episode±8[絡まりゆく縁と言う名の糸を編むために君は何をしたい?]
「あ、ちょっと思ったんだけど」
「はい。なんでしょ?」
「明日お休みだし、一旦西央さんの家寄って、私の家に泊まってく?うちは、多分大丈夫なんだけど……」
控えめに提案した縫至答の表情を見て西央がくすりと笑う。
「…それ、ちょっと想像しちゃいました。なら、お誘いただいた立場なので、調子に乗って提案しちゃいます」
「なに?」
「さっきの、
「そうなの?!」
「そうなんです」
「だからこの辺での遭遇率高いのか……」
面白そうに告げる西央。それが楽しそうに見えた縫至答が、それまでに感じたことのないような幸せを感じていたのは、まだ本人の心の中だけに留められる。
「…うーん…二人なら狭くはないかな…連絡先知ってる?」
縫至答が、若干
「あ、多分、わかります」
西央が応じた。
「私もなんか勝手に登録されたんだけど消してなくて知ってはいるんだけど、なんか私から連絡するのがね…」
「喧嘩相手、ですからね」
「それがわかってるならなんで今の提案に君塚さんを巻き込もうとするのよ」
「あの人って、きっと天邪鬼なんですよ。人って基本、興味ない人にわざわざ時間使ってちょっかい出しませんもん。それをするってこと、けどその方法がああいうやり方っていうのが、面白い人だなぁって」
西央の、半ばモノローグのようなその言葉に、縫至答の表情がどんどん新家南アそれに変わっていく。何か、共感できる部分があるのだと思った西央だが、そこに突っ込むような野暮なことはしない。喧嘩ばかりだったのだとしたら、認識を改めている思考の途中なのだろうから、それは余計なお世話だ。自分だったら、それは煩わしい、と西央は思った。
「…うん。声、かけてみよう!」
縫至答が、満面の笑みで答えた。
西央の心に、少しの明かりが灯ったのは、彼女だけの秘密。
「で、だ」
陽はもうすっかり落ち。
時刻は21時を回ろうかという頃合い。
「説明しろこの
説明しておこう。
場所は縫至答の自宅にある自室である。3人はそれぞれ部屋着を纏っていて、床に座り、飲み物やらお菓子を囲んでいる。
よくある、女子のお泊まり会のような雰囲気だが、疑問符を飛ばしたのは、もちろん
「ええ?西央さんが誘ったらあなたがきて、ご飯食べて、お風呂はいって、ってだけですよ」
「だから。それよ、なんであたしとあなたが、こんな和やかな雰囲気の空間にいるの。かろうじて、1000万歩譲って、クラスメイトの西央ちゃんならわかるけど」
「それはそちらもそうでしょう?最初から私の部屋でっていうことは伝えてたのに、それを分かった上でも参加してくれたのは君塚さんじゃないですか」
「……ま、まあ?それは、そうなんだけど……」
縫至答の指摘に対して、何かしら罰が悪そうな君塚 子々吏。
「な、なんかね!ちょ、ちょっと、ねぇ…」
「あれー?恥ずかしいんですか?君塚さん」
西央がややニンマリとしながら若干俯いた君塚の顔を覗き込む。
「そ、そんなことないし!?どうしても来いっていうから、付き合ってあげてるだけだし!?」
「その割に、この大量のお菓子買ってきたの君塚さんじゃん」
揚げ足を取る縫至答。
「そ、それは!お邪魔するから!?て、手土産みたいなものだし!?」
「結局、ウキウキできたってことですよねのうちゃん先輩」
「そうなんじゃないかと不覚にも思っているよべにちゃん後輩」
「も、もうあたしのことはいいから!なに!?なんか話したいことがあるんでしょう!?」
「……今日腕
「あれは、あたしが結界張って売った喧嘩だからいいのよ。気にしないでちょうだい。あれぐらいのこと覚悟できてなかったら、あなたに喧嘩なんて売らないわよ」
「…そっか。ありがとう。で、本題なんだけど…実はね」
仕切りなおすように、縫至答がその語尾のトーンをまるっきり変える。
「あと1人、キャリアの知り合いっていない?」
西央と君塚の、全く想像しない話が展開することになる。
開けた扉を、閉めるのは開けた者である。
ただ、続くものがいるとすれば、その者は導かなくてはいけないのだ。
過ぎ去る道に微笑んで別れを告げて、伝えた希望と言う名の嘘を、現実にしなくてはならない。
その希望のサイズが、
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