第28話 アホ淫魔、初めての労働!#6
駅前をうろつきながら、私と玲緒奈は沙紀さまへ対する言い訳を探していた。理由は後ろめたく、かつセーフなラインでなければならない。それでいて自然な場所――うぅ、難しいわ。
「ルフィーナさん、あそこはどうでしょうか」
玲緒奈が示した方向を見やる。悩む私の目に映ったのは、まさにすべての条件を満たす理想的な場所だった。
「ゲーセンね」
「実際、私一人では行きにくいんですの。何かこう、後ろめたさがあるというか……。ですから前回、京也さんに付き添ってもらったんですのよ」
「じゃあ、ゲーセンに行ってたことにしましょうか」
意外とあっさり解決したわね。
追及されたときに備えて、クレーンゲームでいくつか景品を取っておく。その分のお金は玲緒奈が出すと言ったので、お言葉に甘えさせてもらった。
「何か言われたらこれを見せればいいわ。沙紀さまはたぶん、ゲーセンをよく知らないだろうしこれで納得するはずよ」
彼女もまた、お嬢様だということは私も分かってるのよ。問題は解決したし、あとは帰るだけね。
陽はだいぶ傾いている。家に向かう人影も、住宅街を抜けるとなくなった。
姫城家の敷地である森に沿って歩く。ここは昼間でもあまり人通りがない。陽が沈んでいないとはいえ辺りは薄暗く、すでに街灯がついている。オバケでも出そうだわ。
そんな不気味な道を歩いている時、それは現れた。
「ル、ルフィーナさん」
隣の玲緒奈が震えて声で私を呼び、腕を引っ張ってくる。
「な、何よ。本当に出たの?」
「何をおっしゃってますの! あ、あの方ですわ!」
彼女が指さす方向に振り返ると、そこには女が1人立っていた。よかった、ちゃんと足があるわ。
「あの人がどうかしたの?」
「最近出没する露出魔にそっくりに見えませんこと?」
言われてみればそうね。暗いのと被っている帽子のせいで表情はよく見えないけど、コートを着てメガネをかけている。
相手はゆっくりと近づいてきて、そしてコートに手をかけ――地面に落とした。
「きゃあ!」
玲緒奈が悲鳴を上げる。コートの下は全裸で、赤い縄で縛られている。それが街灯に照らされ、はっきりと見えた。帽子のせいで表情までは見えないが、荒い息遣いが聞こえてくる。
「あら、結構いい身体してるじゃない。特にその胸。女の私でも興奮しちゃうわ」
まったく垂れが見られない、お椀型の白い美乳。重力に逆らうように上を向く乳首。肢体を縛っている赤い縄によって、それらがいっそう際立っている。むぅ、正直ちょっとうらやましいわね。
「「え?」」
私の感想に、玲緒奈と女の声が重なった。
「あなたの胸よ。でも私だって負けてないんだから!」
ワンピースを脱ぎ去る。私の豊満な胸が布の束縛から解き放たれ、歓喜するようにぷるんと揺れた。
「ル、ルフィーナさん!?」
「どう? あなたの変態ぶりには負けるけど、胸は私の方が上だと思わない?」
相手の女は、私の身体に言葉もないようで唖然としている。ふふ、当然よね。
「そこの3人、何をしているの!」
突然、スピーカー越しに放たれた声に、私は聞き覚えがあった。まさか――。
「そこから動かないで! 逃げようとしても無駄よ!」
振り返った先には、赤色灯を回すパトカー。そこから降りてきたのは、あの悪魔の婦警だった。やっぱり!
「2人とも逮捕よ。あなたも来てくれる?」
「は、はい」
言われるがまま、玲緒奈はパトカーに乗り込む。私と女には手錠がかけられた。
「ちょっと、私はこの子とは違って露出魔じゃないわよ!」
「なら公道で全裸なのをどう説明するのか、署でじっくり聞かせてもらうわね」
これは不当逮捕よ、訴えてやるんだから!
……えっ、私の主役は終わり? ちょっと、主人公がキョーヤに戻るなんて聞いてないわよ! 待って、せめてもっとまともな終わり方で――。
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