第14話ストレッチ

「ソフィアさん!」


 直樹は歩み寄りソフィアに声をかける。


「直樹くん!」


 ソフィアも直樹に歩み寄る。

 ソフィアのブロンドヘアーは後ろで一つに纏められ、アップにされていた。

 普段とは違う(と言っても二日目だが)ヘアースタイルに直樹は心躍らせる。

 ブルーアイが直樹を真っ直ぐに見詰め、心を射抜く。

 吸い込まれそうだ、と直樹は思った。

 宇宙飛行士が地球を見た時にも、同じように魅了されるのだろうか。

 しかし、直樹が見詰める水の惑星は二つ有った。

 ソフィアの右目と左目。

 幻想的だ、と直樹は思う。

 揺れ動く光のカーテンはソフィアを照らし出し、スク水の黒い光沢がソフィアのボディ・ラインを艶やかに描き出し、ソフィアの白い肌を更に美しくした。

 カラーリングでは無い天然のブロンドヘアーの前髪がソフィアの眼前に垂れ下がり、そこから覗くブルーアイが輝く。

 ソフィアの海よりも深く、空よりも澄んだ青い目が、ソフィアの意志で自分を見詰めているのだと考えた時、直樹は身震いした。

 なんて美しいのだろう、と思った。

 触れたい、と思った。

 抱き締めたい、と思った。

 直樹は無意識に手を伸ばす。


「はい!それでは今から授業を始めます!!集合!!!」


 体育教師が大声で叫んだ。


 直樹は我に返り、惜しむ気持ちと安堵の気持ちを抱いた。


「それじゃあ今日は50メートル泳いでもらいます!まずは準備体操から!!」


 体育教師の指示に従い、生徒達は準備体操を始める。

 直樹もストレッチを始めると、隣でストレッチをしていた男子生徒が話しかけてきた。


「お前、すげえな」


「うんうん、勇気あるよな」


 後ろの生徒が同意する。


「直樹はソフィアさん狙いなのか?」


 隣の生徒が尋ねる。


「ってか、皆、自分の隣の席の女子狙いだろ」


 後ろの生徒が言う。


「狙いとか、そんな陳腐な言葉にするんじゃねえよ。俺はソフィアさんが好きで、尊敬しているんだ」


 直樹は包み隠さずに言った。


「直樹、すげえな」


「尊敬するわ」


 男子生徒達は直樹のノーガード戦法に敬服した。



「それにしても」


「ああ、堪らねえ」


 男子生徒達は少し離れた場所でストレッチをするスク水姿の白人美少女達を見る。


「天使だ」


「ここは天国だぜ」


「天女だ」


「ここは天界だぜ」


「仙女だ」


「ここは桃源郷だぜ」


「妖精だ」


「ここは楽園だぜ」


「菩薩だ」


「ここは極楽浄土だぜ」


「女神だ」


「ここは理想郷だぜ」


 様々な男子生徒がワンパターンな会話を繰り広げる。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る