【第四章】第二章「逃げろ!」
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「……ちっ、来やがったか!」
師匠はしかめた顔をしていた。二階にいた俺は、一階のショットガンの重い銃声が近くに聞こえた。古くなった木造校舎に響く銃声がだんだんと近づいてくる。ショットガンは間隔を空けて放たれ、しかし的確に俺の周囲の壁を削り取っていった。炙り出す作戦なのだろうか。この校舎に籠城していても殺されるだけだ。そう思い、俺は逃げることを心に決めた。
「おい、のそ!お前はただ逃げて、背中から撃たれたいのか?」
「いや……」
「恐らく、敵は二人だ。銃声を聞く限り、玄関と裏口を塞がれていて、射程はかなり長い、拳銃(チャカ)は殺傷能力の高いショットガンを使っているだろう。俺が持っているのは、ハンドガンとナイフだけだ」
「……どうしましょうか」
「ちょっと、今から言うものを集めてきてくれ。床用の業務用ワックス。それから、粉末消火器、白線を引く石灰。そして、マッチだ。大体は三階の倉庫にあるだろ」
「……分かりました」
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俺は言われたものをかき集めると、そのまま師匠の所に手渡した。師匠は、「二階の真下が、正面入り口に当たる部分」に石灰の袋を置いた。そして、粉末消火器を一本振りまき、そのまま、離れた位置から拳銃で袋を狙った。
「ちょっと危ないから廊下の端まで離れてな」
俺はダッシュで一階に当たる踊り場にいた。敵は広い廃校舎の正面入り口でショットガンを構えて居座っているのが見える。出てきたところを撃つ算段だろうか。そして、師匠が構え、撃つと、周囲のガラスが爆(は)ぜ、粉塵爆発が巻き起こった。そのまま腐った床が、敵の頭上に崩れ落ちた。
「何の音だ!」
もう一人の敵が裏口から階段を駆け上がって来るのが見え、俺は粉塵消火器を抜け落ちた床の上に蒔く。火は消えないように。しかし周囲は覆われて見えなくなっていた。もう一人の敵は、耳当て越しのつんざく爆発音。そして、崩れ落ちた床に腰を抜かしていた。絶命はしていないようだ。
「よし、撒いたな。のそ、そのまま業務用のワックスの缶を思いっきり、玄関に向かって転がせ!」
俺は二本のワックスの缶を転がすと、師匠が缶を銃で撃ち抜く。ワックスが床に飛び散った。そして、言われるままに消火器を撒いた。ワックスの撒かれた床は、粉末が舞い、周囲が見えなくなっていた。
「これで奴らが来る道が塞げたわけだ。このまま踊り場を出て、二階に来た敵を撒いちまえば……俺らの勝ちなんだが、もう一つ、裏口に行く通路に石灰を置け」
俺と師匠は、石灰の袋を裏口の周辺に置いた。そして、出てきた瞬間に裏口を粉塵爆発で破壊。壁や床が崩れ、裏口も、正面からの退路も完全に断たれた。二人の敵は出口のない廃校舎に缶詰めになった。
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「……上手く行きましたね」
「甘い。お前はこのまま霧前市に行って、楼雀組に行け。今持ってる金だって、役に立たない。逃げて逃げて逃げろ!!立ち止まってる場合じゃない」
「でも、し、師匠……お、俺」
「早く行け!!殺されるぞ!!」
「わっ、分かりましたっ!!」
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