第9話:最終ミッション、デトワール家潜入
夜が更けた。
巨大な時計塔が、十二時を告げる鐘を鳴らし始める。
町の最北端まで響き渡るその鐘の音に耳を澄ましながら、二つの影は静かに息を吐く。
今宵は満月。
割れたガラスのような月の姿が、なぜだか今日は美しく思える。
それはまるで、ダイヤモンドのような輝きを放ち、二人の行く末を祝福しているようだ。
青い焔の翼を纏った、悪魔のような影が声を出す。
「大丈夫べか?」
白い翼の天使のような影は、ただただ頷いた。
そして、時計塔が十二回目の鐘を鳴らし終えた。
「さぁ、最終ミッション開始よっ!」
二つの影は、走り出す。
デトワール家の屋敷は、平屋建てだというのに、その高さは三階建てに匹敵する。
暗闇の中にそびえ立つ巨大な壁は、まるで孤島の要塞のようだ。
屋敷の周りには武装した制服警備員が常時配備され、街灯の明かりの下で辺りを監視している。
木の陰に隠れたロゼッタとアヴァン。
ロゼッタは、玄関近くの制服警備員数名に、体が固まって動けなくなり、声も出せなくなるという恐ろしい呪文、硬直呪文をかける。
この呪文は思考回路も硬直するために、呪文にかかっている間に目にしたもの、耳にしたものを記憶することはできない。
それをいいことに、ロゼッタとアヴァンは堂々と玄関の前に姿を現した。
目の前にある、見上げるほどに巨大な大玄関のその扉は、何十もの鍵で厳重に施錠されている。
しかしそれも、ロゼッタの魔法の前では無に近い。
ロゼッタが魔法でその玄関の鍵を全て解いた後、アヴァンがの怪力で扉をゆっくりと押し開けると、その先に現れたのは、天井が嫌に高く、冷たい空気に満ちた、暗くて長い不気味な廊下。
およそ人など住めそうにないと感じるのは、屋敷中に流れる負のオーラの為だろう。
この淀んだ空間に、確かに存在する闇の気配を、二人は感じ取っている。
それは、アヴァンの中にいるエビルにももちろん伝わっている。
『なんだこりゃ……。とんでもねぇ……。ハーツもそうだが、それ以上の何かが、ここにはある……。闇の世界に通ずる何かだ。それも、おっかねぇほど強力な……』
エビルの言葉に、アヴァンは慎重に辺りを見回す。
通路の壁に、何となしに掛けられている絵から、叫び声のようなものをアヴァンは感じ取った。
美しい女性が微笑んでいるその絵は、恐ろしく魅力的で、同時に冷たい。
アヴァンは、腰のホルダーから黒い銃を取り出し、その絵目がけて銃弾を放つ。
銃口から飛び出した黒い弾は、一瞬のうちにその絵に溶け込んで、中からは二つのハーツが浮かび上がってきた。
「なっ!? 二つもっ!? なんてこった……」
ハーツは薄紅色の光を放ちながら、屋敷の壁をすり抜けて夜空へと消えていった。
「ね、言ったでしょ? この屋敷の中には、想像もつかないほど沢山のハーツが眠っている。けれど、正直それら全てを解放して回っている時間はないの。だからアヴァン、できるだけ耳を澄ましていてちょうだい。あなたの魂と、あなたの妹エイシャの魂が、ここにあるかも知れないから」
ロゼッタの言葉にアヴァンは頷いて、二人は暗い廊下を駆け出した。
数日前、ブルータスがロゼッタに告げた。
「ノートンが気付いたぞ」
ブルータスの言葉に、ロゼッタは固まった。
「そんな……。どうして?」
「わからねぇ。わからねぇが、記憶の中に、ロゼとの出会いがないと言ってたな。記憶が操作された事に気付いたようだ。それと恐らく、デトワール家のナリッサが原因だろう。生きていること、知っているだろ?」
