【第一部】第二章「枯渇的人望」



 公立桜坂高校、桜街道バス停付近。


 「なんか二年生に龍崎先輩って人がいてさ、三白眼にメッシュの頭してて、喧嘩がめっちゃ強いんだってさ」


 「この学校も不良が増えたよねー」


 二人の男子生徒が世間話をする中、雨でもないのに黄色い雨合羽を着て、フードを深く被り込んだ体躯の大きな男が話しかけてきた。


 「もしもし?お二人さん?龍崎さんについての情報をお持ちなんですか?」


 「あ、そうですよ。詳しくは知らないけど、うちの学校の二年生らしいっす」


 「あー、桜坂高校なんですね。分かりました。今度お伺いします」


 そう言うと、男は近くにあった電柱に立てかけてあった自転車に乗って走り去っていった。




 「変なやつだったな」


 「ああ。野生顔だったし。よく見えなかったけど」




**


 「流石に明日は早く家出ないとなー。まさか双眼鏡の前に母がぬっと出て来て、その挙句十円ハゲの危機に遭わされるとは思わなかったし。まぁ、ストレスで円形脱毛症になりかねない家庭環境だけどね。時間の問題だけど」


 ひのは玄関の引き戸の取っ手に手を掛けた。


 「……待てよ?この強いオーラは。私の心が警戒音を発しているぞ」


 びりびりと伝わってくる野性的な感性を感じるひの。これが第六感なのか。そう思った。


 「まさか……母上?!」


 ひのはそろりそろりと戸に忍び寄ると、一センチほど扉を開けて、隙間から覗いた。しかし、目線の先には誰もいない。ひのはすっかり安心して、自室に行こうと玄関で靴を脱いだ。




 「ひの……お帰り」


 冷酷で静かなこの声の持ち主。まさかねー。……そう言えば、うちの「家族」に女性っていたっけ。私は下っ派だろうと。そう思って、そのまま右足を脱ぎ始めるひの。


 「ひの、お帰り」


 あれぇ、おかしいなぁ。少し声色が強くなったぞ。私の幻聴かなぁ。ひのは思い、冷や汗を垂らしながら首を少しずつ少しずつ声のする方へ捻って行った。角度にして三十度。


 振り向けば、着物を着た女性がものすごーく嬉しそうな顔をして木の椅子に座っていた。しかも右手を上げて。位置はひのが開けた扉の反対側にぴったりとくっついていた為、完全な死角に入って見えなかった。やっぱりこの人は女狐だよ。ひのは思った。


「あれれぇ、聞こえてなかったのー?それにしてもずいぶん動きがぎこちないんだけど」


「いやー、最近音楽聴いてばっかだから難聴になったかも知れない。それに、さっさと部屋に行きたかった」


 冷やかに微笑する和服美人。何とか答えて行くひの。ひのは柴犬顔だが、「若虎の嬢」とも家族に呼ばれている。この事を見た目、柴犬なのに、虎なんて母が付けた名前なのかと疑ってしまう。それ以上に、柴犬顔で弱い虎は居るのか?


 狐と虎の死闘。若干狐の方が優勢だった。「虎の威を借る狐」と言えばこの立ち回りが分かるかな?分かんない人は由来、調べてみてくれ。


 「ひのぉ、少し頼みたい事があるんだけど、いいかなぁ」


 甘い声で囁くように言う女性。ほら来たよ。ひのは思った。こうやって私を待ち伏せしてる時は何らかの面倒を押しつけるんだよね。しかし、怖ええ。ひのは「朝の一件」からすんなりと受けるのが嫌だった。


