第16話保健室

「ソフィア!?」


 レイナは驚く。


「メッチャ速い!」


「すげえ」


 生徒達はソフィアの泳ぎのスピードに瞠目する。

 ソフィアはあっという間に直樹の下に到達し、直樹の身体を支える。


「直樹くん!しっかり!!」


 ソフィアは直樹の身体をプールサイドへと引っ張る。

 直樹は気絶していた。

 足を攣った痛みで口を開け、水が肺に入ってしまったのだ。


「大丈夫か!?」


 体育教師と幾人かの生徒も手伝い、直樹はプールサイドに運ばれた。


「水を飲んでいるようだな」


 体育教師が言った。

 ソフィアの髪は髪留めが外れ、垂れ下がっている。

 垂れ下った髪をかき上げ、ソフィアは横たわる直樹に口付けをした。


「!!!!!!」


 その場にいた皆が驚く。


「ソフィア!?」


 レイナは驚きの余り声を上げた。

 直樹に口付けしたソフィアは息を吹き込む。

 そして心臓マッサージをする。

 そしてまた人工呼吸をして、心臓マッサージをした。


「げほっ、げほっ」


 直樹は口から水を吐き出した。


「気が付いた!?」


 ソフィアは直樹に声をかける。

 しかし返事は無い。


「完全に気を失っているようだな」


 体育教師が言った。


「山田を保健室まで運んでくる。それまで泳ぐのは禁止!いいな!?」


 体育教師は直樹を担ぐ。


「私も行きます!!」


 ソフィアは立ち上がる。


「そうか、好きにしろ」


 直樹は体育教師とソフィアに保健室へと運ばれた。




 ≪数十分後≫


 直樹は保健室のベッドに横たわっている。


「・・・・・」


 直樹は意識を回復した。保健室の天井に灯る人工的な光が直樹を陰鬱な気持ちにさせる。


「気が付いたっ!?」


 蒲団からはみ出た直樹の手をソフィアが握る。


「ソフィアさん・・・」


 直樹は状況を把握出来なかった。

 必死に記憶の糸を手繰る。


「ああ、そっか、俺、足攣って溺れたんだ・・・」


 直樹は状況を思い出した。

 そして、溺れたのは足を攣ったからなんですよ、とソフィアにそれとなく伝える。


「かっこ悪いとこ、見られちゃいましたね」


 自嘲気味に言う。


「格好悪い事なんか無いよっ!!」


 ソフィアは否定する。


「ははは、ソフィアさんは優しいですね」


 直樹は渇いた笑いを上げた。


「なんでそんな言い方するの!?それに、なんで敬語使うの!?」


 ソフィアは直樹の言葉に困惑する。


「ソフィアさんが、あんまりにも優しいから、自分が嫌になって・・・」


「私の事、嫌い?」





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