 投げつけてきて、味方ドッジロイドが受け止めた。でもアルマジロがあばれてアウト。四対六。

 アルマジロドッジは、試合時間が進むほど早く投げないといけなくなるみたい。アルマジロがイライラしてあばれやすくなる。

 こっちボールから再開。海道君がすぐ投げる。大仁君を狙ったけど、受け止められてしまった。

「さっさとあきらめろ!」

 大仁君が力いっぱいにボールを投げる。私めがけて!

 私はいつもどおり固まってしまった。こんな調子だし、元から外野は私がよかったんじゃ?

「させるか!」

 前に海道君が割り込んだ。ボールを取って、すぐさま構える。向かう先には大仁君。繰り返し狙うつもりだ。

「そろそろあばれる! お前が取れ!」

 大仁君、コウモリ仮面の人の後ろに隠れた! コウモリ仮面の人が代わりに受け止めるなり、アルマジロがあばれ始めた。


 ギャーーーーーッ!


 もがき具合が今までよりもひどくて、手にかみつくだけじゃない。後ろ足をバタバタ動かす。

 その途中で顔をけった。コウモリの仮面が落ちる。

 私は心臓が止まったような気分だった。仮面の下にあった顔は。

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