 「いや、やる事あるんだけど。宿題とか」


 「そっかぁ」


 和服美人はそっぽを向き、くすくすと笑ってそのまま畳部屋に行ってしまった。ひのはその引き際の早さに何となく嫌な予感がして、再度同じ台詞を言ってみた。


 「あ、あのさ、私だって忙しい時は忙しいんだから!!」


 少し物怖じしたが要求は押し通したぞ。その言葉を聞いたか聞かないか分からないが、数秒かして、柱越しに和服美人は顔だけ出して言った。


 「私が買い物行くから、ひのは夕飯無しでいい?あなたの好きなすき焼き作ろうと思ったのだけれど」


 「…………」


 回りくどい言い方しないで引き受けていれば良かったと思うひのだった。相変わらず母は分かりづらい。と。


 「じゃ、この中にメモ入ってるから。うちのは大食漢ばっかだからね。頑張って」


 ひのは財布入りの竹籠を母から渡される。ひのは睨むように和服美人を見てからひったくり、へたりと肩を落としながら玄関に向かった。


 そして、玄関を出ようとした時、彼女がもう一言忘れたように付け加えて来た。


 「あっ、業務用小麦粉一袋買ってきて」


 「……無理っ!」


 ひのは和服美人に背中を向けたまま玄関の引き戸を閉めた。


 外は清々しい快晴。はらりと散っていく桜に、ひのは敗北の無念を吠えたくなった。やりはしなかったけど。




 「お嬢、ついて行きやしょうか?」


 「お嬢、車の御用意は?」


 「狐」に惨敗した「若虎」否、「柴犬」を気遣うように。門を出ようとしたひのに対してアロハシャツを着た男達が気遣ってきた。もう破れかぶれだ。お情けなんて要らないから!とひのは思った。


 ひのは不機嫌、悲壮、煩悩、全ての感情をぶつけるかの如く、罪のない男どもに努号を放った。


 「うっさい、ほっといて!!」


 


