episode±9[たどり着きたい場所へ行くために]
「あと一人キャリア?うーん…知り合いにはいないけど、なんでよ」
縫至答の問いかけに対して答えたのは
「そう……かも。私も知り合いの中にはもういないかなぁ」
追いかけて答えたのは
「そっかー……うーん……」
飲み物を一口啜りつつ、腕を組む縫至答。
「いったいなんなのよ。何人か集めたいの?」
「のうちゃん先輩、何か目的があってってことですよね?」
君塚の質問に、西央も便乗する。
3人の輪の中心にあるお菓子は順当に減っていっていた。
「…
「そうですね」
「ん?誰よ唐崎とか莉理亜って」
ここまで
「あ、そうか。君塚は知らないんだっけ」
「あんたたちしか知らないわい」
「一年生に、華厳 莉理亜って子がいて。今日ひょんなことで知り合ったんだけど、その知り合いの子の唐崎さんって人にも偶然会ってね。知り合ったは知り合ったんだけど、他校なの」
「うん。そんで?」
「って言うか、のうちゃん先輩、人数揃えたがってるんですか?なぜ?」
君塚の先を促すような発言と、西央の疑問符に、一気に答えるような縫至答の回答が続く。その表情は、少し何かを覚悟したようなものだ。
「……もう三年なんだけど、部活作れないかなって思って……」
縫至答のその一言で、一瞬君塚と西央が固まる。
「……部活ってあんた」
君塚がやや暗いトーンで指摘するが、
「だ、ダメかな?」
「………めっちゃいいなそれ!!!」
縫至答の疑問に対して、予想外の盛大な同意が跳ね返ってきた。
「えええ!?」
西央が反応する。よほどに意外だったのだろう。
「……え?本当に?」
「だってさ、縫至答、狙ってるのってきっとキャリアだけ集めた部活だろ」
「…正解。なんでわかったの?」
「今の話の流れだと、この一連の流れで出てきてる名前の子達は全員キャリアだろ?」
「……個人情報になるから詳しくは聞いてないけど、そうだね」
「そんな細かいことはいいわ。うん……いいかも。でも、誰だっけ、からあげ?」
君塚は記憶力があれなのだろうか。
「から……唐崎さん?」
「そう、一人他校なんでしょう?」
「うん。ならば、部活もいいけど、サークルみたいにしてもいいんじゃないのか?」
「サークル?」
「よくあるだろ。オタクとかが作ってるやつさ。あれとか、なんかきっかけがあれば作ってみても楽しそうだなーって思ってはいたんだよな。それなら、その唐崎?ちゃんに限らず他校の生徒も入れるじゃん。高校生に限らずとも」
「でもそれだと、部室とか確保できないんじゃ?」
西央が、部活を基本とした質問を繰り出す。確かにその通りと思った縫至答が反応する。
「そうよね」
「なら、部活は作りつつ、外でも活動したらいいじゃねーか。やりようはいくらでもある……けど?」
それまで調子よく話していた君塚がテンポダウンする。
「けど、何?」
疑問符を飛ばすは縫至答。
「…部活って、活動目的がないと作れなくね?」
「あ……」
「……キャリアってのを前面に出すわけにいきませんしね……」
「……うーん。そうだね」
と、ここで縫至答が何かを思い立った。
「あ!」
「うわ何よ縫至答」
「とりあえず、今莉理亜ちゃんと唐崎さんが一緒にいるから電話して相談しちゃおう!」
「そうですね」
「まだ会ったことないけど、まあいっか」
縁が繋がれた夜がつながっていき、まだまだ終わらない少女たちの青春の入り口からつながる迷宮は、まだその門を開いたばかりだ。
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