ブルータスの問い掛けに、頷くロゼッタ。
「けれど、あの子は……。彼女はきっと、そんなつもりじゃないわ」
ロゼッタの言葉に、ブルータスは溜め息をつく。
「人は変わるもんさ。どれほどの月日が経ったと思っているんだ? それに、あの日の事を覚えているとは限らねぇし、お前の言葉を信じているとも限らねぇ」
ブルータスの言葉が正しい事を、ロゼッタは痛いほど理解している。
だが、もはや後戻りはできない。
「それでも、私は行くわ。取り戻さなきゃ。私の為にも、母さんの為にも。そして、あの子の為にも……」
ロゼッタの力強い言葉に、ブルータスは頷く。
「わかっているさ。けれど気を付けろよ。ノートンの事だ、何か企んでいやがる」
「うん。けど、大丈夫だよ。今回はアヴァンがいてくれる。何があっても、手に入れる」
ロゼッタの決心は揺るがなかった。
無限に続くと思われるような長い廊下を、二人は走る。
途中、アヴァンが気になる部屋があれば、ロゼッタが魔法で鍵を開けて、中を捜索した。
骨董品や絵画といった宝物の中からは、沢山のハーツが見つかったが、アヴァンとエイシャのものは見つからない。
ロゼッタに言われたように、アヴァンは耳を澄ましていたのだが、聞こえてくる叫びが無数にありすぎて、それが誰のものかなど知る術もなかった。
他者のハーツばかりを解放し続けて、ロゼッタに怒られるかとアヴァンは思ったが、意外にもロゼッタは終始穏やかな表情でいた。
その表情はまるで、何かを懐かしんでいるかのように、アヴァンには感じられた。
だが当のロゼッタは、別の事を考えていた。
屋敷の周りには沢山の警備員が配備されていたにも関わらず、屋敷内に入ってからというもの、ただの一人も目にしていない。
ブルータスの言っていた事も気になる。
ノートンがきっと、どこかに何か罠を仕掛けているに違いないと、ロゼッタは警戒していた。
随分と廊下を進んだ頃、妙な場所に二人は辿り着いた。
それまではずっと両側に壁のある廊下が続いたのだが、突如として、片側の壁に中庭の見渡せる巨大なガラス窓が現れたのだ。
ロゼッタは首を傾げる。
こんな場所、以前はなかったはず……。
ガラス窓の向こう側に見える中庭には、一本の木が立っていて、その木には無数の赤い実がなっている。
すると、アヴァンはなぜだか、その実がどうしても食べたくなってしまった。
「アヴァン!? 駄目っ!」
ロゼッタが止める間もなく、猛烈な勢いでアヴァンはガラス窓に突っ込んでいく。
次の瞬間、アヴァンが感じたのは、ガラスが割れる感触ではなく、体中に何かがまとわりついたかのような感触だった。
そして、我に返った。
アヴァンが突っ込んだのはガラス窓ではなく、それまでの廊下と同じような壁に張り巡らされた、灰色の粘着性のある糸で編まれた巨大な網だった。
『こりゃ、罠だっ!』
エビルの言葉通り、アヴァンは、蜘蛛の巣に引っかかった虫のように動けなくなってしまった。
「ぬふふ。かかりましたね、虫けらが」
不気味な高い声が聞こえ、ロゼッタは辺りを見回した。
しかし、そこには誰もいない。
いや、目には見えないだけだ。
ロゼッタは左手の手袋を外し、アスピスを呼び出す。
「姿なき者を探せ!」
ロゼッタの左手の闇の紋章から、次々と白い蛇が流れ落ち、一斉にある場所へと向かい始める。
それは、反対側の壁の天井部分だ。
アスピスたちは壁をつたって上り、壁と天井とが繋がる部分に群がって、そこには白い蛇の繭が出来上がった。
「くっ。おのれ、闇の魔女めっ!」
