episode±10 [巡り巡る星の作る星座は]
『もしもし?』
思いついたら即行動、と言う性格の
「あ、
『うん!どうしたの?のうちゃん』
「今ね、
『うん。ん?あれ?二人で帰ったんじゃないの?』
「いや実は……」
縫至答がまず、華厳と別れたあとの経緯を簡単に説明すると、
『なんだよ!じゃあこっちに来ればよかったのに!!ムキーーー!!!!』
「ご、ごめん。今度うちにみんなでお泊まり会でもしようね」
『むーーー……まあじゃあそれ約束だよ!くらんちゃんも連れてくから!で、それで?なんで電話くれたの?』
「あ、そうそう。実は今ね…」
縫至答が部活結成の提案に至るまでの流れを追加説明すると、電話の向こうからよくわからない言語が飛んでくる。
『くぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「ちょっとどうしたの!?大丈夫莉理亜ちゃん!?」
『それ最高!』
「あ、そういうことか。え、本当に?」
『いいじゃん!やろうやろう!』
「じゃぁ、月曜日に学校で相談させてもらっていいかな?」
『うん!いろいろ考えておくー!!』
その返答を最後に軽い挨拶が交わされて、通話は終了した。
「…だって」
「やっぱりそう言う乗りでしたね、莉理亜ちゃん」
「一回会ってみたいわー。あのテンションは嫌いじゃない」
「へぇー。なんか意外」
縫至答が、君塚の発言に反応すると
「むしろこっちはあんなテンションのタイプとあんたが仲良くしてる方が意外だわ」
「今日知り合ったばっかりなんだけどね」
「はぁ!?マジで!?」
「うん。西央ちゃんもそうだし」
「ですね。私にとっては君塚さんもクラスメイトではあるけどほとんど話したことなかったからほぼ初めましてですし、今すごい不思議です」
「ね」
「あんたらノリよすぎ」
「ここにきてる君塚だってそうでしょう?人のこと言えません」
「ふん」
他愛もない会話が、今の三人にはとても新鮮で、不思議な関係性が作れるのではないかと言う期待を導いてくる。
翌朝、自宅へ帰ると言う君塚と西央を玄関で見送った縫至答は次の行動に出た。
その自宅で初めてとなる複数人分の朝食の後片付けをし、制服に着替える。土曜日とは言え、活動している部活はあるはずだ。となれば、部の設立に関しては詳しい条件が聞けるかもしれない。それが明確でない以上、具体的な方針は立て辛いと思ったからだ。華厳や西央、君塚を出し抜くような形になってしまうかもしれないとは思ったけれども、話は、早いほうがいい、と今朝眠るときに決断したのだった。
「よし」
若干目の下にクマの見える顔を両手で張り、制服に着替える。
いつも通りに通学かばんを持ってローファーを履く。
簡単だ。新部活設立のルールを、手の空いている教師に問い合わせるだけだ。
いつも一人で行動していた縫至答は、昨日からの遭遇で、一人に若干の不安と、誰かがいてくれることへの安堵感を感じ始めているのだろう。
そんな彼女の不意な後ろ髪を、さらに引っ張る事態が、玄関先で待っていた。
「…」
軽くではあるものの意を決して、かばんの持ち手を肩にかけて握り、玄関を出て、鍵を閉めようとした時だ。
「あ、すみません」
と、声がかかった。隣室の住人が通行するところだったのだ。
「あ、こちらこそ」
「いえ…あれ?もしかして、縫至答さん?」
「あ、そうですけど…あれ?同じ学年の方ですか?」
声をかけられて、ようやくその通行人が同じ制服を着ている上に、学年ごとに違うリボンタイの色も同じ紫であることに気づく。
「3年の
「ええ。八飛宮さんも?私は二軒隣なんです。今まで遭遇しないなんてこと、あるんですね」
「不思議ですね。休みなのにこれから学校に?」
「はい。希望者補修と、自主学習に」
「もしよかったら、一緒に学校に行きませんか?」
縫至答は、まるで口走ったかのような感覚に陥る。それは、自分が意識していない感覚の発言だった。相手のことを考えもせずにズケズケと踏み込んでしまったと言うような感覚が縫至答の良心を襲った結果、ややの自責の念に駆られたのは言うまでもない。
「いいんですか?」
「本当に、もしよければ。せっかくだし、同じ学年だし。住んでるのも同じアパートだし」
言い訳のようにつらつらと並べ立て、自責の念への武器にする。口から出てしまったことは、元には戻せないのだから、もう自分の不意の行動に乗っかるしかない。
「もちろんいいですよ。でも、縫至答さんは何をしに?補修なんて必要ないですよね?」
「ああ、いや、そうじゃなくて、ちょっと用事があって」
「そうですか。じゃあ、行きましょう!あ、改めて、
「こちらこそ。縫至答 乃っていいます。改めてよろしく」
「はい!」
時が流れる限り、彼女たちの歯車はが止まることはない。
籠に座する星の天球も、その星めぐりを止めることはない。
つながっていくその全てが、彼女たちを導く先とは。
Continue to under the sky
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