さあみんなで考えよう

「大変だぞ、お前たち」


 北条先輩が深刻そうな顔で、皆の顔を見回す。


 今は放課後、ここは、社会科準備室こと、キョウケン部室。


 今日は試験前で部活はお休みの予定だったはずなのだが、非常事態とのことで、急遽招集されたキョウケン部員一同だった。


 いつものとおり、長机の片方に、『北条先輩』と、『市花』。

 別の側に、『虎』と『直』が座っている。


 ちなみに、虎と北条先輩は、対面同士。


 心理学的には、斜めが互いにリラックスできる位置関係らしいのだが、そういうことを良く知っていそうなのにも関わらず、構わず先輩は対面からよく虎を攻撃する。



/*

 ……作者のイメージは、こう!

 

  窓  虎   直

  窓  机机机机机机机

  窓  机机机机机机机

  窓  先輩  市花


 アニメだと落雷とか光が主人公の顔にかかる

 といい感じっぽいかなって理由で窓際です。

*/



 いや、そんなことを考えている場合ではなかった。



「大変だっていうのは、市花からきいてますけど、何があったんですか?」


 虎が口火を切る。


 彼は、秋山虎、この物語の主人公な高校二年生。


 身長もさほど高く無く、イケメンでもないが、とりあえず自己の延命、違った、近い将来の確定した死に対し、生き返りのために頑張っているのである。


 非常にややこしい。


 ちょっと前まで、東京は八王子市に住んでいたらしいが、作者の描写が淡泊なせいか、あかぬけないのが、とてもかわいそうである。



「まさか、とらを毎日私が部屋までいって起こしているのがバレたとか?」


 隣の直が、何かを主張するように、意味ありげなセリフで攻めてくる。


 彼女は、遠山直、高校二年生。


 主人公虎の幼馴染で、隣の家で、クラス委員長で、面倒見が良い優しい性格で、ポニーテールという、マルチ属性持ちの強キャラである。



「直、それは、周知の事実なので、もうちょっと盛って『毎日私が部屋まで起こしにいって、あんなことやこんなことしてる』と既成事実化するのがよいかと」


 直に対し、ツッコミなのかボケなのかややこしい発言。

 これぞ市花の真骨頂だ。


 彼女は、浅井市花、高校二年生。


 神秘さを醸すそのおかっぱは、彼女が小柄過ぎることも相まって、どうみても小学生な外見ではあるのだが、毒舌というか、独特な丁寧語で話すことで、魅力が相殺されている……。


 虎たちのクラスでは、『今日の市花様』と語録が作られるレベルで人気があるのだが、誰も彼女とお近づきになろうしないのもまた事実である。


 つまり、尊い存在!?



