第32話 アホ淫魔、最後の晩餐!#4

「あいつどこ行ったんだ……」

 夜の住宅街を走りながら、俺は溜息をつく。

 俺の家に戻ってはいないだろう。あいつもそこまでバカじゃない。一番ありそうなのは、疲れてどこかの公園で一休みしていることだが――。


「……いたよ」

 住宅街のど真ん中。ルフィーナのそばには2人の警官とパトカー。

「だから、これは淫魔の正装なの! あなたたちの制服と一緒よ!」

「さっきから何を言ってるんだ君は。とりあえずパトカーに乗りなさい」

「嫌よ!」

 どうやら服のせいで露出狂と間違われ、職質を受けているらしい。

「すいません」 

 警官に声をかける。

「君は?」

「彼女の保護者です。まだ日本に来たばっかりで」

 文化やら伝統やら適当なことを並べ立てると、二人の警官も突っ込みにくくなったのか、誤解されるような服装はやめるよう言って、パトカーで走り去っていった。


「ほら戻るぞ」

「嫌! あんなの食べるくらいなら帰れない方がいいわ!」

「俺はよくないんだよ! そもそも、俺はお前が帰るまでの間、家にいていいって言ったんだぞ」

「そうだったかしら?」

 そうだよ。


「でも、私がいた方が楽でしょう?」

「そ、それは……」

 確かにルフィーナが来てからは、彼女が全ての家事をやってくれている。俺よりスキルが高い分、食事は豪華になったし、家は毎日きれいなままだ。

「ほら、私がいた方がいいんじゃない」

 ルフィーナが俺を抱き寄せ、耳元でささやく。


「これからも私と暮らしましょう? あなたは家事をしないで済むし、私は実家に戻らずに済む。どこにも損する人なんていないわ。お金だって、私がバイトを続ければ平気よ」


「それは……確かにそうだな」

「でしょう?」

 ってバカ、これこそまさに悪魔のささやきじゃねぇか! 乗っかってたまるか!

「ええい離れろ!」

 ばっとルフィーナを突き放す。彼女は残念そうに俺を見た。


「だいたい、俺の親には何て言えばいいんだよ」

「俺の嫁だって言えばいいじゃない。どうせそうなるんだし」

「誰がそんなこと決めた!」

「夫がいつもお世話になっております」

「世話になってんのはお前の方だ!」

「夫の息子さんにもお世話になってます」

「やかましいわ! 俺も息子もお前の世話はしない!」

「それは違うわ。今からお世話になるもの」


 言うや否や、ルフィーナは俺をアスファルトに押し倒した。

「だからお前は、どうしてこう、いつもいつも場所が悪いんだよ!」

 森の次は道のど真ん中かよ!

「人が来ようが関係ないわ。見せつけてあげればいいのよ」

「そんなことしたら逮捕されるわ!」

「そうは言っても、もうこんなに大きくなってるわよ。早く私の中に白いザ○メンいっぱい出してちょうだい」

 ルフィーナは執拗に俺のジーンズを脱がそうとしてくる。俺はそれを手で防御しながら、1つの方法を思いついた。

「おい、玲緒奈の家に戻るぞ。なめこを食わずに帰れる方法がある」

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