第10夜 招かれた地下施設
真っ暗な闇に覆われた空間に、ゼロのサト江の姿はない。
(っな、何をする気なのよ!? あんたって馬鹿はっ!)
(恐らくだけどよぉーアイツら)
ゆっくりと歩き出すと、身体を身震いさせた彼らは立ち竦んでいた。まるで、目が見えないかのようにだ。
(光りと、熱かなんかを頼りに歩いていたに過ぎねぇんだよっ!)
憶測で、試したのが運よくも、上手くいった。
息を顰めながらボンドはリノに説明をした。
リノが、その化け物に顔を寄せた瞬間。
《ッシャァアアッッッッッ‼》
鋭利な牙と、手に持った何かを振るう音が聞えた。
「!?」と驚くリノをボンドも肩に持ち上げた。
『「何も触んな! 肩で大人しくしてなっ!」』
ボンドの言葉にリノも、口をへの字にさせて言い返すこともなかった。
◇
『母さんはさ、……いつだって、自身を中心に世界が廻ると信じていた』
◆
ふとだったが、ゼロのサト江がトントの言葉を思い出し、思わずと――
『「それは君だって、同じじゃないか。
反射的に言い返してしまった。
見えなくなっていた彼女にボンドが、
『「俺だって、同じは嫌だね」』
視えないゼロのサト江に言い返した。
言い合う中で、突き進むボンドだったが、たまに当たる彼らから攻撃を受けてしまい、傷も負ってしまう。
『「っつ! ってぇー~~……」』
痛みに声を上げるボンドに、
「あのさーいい??」
肩の上からリノが聞く。
(いいから! お前は黙ってろっての‼)
「一か所。どこか遠くに灯りを点ければよくない?」
リノの言葉にボンドの目もぱちくりと。
パッチン! と遥か遠くで灯りが点き、そこに向かい彼らが向かって行った。
その背中を見送り、ボンドはリノを肩から下ろした。
『「リノぉ~~」』
「何よ」
『「思いのほか重いから、痩せろデブ」』
「~~っこ、これでも! 2キロ痩せたわよっ! 死ね‼」
いがみ合い、突き進んだ先には。
大きくも頑丈だと分かる扉が在った。
ガラスの扉から見えるのは無数の液晶テレビだった。
映像は施設の至るところを映し出している。
「こん中に! マッドサイエンス野郎がいんだな!?」
人間の姿に戻ったボンドが声を荒げた。
しかし、ゼロのサト江。
『「いないわ」』
冷淡に吐き捨てる口調に、
「いないってんなら。なんだって、俺たちをこんな地下し――……」
ボンドも言い返す途中でリノが言う。
「――殺す気なのね。あたしたちをっ!」
ガッチャン! と重い扉が開く音が轟いた。
驚く2人に、ゼロのサト江が嗤う。
『「入らないと。それこそ死ぬわよぉう?」』
喜々とした声に、ボンドとリノは慌てて中に入るのだった。
そして、扉も勢いよく閉じられた。
ボォオオオゥウ――……
突然、動き出した空調にリノも、
「本当に殺す気なのね! 妹だとか言っておきながらっ‼」
室内に姿を現したゼロのサト江に言い放った。
「いやいや。ただ、空調を入れてくれただけだろう。こりゃあ」
ボンドが室内の湿気と熱さに、手で顔を仰いだ。
「それに
リノは頬を大きく膨らませ、近くの椅子に腰を下ろした。
腕を組み、足を組んでブラつかせた。
「っでぇ~~? ここで何を視せる気なんだよ。お前って奴は」
『「ここには《トント博士の研究記録》が保存されているのよ」』
ボンドは液晶モニターを、1つ、1つと見ていく。
何かの最中か、研究の前後なのか。全くもって分からないのだが。
「ははは! 訳が分かんねぇ~~w」
肩を揺らして大きく口を開けて笑うボンドを他所にリノの表情は険しいままである。
「いいから。とっとと、あんたの《計画》をさっさと言いなさいっ」
硬い口調でゼロのサト江に言うリノにボンドも、
「まぁ、アレだよ。アレ。報連相は大事だろォう? それを知って、俺とリノがどう動くかが、お前さんは心配なんだろう? だろう? サト江ちゃんは」
両手の指先を合わせて言うとゼロのサト江も、より鮮明な姿で2人の前に現れた。3Dと言われなければ、人間と見間違う映像であるからだ。
――あー~~映っているのかな? 大丈夫なのかねぇ??
突然と、室内にボンド以外の男の声が響いた。
その声に聞き覚えのあるリノの目が大きく見開かれた。
数十台以上ある液晶
黒い短髪に色白な肌、垂れた目にはクマがあり如何にもな寝不足な研究者、そのものの表情。黒ぶち眼鏡を外して目許を指先で摘まむ行動をしている。
よれた白衣と、ノーネクタイと大きく胸元を開けた白いYシャツ。
「ぉ。若……」
初めて見たトントにボンドも、率直な
明らかに、ボンドやリノのような10代そこそこの姿である
『「この映像は、初期のトント博士の貴重な資料よ。今から、10年以上前の、この島に上陸したときの頃の様子ですよ」』
ゼロのサト江の言葉にリノも口を小さく動かした。
「【研究記録】ってことは、……それは、つい昨日や今日のもあるってことなの?!」
確かめるリノの言葉にゼロのサト江も微笑んだ。
『「今に至る、全記録が残っているわよ? お姉ちゃんw」』
からかうような表情にリノも椅子から立ち上がった。
そして、大きく声を張り上げ、命令をする。
「今すぎに見せなさいっっっっ‼」
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