◇あとがき◇
読者の皆様こんにちは。ロマサガ3HDリマスターを携帯ゲーム機で遊びたいがためだけに、ニンテンドースイッチを買おうか悩んでいる笹木さくまです。
ページの都合や蛇足感もあって、6巻には入れなかったエルフ村での出来事に加えて、展開的に上手く挟めなかった短編、そしてもう一つのエピローグを掲載させて頂きましたが如何だったでしょうか。
少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。
さて、書きたかった事は本編とこのおまけで書き尽くしてしまったので、語る事が残っていないのですが、数行で終わってしまうのも寂しいので、本作がどのように作られたのかというメイキングの話でもしてみようかと思います。
裏話で読後感を濁したくないという方は読み飛ばしてください。
まず、1巻の後書きでも書いたように、『ド○クエのように死んでも蘇ってくる不死身の勇者がいるとどうなるのか?』という発想からスタートしました。
そして『物理的に殺せないのなら精神を折るしかない』となったのは、1~3巻で書いてきた通りです。
次に決めたのが物語全体での大目的です。
不死身の勇者がいる事による問題を描くのですから、それを取り除く事、つまり『勇者を生み出しているモノを倒して不死身をなくす』とすんなり決定しました。
それが世界のシステムといった曖昧なモノだと、最終決戦での盛り上がりに欠けますから、ラスボスはちゃんと人格のある個人にしようと決まると、これまたすんなり『女神エレゾニア』という敵が生まれました。
何故、女神になったのかといえば、ド○クエ3のル○ス様が頭に浮かんだからです。(ル○ス様はあんな腹黒じゃないですが)
名前がエレゾニアになったのは、女性らしい響きを残しつつ、ゾー○様っぽい邪悪さを漂わせようとした結果です。
あと、『神を倒したら不死身を失う』という発想は、サ○2のオーディンから影響を受けていたと思います。
そして女神エレゾニアの正体ですが、『神=人々の信仰をエネルギーにする存在』という発想があったのと、『本物の神様=人間とは全く異なる思考をした超越存在』という思いがあり、あくまで人間の手で倒せる存在と考えていくと、『神になろうとして人々を欺いた元人間』という作中の設定になりました。
(余談ですが、ガチの神様をコロコロするゲームこと『女○転生2』も大好きです。今の時代にやったら過激派の爆破テロとか受けそうで怖いですよね。当時のア○ラス社員は怖いもの知らずだな……)
こうしてラスボスの設定が決まると、あとはこれをどう倒すのかを考えるだけです。
ただ、ここで一つネックとなるのが『主人公が知略タイプ』という事です。
極端な話、神だろうが悪魔だろうがレベルを上げて物理で倒すのが、一番簡単かつ確実なのですが、生憎と真一にはそれができません。
それで散々悩んだ末に、『全世界に偏向報道を流して民衆を扇動、神への信仰を失墜させる』という、マスコミュニケーションの負を凝縮したような作戦に決まりました。
割とベタな方法なので、もっと斬新な作戦にできれば良かったのですが、残念ながら思いつかず……。
その代わりといってはなんですが、『勇者を殺害&自動蘇生のループで魔力を削る』という、ドMのギャグで中和しなければエグすぎる作戦を追加しておきました。
で、ラスボスの倒し方が決まったら、そのために必要なモノを積んでいけば完成です。
①エレゾニアの正体を探り出し、倒し方を考える(4巻&5巻)
②人々がエレゾニアに疑問を抱き、信仰心を捨てる布石を打っておく(3巻)
③エレゾニアから信仰心を奪える別の信仰対象(リノ)と、悪行を全世界に放送できる要員(サンクティーヌ、魔導体、ティグリス王国との協力)を用意する(2巻)
④エレゾニアを弱体化させたうえで倒せる戦闘力(魔王、アリアン)の確保(1巻)
といった感じで、ラストを決めてそこから逆算する形で本作は作られていました。『帰納法』と呼ばれる手法ですね。
この帰納法ですが、予め決めておいたラストに着地できるという大きな長所がある反面、一つ短所があります。
それは『引き延ばしが難しい』という事です。
4巻の後書きでも触れましたが、3巻発売後に電子版の方が妙に売れまして(半額セールの影響でしょうか?)、本作は打ち切りに合う事もなく、ちゃんと最後まで書き切る事ができました。
読者の皆様には改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
(ここだけの話、電子版の売れ行きがなかったら、6巻までは書けなかったと思います)
それで、CMを作って貰えるくらい売れたので、担当さんから「もう一巻くらい増やせませんか?」という、ありがたいお誘いを頂けたのですが、「すみません、無理です」と私の力不足で断ってしまいました。
その理由が帰納法の欠点である『ラストまで道が固まりすぎているので、引き延ばす余裕がない』というものです。
もちろん、上手い人なら可能だと思うのですが、帰納法は引き延ばしに向かない、もっと言えば『長期連載(長編小説)には向いていない手法』なのでしょう。
そもそも、最後まで出版できるか分からない商業作品の場合、遠大なプロットを作っておいたとしても、無駄になる可能性があります。
あと帰納法だと、結末のために伏線を張る事に集中してしまい、一話や一巻ずつの盛り上がりを軽視してしまいがちです。
なので、終わりから逆算するのではなく、始まりから作っていく『演繹法』の方が、その時々の全力投球で人気を取りに行けるという意味でも、長期連載に向いているのでしょう。
ただし、演繹法の欠点『風呂敷を広げすぎて畳めない』のせいで、竜頭蛇尾になってしまいがちですが。
(具体的な名前は伏せますが、最初の期待が大きかった分だけ、落差による最後の失望も大きくなってしまった作品がいくつもありまして……)
『終わりよければ全てよし』とは言いますが、そもそも『終わりまで辿り着けない』という悲劇もあるわけで、帰納法と演繹法のどちらが良いのかは、判断が難しい所だと思います。
ただ私の場合、性格的に帰納法でばかり書いています。
何故かというと、物語のラストシーンが書きたくて小説を書いているので、嫌でも帰納法になるというか、着地できずに終わるのが怖いので、演繹法なんて恐ろしくて出来ないというか……。
週刊少年ジャ○プの長寿連載作家さんとか、シリーズ物で20巻を越えている小説家さんとか、いったいどんな鋼の精神力をしているのだと尊敬するばかりです。
長々と書きましたが、結局何が言いたいのかというと「私は長編小説を書くのに向いてないな」という事を、デビューから10年経ってようやく気がついたという事です。
振り返っても『あやかしマニアックス』が全5巻(WEB版のオマケを含めても6~7巻)。WEBで掲載していた『英雄になれない槍使い』にしても、文庫に換算すると4巻分くらいです。
他の打ち切りになった作品にしても、3~5巻くらいの構想でしたから、私は5巻前後の中編が向いているのでしょう。
そんなわけで、新しく始まった『暗黒騎士様といっしょ!』も長編にはならないと思いますが、完結させる意思だけはあるので、応援して頂けると嬉しいです(宣伝)
さて、これで私が書く『女神の勇者を倒すゲスな方法』は幕引きとなりますが、物語に終わりはありません。
空白の期間や未来を想像して楽しんで頂けたのなら、作者としてこれほど嬉しい事はありません。
最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
追記・サンクティーヌが青き竜に頼んで、真一をTSさせて――という話も考えていたのですが、趣味に走りすぎかなと思って自重しておきました。
女神の勇者を倒すゲスな方法・おまけ 笹木さくま(夏希のたね) @kaki_notane
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