【第四部】第一章「悪夢と狂気」
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「え?あ、あけちゃん?!……なんで」
「詳しいことはまた話します。竜之介さん、今すぐ、海外に飛ばないと殺されますよ?」
「え?……あ、ちょっと?!……おいっ!」
そのまま非通知着信は切られてしまった。そして、廃校で電話を受けた際に、師匠は俺の話を聞いていたのだろうか。少し調べて教えてくれた。
「お前もやっちまったな。足が付く形で。どうやら、あいつは有名なスナイパーを雇ったようだ。表立って動けなくなっちまったな」
「……ま、まじっすか!てか、俺の家族は……」
そのまま、俺は実家の母に連絡した。
「……はい、もしもし。あ、リュウ!!どうしたの?」
「母さん!!おっ、……落ち着いて……聞いてくれ。波留(はる)を連れて、すぐに森城町の廃校舎に来てくれ」
「え?どうしたの?!いきなり?!」
「く、黒石が……お父さんを殺した……犯人が今度は母さんたちを、か、家族を殺そうとしてるんだ!!……い、今すぐ、頼むから……」
そのまま、俺は電話を切った。口下手なので、必要以上に話せなかったのだ。
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翌日。不穏な動きがあった。俺は眠れなかったのだ。俺が「黒石の敵意に対して引き金を引いたか」と思うと眠れなかった。廃校舎に俺はそのまま身を隠していた。着信が入る。履歴を見ると、波留から電話があった。掛けなおすと波留はすごい勢いで俺に怒鳴りつけてきた。
「……おにいちゃん!!なにしたの?!……な、なんかっ、家の前に変な男の人が来たの!!」
「……お前っ!!どこにいるんだ!!お母さんを連れて、そのまま逃げろ!!いいな!!」
そして、俺は止まらない動悸を抑えつつ、深呼吸して、「森城町の駅に母親と来るように」とメッセンジャーを送信した。いつも以上に早口になり、饒舌になる自分が信じられなかった。
「……師匠。どうしよう」
俺は泣きそうな顔をして、師匠に泣きついた。
「結局、のそは甘ちゃんだな。こうなることをお前は予測できなかったのか?『全てを捨てる』ってこういう意味だと分からなかったのか?」
「甘かったです。本当に甘かった……」
俺は膝をついて、師匠の前に泣き崩れた。
「……ったく、分かったよ。ちょっと待ってろ」
そう言うと、師匠は携帯電話で「楼雀(ロウザク)組の京介さん」に電話をしているようだった。
「悪い、キョウ、一見仕事を頼まれちゃくれないか?……うちの愛弟子の、『のそ』の母親と妹を匿ってくれ。金?ああ、奮発する。……ちょっと厄介な状態になった。ああ、分かった。頼んだぞ。……急いでくれ」
「……」
「今電話した。楼雀組でお前の家族を匿(かくま)ってくれるらしい。ひとまず、急いで連絡しろ!!早くしないと母親も妹も殺されちまうぞ!!」
「え、でも……」
「つべこべ言うな!!」
「は、はいっ!!」
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そして、俺は電話を波留に掛けた。この際、ヤクザでもなんでもいい。破れかぶれだ。そう思った。そして三時間ほどして「家族の身の安全が確保できた」と聞いてホッとしたのも束の間だった。廃校舎に一発の銃声が鳴り響いた――。
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