**


 商店街に着いて、ひのがまず向かったのは肉屋だった。


 肉屋のおじさんは、ニコニコしながら手を揉んでいた。心なしか作り笑いをしているようにも見える。ひのはショウウインドウの豚ブロック肉を吟味している。


 「珍しいね。ひのお嬢ちゃん、どうしたんだい?」


 おじさんは普段来ないひのに対してちょっとした疑問を投げかけた。


 「いやー、お母さんがさ、週一の買い込み日だったんだけどね、帰って来た私に買い物を押しつけやがったんだよ。テレビ ゲームやる予定だったのになー」


 ひのはブロック肉を睨み付けていた。


 「お、お嬢ちゃん、それは肉だよ。『肉を憎んで、母を憎まず。』なんちゃって……ハハハハハ」


 「それ、冗談ですか?」


 ひのはカッとしてレジの上に並べてあった牛肉コロッケを握り潰した。そして、おじさんは青ざめていた。


 「お、落ち着いて。悪かったよ。ジョーク。オヤジギャグ。イッツジャパニーズジョーク!」


 「あ、スミマセン。その豚肉のブロックとこのコロッケ下さい」


 ひのは更に下らない事を言うおじさんをスルーして、お金を払うと店を後にした。


 「次は野菜かー。八百屋はこっちだよね」


 小柄なひのは、重量の重いブロック肉をなんとか抱えながら八百屋に向かっていった。しかし、八百屋の前にはやじうまが群がっていた。




 「何よもー。さっさと買い物終わらせたかったのに」


 ひのは文句を垂れながら人混みに近づく。


 「おいおい、アイツらまた来てるのかよ!!」


 「迷惑な奴らだぜ」


 人々は両手を挙げながら不平不満をぼやいていた。ひのは人垣をジャンプしながら覗く。その先にはナイフを持ったチンピラ二人組が八百屋夫婦を脅していた。


「一瞬見えたんだけど、アイツらうちの組の新入りだった気がする!」


 ひのは焦りを感じて、人混みを掻き分けながら強引に進んで行った。




 「おばさんよー、この店も終わりだぜ?」


 「そうそう。この商店街も俺ら楼雀(ロウザク)組に占拠されて終わりだよ」


 夫婦は震え上がる。ひのはその言葉にイラッとし、人混みを掻き分ける手に力が入った。八百屋のおじさんはおばさんを庇うように前に出て、果敢にチンピラに刃向かった。


 「ひいひい爺さんから継いで来たこの店を明け渡せるかよ!俺ら商人(あきんど)は死んでも店は譲らねぇ。出るとこ出てやるよ!」


 その言葉に人々は興奮し、歓喜の声を上げた。ひのはもろに大声を聞いて、耳にキーンとした音が響く感覚に苦しんだ。


 そして、二人組のポマード長身の方が手に持っていたナイフで店頭にあったこぶし大のリンゴを串刺しにするとぐりぐりと抉りながらおじさんに見せつけた。


 「そっかぁ。じゃあアンタの頭もこのリンゴみたいにぐっさりやられても構わないってわけだな」


 立て続けの脅し文句に中年夫婦は震え上がった。それを見ていたひのは、流石に堪忍袋の緒が切れ、人混みの前に飛び出した。そして、二人組に睨みを利かせながら凛とした声で言った。


 「アンタら、いい加減にしなさい!!」


 「何だぁ?この柴犬ヅラは!」


 「おー、よちよち。おこちゃまは外野に引っ込んでいましょうねー」


 「何よ、私が分からないの?うちはカタギに手を出したらダメっていつも言ってるじゃんか!!」


くっそー、身長と顔のせいで舐められてる。これだから新入りは……とひのは頭を抱えながらぼやいた。


 「お前ら、年寄りの次は女に手を出してそんなに楽しいのか!?」


 「京介?!どうしてここに?」


 「あ?ああ、柴チビか」


 「くそっ、どいつもこいつも……」


 小声で嘆くひの。颯爽と現れた京介。外野は「キョウちゃーん!!やっちまえ!」と言っているような気がした。


 「それはそうと、うちの『家族』を困らせる奴は誰だろうが許さない。帰って寝てろ」


 「家族ぅ?笑っちゃうねー」


 ポマードは挑発するように殴りかかってきた。しかし、京介は顔の前に来た拳を右手で受け止めた。


 「ヘッポコパンチだな。ホントにタマ付いてんのか?」


 そして、そのまま腕をひねりながら胸元まで引っ張って、膝裏を蹴りながら倒し、倒れた男の背骨を思い切り踏みつけた。 そのままリーゼントは失神してしまった。


 「つえー」


 ひのは京介の華麗な捌き方に唖然としていた。




 「てめぇ!兄貴をよくも!!」


 若干小太りのもう一人は、ポマードを慕っていたのか、中身の入ったビールケースで京介を殴りつけてきた。その時の京介は隙だらけだったのか、頭に一発貰ってしまう。京介は頭を抑えながら膝をついた。頭からは血が滴っている。


 「りゅうざきっ!!」


 思わず叫んで駆け寄ろうとするひの。しかし、京介は右手でひのを制し、ゾンビのようにフラフラと立ち上がる。そして、両手がふさがった男に思いっきり頭突きをかました。


 「てめぇと頭の出来が違うんだよっ!!!!」


 そのままぶっ倒れる京介ともう一人のチンピラ。


 「キョウちゃん!大丈夫か?しっかりしろ!!」


 八百屋のおじさんを皮切りに京介のもとには老若男女のやじうまが介抱をしていた。


 「…………」


 ひのは無言でその様子を見ていた。そして、気付かれないように粗大ゴミになった二人のチンピラを家まで引きずって帰っていった。




**


 二時間後。浅葱ひの邸宅。


 ひのは様々なストレスから激昂していた。分かりやすく説明すると、怒りを表す言葉に「鶏冠に来た」とか、「お冠」って言葉がある。ひのの心境を表現するならば、世界を裏から牛耳るフィクサーの金冠を取って付けたような、そんな怒り具合。ひのの精神の大半はそんな猛々しさで染まっていた。


