第13話プール

「ぬっ、ぐっ、ぬぬぬっ」


 担任教師は生徒達の熱気に圧倒された。


「ええい!好きにしろ!!とにかく、さっさと準備せんかい!!」


 担任教師は折れ、男子生徒も水泳に参加する事になった。

 ソフィアの水着姿を拝めるぞ、と直樹は思ったが、直ぐに重大な事実を想起した。

 直樹の学校のプールは大型で、50メートル有る。

 しかし直樹は、25メートルも泳げなかった。

 直樹は息継ぎが苦手である。

 だが、それが一体なんだと言うのだろうか?

 ニーチェだかゲーテだかが『青春とは人生の一部の時期を言うのでは無く、生き方を指す言葉である』とかなんとか述べていた。

 それは嘘っぱちだ!と直樹は思った。

 多感な思春期の一瞬一瞬がとてつもなく世界を巨大に見せているのだ。

 醜いものは一段と醜く。

 美しいものは一段と美しく。

 青春を駆け抜ける中で流れる汗や涙がこの上なく美しくキラキラと輝く事を一体誰が否定できると言うのだろうか。

 ネット検索やエロ本で見られる水着姿とは文字通り次元が違う。

 VRが進歩しようが、今この瞬間に拝めるソフィアの水着姿を見逃すのは愚かと言うほかない。

 生徒達は更衣室に移動する。




 ≪更衣室≫



「直樹の事、見直した」


 海音寺春也(かいおんじはるなり)はそう言った。


「俺も見直したぜ」


「男気有るよな」


「男を見せられたぜ」


 クラスメイトの男子も軒並み賛同する。


「ありがとう。皆も立ち上がってくれたから良かった」


 直樹は素直に賛辞の言葉を受け止めた。

 学校指定の水着に着替え、プールへ移動する。



 ≪プール≫



 プールへ到着すると、すでにクラスメイトの白人美少女たちは学校指定の水着に着替えてその場にいた。


「うおおお!!」


 男子生徒達は感嘆の声を漏らす。

 ガラス張りの天井からは太陽の光が惜しみなく降り注ぎ、巨大なプールの中を静かに揺れる水面は波立つ度に光の柱と舞い踊る。

 黒く光沢の有るスクール水着から美少女たちの白い手足がスラリと伸び、降り注ぐ陽光はブルーやグリーンの目を一際強く輝かせた。

 スクール水着の黒さが彼女たちの肌の白さを際立たせる。

 水泳帽が無いのも有り難かった。

 私立高校ならではの恩恵だ。

 見惚れるばかりの彼等の中から、勇気ある一歩を踏み出す猛者が現れた。

 勿論、山田直樹である。




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