声と共に、アスピスたちが作り上げた繭が内側から光を放ち、その衝撃でアスピスたちは床へボトボトと落とされた。
そして、その場に姿を現したのは、額に三つ目の瞳を持つ、異形の男だ。
男はゆっくりと地面に降り立ち、右の口端だけ釣り上げて笑っている。
体格がロゼッタよりやや大きめのその男は、明らかに普通の人間ではない。
丸まった背中は妙に出っ張っていて、ローブで隠れてはいるものの、足元まで長い髪が垂れ下がっている。
「あなた、何者?」
アスピスを両脇に従えたロゼッタは、強気な口調でそう言った。
『早く何とかしろよっ! アヴァン、この野郎っ!』
「わかってるべっ! 静かにしてろいっ!」
エビルに急かされながら、アヴァンは灰色の網の中でもがいている。
その様子を見て、三つ目の男はほくそ笑む。
「長官殿が手を焼いていると仰るので、わざわざ中央区の城下町より来て見てみれば、可憐な少女と虫けらと同等の魔物とは……。ぬふ、ぬふふふふ……。いやはや、ビプシーとはまるで
男はどうやら、ノートンによって呼び寄せられた捜査官のようだ。
それも、ただの人間ではなさそうだ……。
ロゼッタは、男の言葉を聞きつつも、この場をどう切り抜けようかと考える。
屋敷内に警備員が一人もいなかったのは、ノートンがこの男に全てを任せたということになる。
だがしかし、それは間違った選択だと、ロゼッタは心の中で嘲笑う。
おそらく、この自信たっぷりな様子からして、目の前の男は小物だ。
ロゼッタの経験上、ビプシーよりも魔力を持っている者の方が優れていると考えている輩は、そのほとんどが下級な輩だ。
本当の意味で力を持つ者は、そのような愚かな発言はしないもの。
現に、魔力で生成された灰色の網にかかったアヴァンは、もう体の半分をその網から抜け出すことに成功している。
だがしかし……。
ウィーュン! ウィーュン! ウィーュン!
けたたましいサイレンの音が、屋敷中に鳴り響く。
男がアヴァンを捕えたことで、警報がなるようにしてあったのだろう。
「ぬっふっふっふ。もう逃げ場はありませんよ? しかしまぁ、あなたほどの美貌を持つ魔女は、なかなかに出会えないもの……。私に命乞いをし、私に一生使えると言うのなら、助けてあげますよ? いかがですかな?」
気持ちの悪い表情と、怪しい三つ目の瞳が、ロゼッタを舐め回すように見つめている。
しかしロゼッタは、それらを何とも感じなかった。
感じないどころか、男が自分の言葉に酔っている間に、既に呪文を唱え終えていた。
男の足元には、黒い影が大きな円を描いて渦巻いている。
「彼の者を、我が目の届かぬ所へ」
ロゼッタがそう口に出すことで、ようやく男は足元の黒い影に気付いた。
だが、気付いた時にはもう手遅れだった。
悲鳴を上げる間すら与えられずに、男は落とし穴へ落ちるが如く、足元の黒い影の中へと飲み込まれていった。
「うへぇっ!? おめぇさそんな事もできるだが!? おっそろしい……」
まだ左半身が網にかかったままのアヴァンが、驚きの声を上げる。
「別に殺したわけじゃなくてよ? 私の目の届かない遠い所へ行ってもらっただけ」
そう言ってロゼッタは、もがくアヴァンを手伝う。
「まさかおいらが罠にかかるとはな。これまではずっと、おめぇさがかかってばっかだったのに」
ヘラヘラと笑いながら、アヴァンは最後まで網に引っかかっている左の鍵手を外そうと腕を振る。
「馬鹿ね。あれはあなたを試すための嘘よ?」
呆れ顔のアヴァンを見ながら、ふふふと笑うロゼッタ。
その時だった。
ズキューンッ!
