第18話 アホ淫魔、思わぬ再会!#6
夜。
巨大化する1万円札に押しつぶされる夢を見て目が覚めると、ルフィーナが馬乗りになっていた。
「お、お前何してんだ!?」
「夜這いよ」
淫魔はやましいことなどないと言わんばかりに堂々と答えた。
反対に俺は心臓バクバクだ。
月明かりに照らされる彼女は、乳首と股間に穴が空いたエロ下着を着ていた。それが俺をいっそう動揺させる。
「襲ったら追い出すって言ったよな?」
「……夜這いはついでよ」
変わんねぇよ!
「それで何だよ、夜這いしに来たんじゃねぇんだろ?」
今までチャンスはいくらでもあったはずだ。ここまで待つ意味がない。
「あなたと話がしたいの」
「話?」
そりゃまた唐突な。
「今日、キョーヤのご両親の話を聞いて思ったのよ。あなた、私のこと全然知らないでしょう?」
「それは……そうだな」
ルフィーナという名前と、金持ちのお嬢様だろうということくらいしか知らない。
「でしょう? だから、今夜はいっぱい私のことを教えてあげようと思うの」
「まずは身体からか」
ルフィーナに鼻をつままれる。
「せっかく私がまじめに話してるのに!」
「いてててて! 悪かった! ……このまま話すのか?」
「そうよ」
「落ち着かんわ!」
俺の上から降りたルフィーナは隣に正座する。俺も起き上がり胡坐をかいた。うっ、これだとルフィーナの下着が見えちまうな……。上を向こう。
「人と話すときは相手を見るのよ!」
正面を向かされる。勢い余って首を折られてはかなわないので、おとなしく前を向き、彼女の首から下は見ないように心がける。
「キョーヤのチ○ポ、大きくなってるわよ。1回すっきりした方がいいんじゃない?」
「お前も真面目にやれ!」
ルフィーナは素直に引き下がり。
「じゃあまず、私の本名から教えるわね。ちょっと長いんだけど……ルフィーナ・アレクシス・エイドリアン・オルドリッチ。これが本名よ」
「ルフィーナ……何だって?」
名前が3つくらいなかったか?
「ルフィーナが私の名前。アレクシスが私のお母さまの名前。エイドリアンが初代当主さまの名前。オルドリッチが家名よ」
「けっこう由緒正しい感じの家なのか?」
初代当主とか言ってるし。
「貴族よ」
「貴族ぅ!?」
なんてこった。金持ちだとは思ってたがまさか貴族だったとは。今まで散々髪引っ張ったり頭はたいたぞ。不敬罪とかで俺の首が飛んだりしないだろうな?
「飛ばないわよ。私はね、父に働くかお嫁に行くかしないと家を追い出すって言われたから、だったらこっちから出てってやるって、それで出てきたのよ」
「お前が働きたくないのは分かるけど、嫁に行けば済んだ話じゃねぇのか?」
貴族ならお見合いとかあるだろう。相手に困るとは思えないが。
「嫌よ。お嫁に行ったら、相手の家で過ごすのよ? ゲームもできないしアニメも見れないし、毎日いじわるな姑にいびられるわ」
姑が意地悪とは限らないだろ。
「お見合いの相手だって、本当に欲しいのは私じゃなくてオルドリッチの名前なのよ。魔界はそんな相手ばっかりだもの。だから父に言ったの。人間界で旦那さんを見つけるって」
「それはいいのか?」
貴族の娘なら許されないと思うが。
「ダメに決まってるじゃない。だから家出してきた、って言ったのよ」
「も、もしかして親父さん俺の家に来るのか?」
よくも俺の娘をーっ! とか言われて八つ裂きにされるんじゃ……。
「そんなことさせないわよ! 今日はどうしたの、心配しすぎよ?」
「お前が貴族だと知って気が動転してんだ」
しかしこれで事情は分かった。
ルフィーナが言っていることは理解できる。政略結婚とかいうやつに利用されたくないから、自分で相手を探しにこっちの世界にやってきたってことだ。
「で、相手は見つかったのか?」
「いいえ、まだよ」
さすがにルフィーナほどの美女でも、そう都合よくは――。
「どこかに、年収が1千万円以上あって私が食っちゃ寝してお金をいくら使っても怒らない旦那さんはいないのかしら」
「そんな奴がいるか!」
いや、いるかもしれないけどこんな街には絶対いねぇ!
「なによ、キョーヤだってそんな人がいたら結婚したいでしょう?」
「いや、家族は俺が養う。嫁には家庭に入ってもらう」
ルフィーナは不満そうに口をとがらせる。
「キョーヤ、今の発言はよくないわ」
「どこがだよ?」
俺をたしなめたルフィーナは人差し指を立て。
「いい? 今の時代は女性の社会進出が叫ばれているのよ。今のキョーヤの発言は、女は家事さえやってればいい、と取れるわ。こんなことを言ったら、これを読んだ人に女性差別だって騒がれて、元々危ないこの作品がさらに危なくなるわよ」
む、確かにそうだ。前言撤回しよう。けど元々危ない原因作ってるのはお前だからな?
「とりあえず今日はもう寝るぞ」
「おやすみなさい」
そのまま横になるルフィーナ。
「部屋に戻れや!」
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