第21話 アホ淫魔、思わぬ再会!#9
夜。
「キョーヤ……どうしても、ダメ?」
ルフィーナが瞳を潤ませ、上目遣いで俺に尋ねた。
「あぁ、これはダメだ」
思わず頷いてしまいたくなるが、ここは心を鬼にせねばならない。
「ねぇ、お願い。……欲しいのよ」
ルフィーナの白い手が、俺の右手にそっと重なった――。
「いい加減にしろ! こんなバカ高いフォアグラなんて買ったら破産するわ!」
ルフィーナの手を払いのけ、ノートパソコンを守る。
ここは俺の部屋。通販サイトのサハラのページが開かれたパソコンを前に、向かい合っていた。
魔界料理を再現するため、ルフィーナが次に目をつけたのはフォアグラ。
そう、あの世界三大珍味の1つとされる、あの高級食材だ。
庶民たる俺には手の届かぬ代物だと思っていたが意外とそうでもなく、いざ調べてみると、数千円で売っている物も多かった。
これくらいなら買えると、ルフィーナに購入を勧めたのだが……。
「これは必要経費よ」
「だからって2万も払えるか! こっちの安いので充分だ!」
「安いのは質がよくないわ。高い方が美味しいし、きっと魔力も豊富なはずよ」
「高いのは財布によくないんだよ! それに、もし魔力がなかったら大損するだろうが!」
有無を言わさず、3400円のフォアグラをポチる。
「そうだわ、玲緒奈に頼んだら取り寄せてくれるんじゃないかしら」
「そりゃあやってくれるだろうが……。代金は誰が払うんだよ?」
俺の疑問に、ルフィーナは当然のように答える。
「もちろん、キョーヤに決まってるじゃない」
「素晴らしい他力本願だな」
皮肉たっぷりに言い放つ。
「もう、褒めても何も出ないわよ?」
「褒めてねぇし、お前はいい加減金を出せ!」
そして次の日。
「さぁ、召し上がれ! 今夜はフォアグラのソテーよ!」
見た目は白身の肉だ。というか焼肉にしか見えん。
「いただきます」
いざ実食。味は……濃厚だな。肉の脂を食ってる気分だ。デブホイホイだな、これは。珍味なのにも納得できる気がする。
「それで、魔力は戻ったか?」
ふるふると首を振るルフィーナ。ダメだったようだ。
まぁ、普段食えない物が食えただけでもよしとしよう。
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