第10話いいね!
その日から空蝉男子高校は空蝉高校に変わり、空蝉高校の男子生徒も変わった。
女優の話題は新垣結衣だったのがリヴ・オドリスコールに変わった。
ドラゴンクエストⅤ天空の花嫁では究極の選択でビアンカ、フローラ、デボラに対して比率が8:1:1だったのが、10:0:0に変わった。
何より決定的だったのは、校長のフェイスブック。
今までは教頭のおべっかイイネ!ばかりだったのが、取るに足らない投稿にも男子生徒からイイネ!の嵐。
空蝉高校男子生徒はツイッターでアニメや漫画、ゲームの話に興じるばかりだったが、校長への感謝の一心でフェイスブックのアカウントを開設する生徒が大勢いた。
言葉づかいは丁寧になり、校長を見かけると挨拶を欠かさないようになった。
野次も飛ぶ事は無い。
そして翌日。
空蝉高校の男子生徒達はそわそわしていた。
どうやって隣の席に座る白人美少女と仲良くなればいいのだろうか、と。
登校途中にも議論が交わされていた。
それは空蝉高校の男子生徒が体験した初めての生産的な議論だった。
今までも議論を交わす事が有ったが、それは自分の主張や意見を押し通す為、相手の主張や意見を突き崩す為だった。
しかし、隣の席に今日も座るであろう白人美少女と距離を縮めたいという共通の目標が出現した以上、思想や攻撃的感情は議論から雲散霧消する。
皆が皆、自分には経験値が絶対的に不足していると言う現状を認識していた。
男子生徒たちは自分の知る情報を洗いざらい話し、闇鍋になる事を危惧しながら一つの有効なモデルを構築しようと懸命になった。
しかし、そのような奮闘とは一線を画す者もいる。
言うまでも無く山田直樹である。
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