第4章 闇の瞳を持つ男:闇の正体③
「ラシャはもうひとつの世界、イエルに希由香と同じ魂を持つ者の存在を突き止め、その者から護りの場所を聞き出すつもりでいると
「それが…私なのね」
「そうだ」
キノの視線が、浩司のそれに絡む。
「俺が一族と一切のかかわりを持たずにいた理由を知った
「どうして?」
「リシールとラシャから、守るためだ。希由香と…おまえをな」
キノは開きかけた口を閉じる。
「ラシャに行き、継承者として覚醒する。そして、俺を、希由香と同じ魂を持つ者に接触するその使いにさせる。そうすれば、これ以上希由香を危険に
キノが再び口を開く。
「どうして? 希由香が護りを発動したのは彼女の意思でだよ。たとえ、知らずにだとしても。希由香は自分の運命の責任を、浩司に取らせる気なんかない。負担になりたくなんかない…私もよ」
キノは鋭い目で、浩司の
「護りを見つけるのは、私の使命だって、そう言ったじゃない」
「その通りだ。だが、俺にもあるんだ。使命も、背負うべき十字架も、望みも。俺自身のためのな」
浩司の
キノの心が、引き絞られるように痛んだ。
「
浩司が鼻で笑った。
「するしかないだろう。継承者の力を一番必要としてるのは、奴らだからな。
「ラシャは?」
「…話し合いは長くかかったが、最後には了承した。お互い、相手の出す条件全てを飲んでな」
「条件?」
「合意するためには不可欠だろう。いろいろあるが…俺も向こうも、最優先するものは譲らずにすんだ」
「…浩司は何を手に入れて、何を…
「ほとんどは、護りが無事ラシャに戻ってからの話だ。おまえは知らなくていい」
「嫌よ!」
キノがいきなり立ち上がった。倒れた椅子の床にぶつかる音が、深い夜に響く。
「キノ…」
「私は、自分が護りを見つけたらどうなるか知らずに探すのは…嫌よ」
浩司は、キノの強い
「世界を救うには、護りの力がどうしても必要だと言っただろう」
「だから何? 私は…私はこれ以上浩司に辛い思いをさせてまで、世界を救う気なんかない」
浩司は
「私を眠らせる?」
その言葉に、浩司が足を止める。キノの涙は
「希由香には…世界よりも大切なものがあるの。希由香が守りたかったのは…浩司なんだよ。あなたを…闇から救いたかったのに…!」
力の限り、キノは浩司を抱き締める。かつて浩司が希由香にそうしたように。言葉に出せない切ない思いを、強く、優しく包み込むように。
「おまえに、希由香の記憶があるのはわかってる。これから更に思い出さなけりゃならないのもな。だが、おまえは希由香じゃない。それを忘れるな。俺に…忘れさせるな」
浩司はそっとキノの腕をほどく。
「これだけは信じろ。俺は、希由香を愛することは出来ないが、もう二度と、悲しませることもしない」
「…本当に?」
「ああ。護りが見つかれば、俺は何も失わない。得るものがあるだけだ」
「それなら、今は聞かない。でも、お願い。私に護りの場所がわかったら、手にする前に教えて。浩司が自分のために守りを見つけたいその理由…約束して」
浩司は一瞬
「わかった」
「嘘もなしよ」
「約束しなけりゃ、おまえは引き下がらないだろうからな」
そう言った
「どうしたの? どこか…?」
「ただ、少し…疲れてるだけだ。休めば治る」
「今日はもう寝た方がいいよ。ちゃんとベッドでゆっくり眠って。そうだ! コウの時はラシャの者だから大丈夫だって思ってたけど、浩司は生身の人間じゃない。今まで、
「心配性なのは、あいつと一緒だな」
浩司が微笑む。
「とにかく横になって」
キノは、浩司を寝室へと連れて行く。心身ともに消耗しきっている浩司は、言われるままに
「朝までぐっすり眠って」
「おまえは…?」
「一緒に寝るよ。浩司が眠ったらね」
上体を起こそうとする浩司を制し、キノは浩司を見おろした。
「安心して。私も、襲ったりなんてしないから」
「自分の身の安全は? 俺はどんなに弱っても、その気になれば女を抱ける」
浩司の言葉に、キノは意味ありげな笑みを浮かべる。
「私もって言ったでしょう? 浩司が私に手を出すことはないもん。何故かは、自分でよくわかってるはずよ」
浩司が苦笑する。
「頭の切れ過ぎる女は、男には
「納得したら、眠って」
浩司が目を閉じるのを待って、キノは部屋の灯りを落とす。
「キノ…すまないな」
「おやすみなさい…いい夢を」
浩司の
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