幕間 ー 朝凪嫉妬日記
ずるいっす!
おかしいっす!
最近、神渡ビルで子猫のニセウが大人気なんすよ。
葉風さんや風凪さんは当然として、風香さんや蝶子さん、玖音様に荼枳尼様までニセウを抱いて、「かぁわいぃいぃ~」と顔を崩すんすよ。ほっぺスリスリまでするんすよ。
何よりも悔しいのは、中野友里乃さんまでがニセウを観ては目尻を下げるんす。
納得できないっす。
この朝凪が狐の姿でうろちょろしても、そんなこと一度も言われたことないんす。
子狐の姿に変化しても、誰も抱っこはもちろんナデナデもしてくれないってどういうことっすか?
子猫に変化すればいいじゃないかと総司さんに言われたんすけど、それは何かに負けた気がするんでイヤなんす。
やっぱあれっすか?
時代は猫っすか?
子猫最強っすか?
同じモフモフでも狐じゃ物足りないんすか!?
「相手が子猫じゃ仕方ないかもしれないです」
借金肩代わりした立花さおりさんに愚痴ったら、そう慰められたんす。
仕方ないってどうしてっすか? とも訊いたんす。
「んー、やっぱり猫の愛らしさは……ねぇ?」
なんかはっきりと答えてくれなかったっす。
でも感じたんす。
猫と狐の間には大きな差があるんすよ。
でもっすよ?
神渡ビルにはもともと化け猫や猫又はいるんす。
みんな猫には耐性があるはずなんすよ。
なのに子猫だというだけでどうしてなんすか?
納得いかないんで荼枳尼様に訴えたんす。
「可愛いに明確な理由はないの。あまり面倒なことを言うとおしおきよ!」
そう言われて、おしおきされたんす。
いつものロープじゃなく、術をかけられたロープで亀甲縛りされたんす。
もちろん、後ろ手観音胡座状態ででしたっすけどね。
口もきけないほど力が抜けて、廊下で黙って放置されるがままだったんす。
このおしおきは辛かったっすよ?
かなり気だるくて、座っているだけなのに辛いんす。
いつもと違って気持ちよくないんす。
あ、おしおきの話はどうでもいいんす。
とにかく、ニセウだけが女性に可愛がられるのは全然納得いかないんす!
・・・・・
・・・
・
「九兵衛、河童や人魚の間でニセウの人気はどうっすか?」
「河童はともかく人魚からは避けられてるよ」
「ん? どうしてっすか? 他では可愛い可愛いって愛されてるんすけど」
「は? 何言ってんだ?」
「何って事実っすよ」
「あのな? 人魚は魚類の系譜だぞ? 猫にとっては餌だ。猫は天敵だろうが」
「ほほう……」
「何を企んでるのか知らんが、やめておけ」
「子狐に化けたら、人魚のお姉さん達に愛されないかと……」
「バカだなぁ。狐だって魚食べるだろうが!」
「じゃあ、この朝凪を可愛がってくれる人は居ないんすか?」
「おまえに限っては、狐か猫かの話じゃないんだよ」
「ま、マジっすか?」
「ああ。
「このビルにそっち方面の方は……」
「お前だけだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます