第17話キス
「違います!ソフィアさんを嫌いなはず有りません!!ただ、ソフィアさんが優しくしてくれてるのに、俺、全然結果を出せないから・・・」
直樹は自分の不甲斐無さを恥じ、涙を流す。
「結果ってなあに?私は直樹くんと出会ったばっかりだよ?私と直樹くんは、これから沢山お互いの事を知って、いっぱい一緒に思い出を創って、色んな事を分かち合って行くんだよ?
結果なんて、まだ出て無いじゃない」
ソフィアは直樹の掌を握る両手の力を強くする。
「私たち、仕事で一緒にいるんじゃないよ?私は直樹くんと一緒にいたいから一緒にいるんだよ?私はね、直樹くんが何かをして、上手く行った時も、上手く行かなかった時も、直樹くんと一緒にいたいよ。
だってそうでしょう?直樹くんが何かをして、上手く行ったら私も嬉しいし、上手く行かなかったら私が慰めたり支えたりしたいんだもの」
ソフィアの目からも、涙が零れた。
「私がね、直樹くんに優しくするのは、義務なんかじゃないよ?私が直樹くんに優しくしたいと思うのは・・・」
ソフィアは直樹にキスをした。
「私が、直樹くんを、好きだからだよ。直樹くんの事が、大好きだからだよ」
涙を流しながら、ソフィアは微笑んだ。
ソフィアが目を細めると、涙がポロポロと溢れ出す。
ソフィアにキスをされ、ソフィアに好きだと言われ、ソフィアに大好きだと言われた。
直樹は目まぐるしく起こる状況の変化に追い付けなかった。
そんな直樹が口を再び開く。
「綺麗だ・・・」
「嫌い?直樹くんは、私の事、嫌い?」
ソフィアは綺麗と嫌いを聞き間違えた。
「嫌いじゃなくて、綺麗です。美しい」
直樹は身体を起こし、ソフィアの頬に手を添える。
そしてソフィアの頬を伝う涙にキスをした。
直樹はソフィアの事を、ソフィアの涙を、心の底から美しいと思った。
灰色だった直樹の味覚に七色の光が射し込む。
「私ね、直樹くんに、人工呼吸をしたんだよ。それがね、私の初めてのキス」
「ありがとうございます。俺のキスもそれが初めてです」
「だからね、これから、いっぱいいっぱい、キスしよ?」
「・・・今からですか?」
「今から」
授業は?と直樹は思ったが、家に帰ってから娯楽を遠ざけて勉強に打ち込めば良い事だ、と思った。
二人きりの保健室。
スクール水着のソフィア。
少し濡れたブロンドの髪。
これ以上に大切な事など、この宇宙に有り得るのだろうか?
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