「そうか、やっぱり二人はそういう関係だったのか、まだ高校生だからな、その、いろいろと気をつけるんだぞ」


 少し赤くなりながら、前髪をいじり、もじもじしているのは冒頭でも出てきた北条先輩。高校三年生。


 キョウケンの部長で、彼女の名前は……おっと誰かきたようだ。


 と、とにかく、肩の後ろくらいまである長さの、ストレートで綺麗な黒髪の持ち主であり、占いを駆使した恋愛相談で、学校では有名人。

 若干キツめの、男子に近い口調ではあるものの、そこ込められた情は深く、けして悪い感じはしない。



「「そういうことはしてません!!!」」


「虎と直の完璧なユニゾン。そう、これはテンプレというものであるのである」


「いっちゃん、地の文に紛れて胡麻化そうとするのは無理あるから……」


 直は市花のことを『いっちゃん』と呼ぶのだ。


/*

 ちなみに、虎も市花も、直のことを『直』と呼ぶので、書き分けがとても面倒。

 片方ひらがなにしようか作者は今でも悩んでいる。

 先輩が男言葉で、虎と若干かぶるのもまた修行の一環だと思うしかない。

*/


「市花的にはいつものことだから、もう慣れたけどな、俺は」


「では、そろそろ、よいだろうか。既にここまでで1000文字超過だ」


 北条先輩の一言で、作者は右下の文字数に気づき慄く。


 一同頷き、話は始まった。




「……というわけだ!」


「なるほどな」


 深く頷く虎。


「それはどうしようもありませんね」


 やや斜めに一番良いポーズを決める、市花。


「何で皆頷いてるの? 頷けるの? 私全然わからないんだけど……」


 ひとりおいてけぼりの直。


「遠山、行間を読むんだ、そうすれば見えてくる」


「行間!?」


「直、これは、心が綺麗でなければ見えないのですよ、ね、秋山くん」


「え、俺にふるのかよ、市花。そ、そうだなー、どっちかっていうと配慮、的な感じか?」


「配慮?」


「仕方がない、遠山がわからないんだ。もう、これは仕方ないだろう」


 先輩が、傍らのホワイドボードに、マーカーで書き始めた。



『偽書ひめでん! 連載中止の危機』



「ええええ!」


「お前がショックを受けてどうするんだ、遠山」


「直は意外にナイーブなんですよ、北条先輩。ね、秋山くん」


「ま、まあそうかもな。しかし、なぜに連載中止なんですか?」


「……三章がなかなか進まないらしい」


 他の三人の頭に?が浮かんだ。


「プロットを変更する過程で、自分の経験の無いものを取り入れてしまい、今はその研究に夢中だそうだ。まったく、やってはならんことをこの段階でやってしまうとはな。もっとも、完全素人なまま書くのに比べれば、百倍マシではあるとは思うが」


「それって、俺がさらに試練を課される系って聞いてるアレですよね」


「うむ、そうらしい。よかったな、秋山、何かは私も知らないが、お前かなりズタボロにコテンパンにやられるらしいぞ」


「レトロ的な表現で強調しないでくださいよ、か、覚悟はできてますけど」


「頑張ってね、とら」


「生暖かく応援していますよ、秋山くん」


「まあ、どんなにやられても、お前は……おっとこれも禁句か、仕方ない次だ」


「いつもながら俺が気になるところで止めますね。でも『次』って何ですか?」


「連載中止の原因その2だ」


「まだあるんですか……」


「そう言うな秋山、かわいそうだろう作者が。2つめは、星が、落ちてこないらしい」


「……」


「し、詩的な表現じゃない? 素敵かも。ね、とら」


「直、秋山くんは、どちらかというと自分のせいだと思って落ち込んでいるのではないかと」


「そ、そうなの?」


「……第一章は、俺が完璧主役だっただろ。作者的には一章が終わった時点でそれなりに評価してもらえるとか淡い期待を抱いてたらしいんだよな。きっと俺のせいだ。すまん作者! 共感されるのは俺じゃ無理みたいなんだよ~」


「それは『栗きんとん』以上に甘い見通しですね。秋山くんのせいではありませんよ」


「いっちゃん、岐阜の『栗きんとん』は意外に全国区じゃないから、わからない方いるかも」


「そうなのですか? 『栗きんとん』こそ日本最強の和菓子であるはずなのですが。打線を組めば、侍ジャパンのクリーンナップに入れるレベルの銘菓ですよ。私が何かの謝罪に持ってゆくとしたら例のようかんではなく、絶対こっちです」


「あー、俺、東京にいたころ探してみたんだけど、デパ地下の贈答品コーナー行かないとなかった記憶があるな。少なくともその辺には売ってないぞ」


「なんと……」


 絶句する市花。


「お前たち、もういいから、そのへんにしておけ、脱線しすぎてこれをお読みの方がついてこれてないぞ。星については、とりあえず二章を頑張れと、そういうことだな」


「……先輩、一言いいですか?」


 ここで、今まで運命、いやさ、他のキョウケンメンバーの破天荒ぶりに翻弄されていた直が動いた。


「どうした、遠山? 構わない、言ってみろ」


「直、まさかお前……」


「直、この物語の根底を揺るがす覚悟ができているのですね?」


 彼女は全員に頷き、そして叫ぶ!


「私たち、二章、出てきてません!!!」




 に、二時間もかかってしまった。

 初めての方もいると思うのですが、いかがでしたでしょうか?

 キャラ名を書くという手段もありますが、つけないことに拘り、頑張ってみました。

 オーディオコメンタリー的なのは普通キャラ知ってる方向けですからねー。

 私の場合はそれもなく、小説のように、自然に順次登場もできないので、難しいことこの上ありませんでした。


 さて……執筆にもどります!



 虎たちの活躍はこちらで!


 偽書ひめでん! ~確定された死は諦め、俺は生き返りを望む

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887459503


 二章は真面目に全員出てきていません、まあ、びっくり!

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