 「あんたら、今晩は飯抜きだからねッ!私の事バカにしやがって。しばらくそこで頭冷やしてなさいよッ!!」


 ひのは庭の池に浸かっている粗大ゴミだった二人組を足蹴にしながら言った。本来ならば、こんな小娘に足蹴にされると自尊心が傷付き、男として生きていけないはずだ。しかし、何故かある理由から縋るように泣き付かれていた。


 「お嬢、勘弁してくださいよー、その顔に免じて」


 「俺、寒くて死にそう」


 男二人は池に入って震えていた。商店街の啖呵を考えてみれば案外小心者のようだ。


 「お嬢、お願いしますよー」


 男達の喚きを無視するひの。ニマニマとした優越感に顔が緩んでいた。そして、ここまで男達がひのに泣き付いてくるのも訳があった。今日という吉日、ひのの親父が帰ってくるらしい。女狐と称され、いつも食えない顔をしてるひのの母も、今晩は精力を付けさせようかとキッチンでスッポンを捌いている。


 「上げてあげるかわりに、商店街での私に対する一件、言っちゃってもいいんだね」


 ひのは母譲りの冷酷な笑みを浮かべ、静かに言ってのけた。その一言は池の水面に反射し、庭に静かに響き渡った。男達の表情は凍りつく。


 ひのが、この「二人の失態」を「チクる」と言った。「その言葉」がコイツらにとっては、数ある殺し文句を並べ上げても、それが及ばないほどの恐怖を駆り立てる物だったに違いない。それだけ逆鱗に触れたひのの親父は恐ろしく、目に入れても痛くないほど娘が可愛いってことが良く分かる。そして、「愛娘を貶された親父の心境が男達の御魂(みたま)二つで清算出来ないのも事実である訳で。


