私とドッジと謎のあざ

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 五年に上がって半月たった日の昼休み、私は一組のみんなと校庭でドッジボールをしていた。

 私はドッジが大好き。たくさん集まってにぎやかに遊べるし。

 今日も、私は「ドッジやるぞ!」っていっていた男子に混ざった。校庭に出ると二組もいて、組対抗で試合することになった。数が増えると余計に楽しい。

 いいことばっかりじゃない。二組にあいつがいなければ……

「バカココ! お前にぶつけるぞ!」

 向こうのコートにボールを構えている男子がいる。ニヤニヤした目で見ている相手は私。

 私は背が低くて、列になるときはかなり前の方。あっちは上にも横にも大きくて、私からは山のように見える。力だって、あっちの方がずっと強い。

「ほれ! ひとーつ!」

大仁おおひと君、またいつもみたいに!)

 自分がぶつけられるところを想像して、身をすくめてしまった。

 私は投げられると固まってしまう。そんな調子だから、受け止めるなんてできない。たまたま転がっていたボールを拾ったりしないかぎり、投げて人に当てることもない。

「ふたーつ!」

 大仁君は、私がそんなふうだってよく知っている。だからドッジをするときは必ずこうやっていたぶってくる。「またやってる」って冷めた目で見ている人が周りにいることも気にせず。

「みーっつ!」

 来る! そう思った直後、私に衝撃。いつもどおりのタイミング。

 いつもなら胸もとに当たるけど、今日はそれて頭に命中。私はふらっと座り込んだ。

「ココ、大丈夫?」

 みんな心配げで、真っ先に声をかけてくれたのはツグミちゃん。

 私は背が低くて手足も短いから、タヌキみたいだっていわれることがある。ツグミちゃんは背が高くて、ツルみたいな細さ。

 私はくせっ毛を肩まで伸ばしている。ツグミちゃんはサラサラの長い髪を後ろでしばっている。

 私はあわててしまいやすい。ツグミちゃんは笑っていることが多い。

 いろいろ違う私たちだけど、いつも仲よくしている。組も班も一年のころからずっと一緒。

「うーん。くわーんくわーんってする」

「保健室行く?」

「そこまではないかな……でも、ちょっと休んどく」

 私はよろけながら立ち上がって、ツグミちゃんにコートの外まで連れていってもらった。

 当てた大仁君の方は腹を抱えて笑う。「大当たりだ! ざまあ見ろ!」っていいながら。

「いくら……でも、今のは許せないわね」

 ツグミちゃんは私から離れるときに何かいっていた。でも、私は耳鳴りのせいで聞き取れなかった。

「見ててよ、ココ」

 落ちていたボールを拾って、その場でてんっと一度つく。ツグミちゃんがドッジのときによくやる仕草だ。

「食らいなさい!」

 すぐさま大仁君に投げた! かなり速いボール。

「お前、おれを……!」

 大仁君はとっさに受け止めて、ツグミちゃんに投げ返した。

 それも速いボールだったけどツグミちゃんは止めて、また大仁君に投げた。

 大仁君は連続して狙われると思っていなかったみたい。二発目は止めきれずに落とした。

「覚えてろ!」

 ツグミちゃんをにらみながら外野へ。連続攻撃の勢いに、みんなおどろきの目をツグミちゃんに向ける。

「ココの分もやってやるわよ!」

 ツグミちゃんはにっかり笑って、私に親指を立ててみせた。私も同じようにして返す。

 山瀬やませ次実つぐみ。一年のときに転入してきて、他の人からも好かれている。告白されたこともある。つきあい始めはしなかったけど。

 大仁君も三年のときに来た。でも、ツグミちゃんとは全然違う。転入してきたとき同じクラスだった私には、よく覚えていることがある。

 引っ越してくるなり、クラスのみんなにお菓子とかおもちゃとかたっぷりおごった。そんなふうにできるくらいお金持ちで、新築のお屋敷に住んでいる。味をしめて子分になった人もいる。

 私はというと、大仁君からいじめられていた。嫌われるようなことをした覚えはないのに。

 バカココってあだ名まで付けられたし。バカじゃなくて羽場はばだって。

 ツグミちゃんは止めようとしてくれたけど効かなくて、三年の間は大変だった。思い出したくもない!

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