ロゼッタの右腕に、銃弾が撃ち込まれた。
突然の出来事に、アヴァンはまるで、時が止まってしまったかのように感じた。
ゆっくりと倒れていくロゼッタの体を、アヴァンは見つめていた。
ドサッと鈍い音を立てて床に横たわったロゼッタは、目を閉じ、ピクリとも動かない。
アヴァンは視界の端に、震える手で銃を構えている、一人の制服警備員を捉えた。
捉えたと同時に、アヴァンは我を忘れた。
『アヴァン!? おいよせっ! やめろっ!?』
エビルの声が空しく響いた。
アヴァンは、自分では制御できないほどに、怒っていた。
その真っ赤な髪を逆立たせ、左の鍵手に宿る青い焔を燃えたぎらせる。
体がぼこぼこと波打って、一回り大きくなっていく。
右手の爪が獣のように鋭く尖り、口からは長い牙が生え、額には四本の角が伸び始める。
腰の後ろ部分の服を破って生えてきたのは、赤くて長い獅子の尾。
青い焔はアヴァンの全身を包み込み、その背で燃え盛る翼となった。
アヴァンのその姿は、魔獣である赤獅子が悪魔と化してしまった、まさに真紅の悪魔だ。
「グルルルル……。ガァルルル」
猛獣が威嚇するが如く、唸るアヴァン。
警備員は悲鳴を上げて腰を抜かし、立ち上がることもできずにガタガタと震えている。
すると、その後方から応援の警備員が数名駆けつけてきた。
悪魔と化したアヴァンのその姿に恐れおののく警備員たち。
「撃てぇっ! 殺せぇっ!!」
身の危険を感じた警備員たちは、アヴァンとロゼッタ目がけて一斉に銃を撃つ。
アヴァンは、ロゼッタを庇うかのように、警備員たちの前に立ちはだかる。
アヴァンの体は全ての銃弾を弾き返し、警備員たちはまたもや悲鳴を上げた。
警備員たちはその数をどんどん増やすも、アヴァンに近付ける者などいない。
それに、玄関口の方から来る者たちばかりで、行く手を阻む者はいない。
ロゼッタを抱えて奥へ進めば、アヴァンの脚力をもってすれば警備員を撒けるだろう。
だが、アヴァンはそのことに気付けないほど、怒り狂っている。
警備員たちが放つ銃弾は、尽くアヴァンの体に弾かれて床に落ち、遂に弾が尽きた。
成す術がなく、あたふたとする警備員たちの姿を目にし、アヴァンは反撃に出る。
「ガルァァアアァァ!!」
獣の手である右手と、長く伸びた牙を使って、アヴァンは警備員に襲い掛かった。
今、アヴァンの頭の中にあるのは、ロゼッタが死んでしまったかも知れないという恐怖と、ロゼッタを守ることが出来なかった己への怒りだった。
それらがアヴァンの心と体の全てを支配し、荒れ狂う魔獣と化したアヴァンは我を忘れ、目に映る全てを手に掛けようとしていた。
「うわぁっ!?」
「ぎゃぁぁぁぁっ!!」
断末魔のような叫び声と共に、倒れていく警備員たち。
数名はその場を後にして、玄関口の方向へと逃げていく。
それでも、アヴァンの怒りは収まらない。
腕を振り上げ、牙を剥き、唸り声を上げ続ける。
そして、アヴァンが気が付かない内に、肌にあるひび割れは更に深くなっていた。
この状況に、エビルは思い出していた。
悪魔には、根っから性根の悪い生まれつきの者と、思いがけず悪事に走ってしまった者の二種類がある。
後者の場合、何か大切な物を失ったり、大切な者を亡くした時、我を忘れた普通の魔物が悪い行いをしてしまった結果、行きつく先が悪魔なのだ。
悪魔と化す以前は普通の魔族であった者たちには、そのような悲しい過去がある。
深い心の傷が、魂であるハーツに荊となって刻まれるほどの、悲しい過去……。
そして今、アヴァンの感じている悲しみ、苦しみを、エビルは痛感していた。
かつて己がそうであったように、大切な者を亡くしてしまったという耐えがたい悲しみを、アヴァンが感じていることを……。
『アヴァン……。お前、このままじゃ、本当に悪魔になっちまうぜ?』
エビルの、いつになく悲しそうな声が届いたのは、アヴァンではなくロゼッタだった。
ロゼッタは意識を取り戻し、身を起こした。
青い焔を纏った、赤い悪魔と化してしまったアヴァンの姿。
その脇に倒れている、沢山の、血まみれの警備員たち。
目に映る光景に、右腕の酷い痛みに、ロゼッタは何が起きたのかを瞬時に理解した。
「あ……。アヴァン、駄目……。やめて」
叫びたくても、小さな声しか出ない。
すると、ロゼッタは背後に何者かの気配を感じ取り、振り返る。
そこにいるのは、車椅子に乗った、年老いた老婆だ。
寝間着のようなネグリジェを纏った、その皺皺の老婆の顔に、ロゼッタは見覚えがある。
曇りのない、澄んだ栗色の瞳……。
「あなた……。やっぱり、ロゼッタさん?」
驚きを隠せない様子でそう言った老婆に対し、ロゼッタは呆然となる。
車椅子の老婆に気付いたアヴァンが、今度は老婆を襲おうとこちらに向かってきた。
「アヴァン! 駄目っ!!」
間一髪、ロゼッタが叫び声がアヴァンの耳に届く。
アヴァンは老婆の首元ギリギリでその右手を止めて、ロゼッタの両の瞳を見つめる。
もう二度と開かないのではないかと思われた、美しいエメラルドの瞳を……。
正気を取り戻したアヴァンの牙と爪は、スルスルと元に戻っていく。
そして次の瞬間。
ボフンッ!
白い煙幕が辺りを包み込み、アヴァンは何も見えなくなってしまった。
「なんっ!? ロゼッタ! どこだべっ!?」
大声でロゼッタを探すアヴァン。
すると、誰かがアヴァンの尻尾を引っ張った。
「こっちだ」
聞き覚えのある、低いバリトンボイスが聞こえてきて、尻尾が引っ張られるままに、アヴァンはその場を走り出した。
「ふ~……。無茶しやがって」
低い声の主はブルータスだった。
その背に乗せていたロゼッタをゆっくりと下ろし、床に横たわらせる。
先ほどまでいた通路から遠ざかり、適当な部屋に逃げ込んだアヴァンとロゼッタとブルータス。
ブルータスはその小さな体で、ロゼッタの体を担いでここまで走ったのだった。
「ごめん……。油断した」
ロゼッタは痛む右腕を反対の手で押さえながら、しゅんとした表情でブルータスに謝る。
アヴァンはというと、何が何だかわかっていない。
ブルータスとは、警察署の取調室で会ったきりなのだから。
「構わねぇ。少し休め」
そう言ってブルータスは、ふにふにの肉球がついた手でロゼッタの目を覆い、手の平から水色の光を放った。
その光を受けたロゼッタは、静かに目を閉じて、寝息を立て始める。
「なっ!? 何したべやっ!?」
アヴァンは慌てて、横たわるロゼッタの隣にしゃがみ込む。
「今から銃弾を抜く。麻酔代わりだ」
そう言ったブルータスは、今度は自分の上半身の服を脱ぎ始めた。
そこに現れたのは、ふかふかと気持ちの良さそうな白い毛で覆われた肌の上、首のすぐ下からおへその辺りまで真っ直ぐに続く、手術跡のようにも見える、ジッパー。
アヴァンは首を傾げる。
ブルータスは、躊躇することなくそのジッパーを下ろす。
アヴァンは驚きの余り、悲鳴を上げそうになるも、それすらできずに息が止まる。
アヴァンの中にいるエビルも、内臓が中から出てくるんじゃないかとドキドキする。
がしかし、中から出てきたのは、何やら医者の使う手術道具らしきもの。
内臓も出てこなければ、血の一滴も漏れていない。
そして、そのジッパーの奥には肉などなく、真っ白な綿が詰め込まれている。
「お、お、めぇさ……。いった、い……?」
驚愕の表情を浮かべるアヴァンに、ブルータスはふ~っと息を吐き、こう言った。
「俺は、ドール。ロゼッタの魂の半分を与えられた、生きる人形さ」
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