第11話 アホ淫魔、メイドデビュー!#7

「キョーヤは私をレイプする気ね」

「誰がするか!」

「でも、苦しかったわ」

 ルフィーナが目を伏せる。うっ、確かにやりすぎたかもしれん。

「悪かった。すまん」

「ダメよ」

「どうすればいいんだ?」

 今回ばかりは俺が悪い。可能な範囲ならわがままでも聞いてやろう。

「ランジェリーショップに行くわよ」

 一階に到着し、ルフィーナが左を示した。

 目の前にはスーパー。左へ続く通りには服屋が並び、その一角に男子禁制エリアがある。

「分かった。俺はここで待ってるから行ってこい」

 通りの中央にはベンチがあり、歩き疲れた子供や、荷物持ちのために付き合わされている彼氏が座っていた。

 何言ってるの、と店の前で彼女は振り返る。


「キョーヤも来るのよ」


 ……ほう。

「つまり、あそこに俺も入れと」

 店内では女性客が下着を吟味している。男にとっては見ることすら憚れる場所だ。

「そうよ」

「そうか」

 …………。


 俺はスッとベンチに座った。


「ちょっと何で座ってるのよ!? キョーヤも一緒に選ぶの!」

「お断りだ! 俺を社会的に抹殺する気か!」

「悩殺する気よ!」

 そんなことは訊いてねぇ!

「とにかく、俺はここで待つ! 中には入らないし入れない!」

 可能な範囲ならいいと言ったが、これは範囲外もいいとこだ。

「この前おじさんが駅前のお店にいたわ! キョーヤも大丈夫よ!」

「そいつは気合の入った変態だ! 普通の男は入れねぇんだよ!」

「いいわ」

 何だ? 急に聞き分けが良くな――

「着替えたらここまで見せに来るわ」

ってねぇ! そんなことされたら大騒ぎになるぞ!

「おま……この悪魔が!」

「そうよ、私は悪魔よ! どうするのキョーヤ!」

 俺は降伏した。


 というわけで、俺は地獄の一丁目にやって来た。

 相当神経太くないと耐えられねぇぞこれ。罪悪感とか、周囲の視線とか。

 要は心意気の問題だ。暗示をかけよう。俺は気合の入った変態だ……変態だ……。

「キョーヤ、どっちがいいと思う?」

「変態だ……何がだよ?」

「真面目に選んでよ!」

 黒と紫のブラジャーを押しつけてくる悪魔。

「邪魔だ! つか、お前普段ブラ付けねぇだろ」

 そもそも、付けるような服を着ない。

「人間界の下着はかわいいのよ。サキュバスの間で流行ってるわ」

「下着として?」

「服としてに決まってるでしょう」

 だろうな。

「白はダメなのか?」

 俺は気合の入った変態なので、どんな下着も躊躇なく手に取れる。

 べしっ。ルフィーナに手をはたかれ、とりあえず元の位置に戻す。

「白は天使の色よ。そんなの着てたら石を投げられるわ」

 なるほど、悪魔らしい理由だな。

「2つとも着てみたらいいんじゃないか?」

 ルフィーナはそうね、と言って奥の試着室に入っていく。

「ふむ……」

 手近な下着を手に取り、専門家のように見定める。

 俺は変態だ。ブラジャーやショーツに興奮する変質者だ!

 …………。

 ……。

「いや、やっぱ無理だわ」

 俺はいったい何をしているのだろう。

 素に戻った瞬間、周囲の視線が途端に痛く感じる。

 き、気まずい……。早く戻ってきてくれ、ルフィーナ!

「キョーヤ!」

 奥で壁を見つめていると、奥から女神が再臨なさった。

「ルフィーナ――」

 下着姿で。

「服は!?」

「試着室よ」

「何やってんだ!」

 角と羽根が丸見えじゃねぇか! 周りに見られる前に服を着せねぇと! 

 

 ルフィーナを連れて試着室に飛び込む。

「キョーヤ……結構大胆ね。私はいいわよ、ここでシても」 

 って何で来ちまったんだ俺は!

「お前、早く服を――」

 顔がおっぱいで埋まった。ルフィーナに押され、俺は壁と彼女に挟まれる。

「キョーヤ……もう我慢できないわ。あなたのチ○ポもこんなになってるわよ?」

 ルフィーナが俺の息子をジーパン越しにさわさわする。

 マズいマズいマズい!

 何がマズいってここでヤるのがマズい!

 俺はお決まりの対処法になりつつある、ルフィーナの髪を引っ張る作戦に出た!

「いたたたた! もう、せっかくいい雰囲気だったのに何するのよ!」

「場所が悪いんだよバカ! もう試着は済んだのか?」

「紫がまだよ。ねぇ、場所が悪いってことは他の場所ならシてくれるって」

 外に出てサッとカーテンを閉める。

「どう?」

 しらばくして開いたカーテンの先には、モデルみたいなポーズを取るルフィーナがいた。

「いいと思うぞ」

「ちゃんとこっち見てよ!」

 視線を上に逸らす俺に彼女が怒る。くそう、また騒ぎになっても面倒だし、ここはちゃんと感想を言ってやるか……。

 すでに、裸やこれより際どい恰好を何度も見てる。今更下着くらいで、俺は動揺しない。

 そう言い聞かせ、俺は彼女を直視する。

 紫のレースの下着。とりあえず薄い。透けて見えそうだ。そして相変わらずのプロポーション。出るとこは出ていて、締まるべき所はちゃんと締まっている。雑誌の一ページを切り取ったような構図だ。

「すげぇ似合ってる」

 さっきとあまり変わらない感想だが、ルフィーナは満足そうに頷いた。

「この私が着てるんだもの、当然よ! どっちも買うわ」

「じゃあ会計すんぞ」

 そう言ったら、ルフィーナはそのまま試着室から出てきた。

「着替えろや!」

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