第106話   ヒメの嫌いな絵本の結末

 白銀色の小竜のまわりを、ぐるりとかこんで、大きな国ができました。


 白銀色の小竜のまわりを、ぐるりとかこんで、大きなお城ができました。


 どうしてなのか、小竜にはわかりません。



 毎日 毎日 大勢の人間が、小竜に会いに来てくれました。


 ごはんを運んでくる人間。


 お話を聴かせてくれる人間。


 体を拭いてくれる人間。


 どうしてなのか、小竜にはわかりません。


 外の景色も、長いあいだ見ていません。


 なにが起きているのか、子供の竜には、わかりませんでした。



 ある日のことです。


 人間たちが木の板を持って、小竜の部屋に、やって来ました。


 木の板の上には、一人の女の子が眠っていました。


 小竜にごはんを、楽しいお話を、そして、体を拭いてくれていた女の子でした。


「この人間が、貴方に失礼なことをしたので、殺しておきました」



 小竜は、動かない女の子を、丸呑みします。すると、今までわからなかったことが、ぜんぶ、わかるようになりました。


 小竜は、大人になったのです。


「欲しい物は、なんでも申してみよ。全て叶えてやろう! 全てな!!」


 竜の力強い咆哮に、人間たちは喜びました。


 竜が大人になったからです。


 なんでもできる力を、みんなのために、使うと言ってくれたからです。



 国はどんどん、大きくなっていきました。

 世界一、大きくて、幸せな国になりました。



 そして竜は 真っ黒な 真っ黒な 卵を生みました。


 卵から 生まれたのは?


 卵を生むための 女の子でした。



 お し ま い


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