第12章 祈り:知らないほうが幸せか ③
「初めてここに来て、希由香と護りと一族のことを知って、ラシャに降りた。そこで継承者として
キノは無言でうなずいた。
「護りの必要性を聞かされた時、ラシャの者たちは、『紫野希由香から護りの記憶がなくなる前にその
「叶えたい望みがあったから、命を
とまどいながら、涼醒が
「ラシャが利用したのは、これ以上希由香を巻き込みたくはないと望む俺の心だ」
キノは眉を寄せた。けれども、何も言わずに話の先を待つ。
「最初にラシャが要求したのは…時間を置いて意識を戻した後、俺自身が希由香から護りの
浩司が息をつく。
「意識の戻った希由香に俺が会うことは
「約束で…か」
涼醒がつぶやいた。
「
「…あんたを信じてなけりゃ、あんな約束をしようとは思わないさ」
「護りをラシャに戻せない時には力を返すと言ったのは俺だ。奴らの
食い入るようなキノの視線から、浩司が目を
「自分ではどうにもならない願いでも、護りの力なら叶えられると考えた時…望むことがひとつあった」
浩司は机に乗せた左手を見やった。その指にはめられていたラシャの指輪はもうないが、天井からの明りを、何かが小さく反射させている。
「その望みは、必ず護りを見つけなければと俺に思わせるのに充分だった。失うかもしれない命よりもずっとな」
「…シェラの
浩司から
「それ以外に、何を…そんなに望んでるの?」
「俺は、希由香の幸せを願ってる。それはおまえも同じだな?」
「…希由香が願うのは、あなたの幸せだよ。私は…二人の幸せが同じところにあるって信じてる。だから、あの呪いを
「キノ…」
とめどない
「おまえが俺の幸せを願う必要はないんだ。いや…俺には、おまえにそう思われるだけの価値がない」
浩司の視線が、自分とキノの間の床へと落ちる。
「俺は…おまえに謝らなけりゃならない。護りの使命を負わせ、希由香の記憶を
キノはゆっくりと首を振る。
「希由香の記憶を夢に見るなら、おまえは俺のために力を
「すまなかった」
浩司が自分に
「それでも…あなたが自分で来てくれてよかった。だから、希由香の幸せと同じくらい、浩司の幸せを願うよ。もし…私が彼女の心を知らなかったとしても」
キノの声は、その心と
「呪いを
何によるものかキノには定かではない苦痛が、浩司の表情を
「おまえにこう言ったな。『もし、呪いが
「じゃあ…何を…?」
心臓の
「俺に会ったことが、希由香の運命を変えた。時間は戻せない。だが、本来あるべきところに近づけることは出来る。俺が変えた運命は…俺が戻す」
「…嫌よ」
キノは無意識につぶやいた。
自分に向けられた浩司の
「希由香の記憶から、俺に関するもの全てを消し去る。あいつの心が俺を忘れないなら、始めから存在しなかったことにすればいい。これが…俺の望みだ」
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