 「いや、お嬢と知らなくてつい」


 「俺ら、ここで頭冷やしますから」


 「今更言い訳かよー。アンタ達、女々しいんだね。つまるとこ、私の顔を覚えてなかった訳か。へぇー」


 ひのは冷酷な笑みを浮かべて、皮肉って言った。


 「あ、そうなんすよ。俺、新人なんで顔がまだ……もがっ」


 「あ、いや、お嬢、いつも家にいるとき着物でしょ?まさか制服姿の可愛い女の子がお嬢だとは思わなくて、あんまり可愛かったもんだから分かんなかったんすよー。あははー」


 リーゼントは、小太りの男の口を押さえつけ、「お前は少し黙れ」と小声で言っているように聞こえた。




 そして、ひのが最も苦手とする人物が、ふすまを開けて姿を現した。


 「ひの、何か面白いことでもあったのかい?」


 あまりの気配のなさにひのは一瞬ビクッとした。ひの以上に冷たい笑みを浮かべながら立ち尽くしている。ひのは母に弱かった為、包み隠さず話し始めた。


 「いや、こいつらがさぁ……」


 「いや、何でも無いっすよぉ。あはははは」


 「そうそう。俺ら、つい血気盛んなもんですから、仲良く行水してたんすよー」


 ひのの言葉を遮るように、大声で二人は言った。流石に女狐に知られてしまえば、自分らの御魂に足らず、「後生の晒し者」にされてしまうだろう。


 しかし、和服美人は更に鋭い一言を放ってくる。


 「で、どうしてひのがここに居るんだい?」


 「あー、それは『プールの監視員』みたいなもんですよ。『男連中は危なすぎて見てらんない』って言って聞かなくて」


 「そうそう。男の行水も絵になるものがあったんじゃないっすかぁー」


 「…………」


 ひのは言いもしないことにむすっとした。


 「フッ。『鯉に粗相の無いよう』にね」


 少し笑い、和服美人はふすまの奥に消えていった。


 「『鯉に粗相』?」


 二人は意味も分からずに顔を見合わせ、唖然としていた。その言葉を聞いたひのは、母上は母上だなと吹き出してしまった。


 「あんたらもお母さんに舐められたもんだねー。『鯉に粗相』つまり、『池の鯉に恥じらいの無いようにしなさいよー』って意味なの」


 ひのはケタケタと小高い笑い声を上げ、笑っていた。しかし、二人はそれどころではなかったみたいだ。


 「ぶぇっくしょん!!」


派手なくしゃみが庭に響き、二人は不幸にも風邪を引いて数日寝込むことになったとさ。






**


 一週間後。京介はいつもの場所でボーッとしていた。今日は鉄格子に前のめりになって校庭を見下ろしている。


 「やっ!」


 「うわあああ!!て、テメェ、殺す気か?!」


 後ろから急に京介の背中を押したのはひのだった。そして、京介の顔をじーっと見つめながら言った。


 「龍崎ってさ、喧嘩強いよね」


 「まー、姉貴のシゴキが『無駄に』効いてるからな」


 京介は苦笑い。そして、頭の中の嫌な妄想を振り払うように顔を叩いた。


 「いやさ、商店街の一件見ててなんか思ってさ。しかも、龍崎、やたらと人気だったよね」


 「まー、俺の実家、商店街の古本屋だしな。あそこのおっさん達にはガキの頃からお世話になってるから」


 「ん?でもでも、赤の他人も怪我の介抱してたような……やじうまっぽい人も居たし、間違いないよ」


 記憶の糸をたどるひの。京介は倒れていたので全く記憶にないのだが。


 「いいんじゃね?誰だって」


 興味のない話をされ、面倒くさくなったのか、京介は仰向けに寝っ転がって空を見上げた。


 しかし、ひのはちょっと神妙な顔をして呟く


 「人の心を支配する最終的な手段ってさ、恐怖による支配って奴らしいよ。それか色仕掛け」


 「ぶっちゃけ、お前みたいな『犬顔でつるペタのチビ』に色仕掛けが出来るかよ!ぶへあ」


 寝っ転がっていた京介の口に靴のつま先を突っ込んで黙らせる。


 「ぶっ殺すよ?あんまり口が過ぎると。私、これでも薙刀の稽古しててさ、これ以上怒らせるとアンタ、タダじゃすまないからね」


 「既に手が出てるじゃねえか!!きったねーな!!ぺっぺ」


 何度も唾を吐き、口の中の気持ち悪さをなんとかしようとする京介。ひのもなんとなく不機嫌だ。




**


 浅葱ひの。実は十三代目楼雀(ロウザク)組頭目の娘なのだ。即ち、ヤクザ。警察の言葉で言うと暴力団。兄弟として兄貴が一人いるものの、兄貴は体力も力も非力。彼女の半分にも及ばない腕力でどうも十四代目を襲名出来ず、ひのにおいても、「男尊女卑」の世の中に生まれし時代の男達を支配している為、部下にどうしても女として舐められている。なので到底襲名出来そうもない。それ以上に身長百四十五センチ。マロ眉につぶらな瞳と言う柴犬のような顔立ちの為、舐められると言うより愛玩動物のように可愛がられている。


 小さい頃からそんな力不足のコンプレックスの中に育ってきた彼女だったからこそ、『絶対的権力』の五文字は飽くなき渇望であり、それと同時に手が届かない高い目標でもあったのだ。


 しかし、彼女の母上、咲(さき)は女性でありながら、部下から慕われる存在でもある。狡賢そうな顔立ち、清涼な和風美人。黒地に白狐の着物が映えるその人は、「女狐」とも謳われている。若くしてひのの兄、宗一を産み、十九歳で籍を入れた。顔立ちに似合わず、度量と二枚舌を持ち合わせる恐ろしい女(ひと)なのだ。


 母の存在によって、「女は力ではなく頭脳だ!」と思い知らされたひの。兄貴に頭の良さをほとんど持って行かれたのか、脳みそが幾分か足りないものの、なんとか出来やしないかと、少ない脳みそで人望や権力を手に入れる方法を必死に模索しているのだ。




 「人望かぁ……」


 隣に寝転がる京介の顔を見ながら、ひのは自分との違いを考えていた。

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