第8話 旅行にて

 旅行当日。ルーチェたちは人里離れた森へとやってきていた。森には様々な力が満ちているため、毎回旅行場所は違えど、目的地は森になることが多かった。旅行の趣旨としては森に行くことでリフレッシュをし、森に溢れたパワーを各生徒が吸収して魔力の向上を目指す狙いがあった。

「やっほーい、私、今ならすっごい魔法使える気がする―」

 ルーチェはアヴィスの周りを跳ねまわる。ため息をつきながら眺めるアヴィスも、心なしか穏やかな表情を浮かべている。アヴィスとルーチェは、集団のしんがりをつとめていた。

「そもそもアンタ、結局何の魔法が得意なんだ」

「えー私ー? 秘密だよー」

 プライベートな質問だもんねー、とルーチェは大きく伸びをする。同時に遠くの方から悲鳴が響いてきた。

「ん、何だろう。何かイベントでもやってるのかな」

 ルーチェののんびりした声を、ルーチェが渡されていた通信機からの声がかき消した。

「ドラゴンだ! ルーチェ、生徒の避難誘導が終わるまで、前線に出てくれ!」

 先頭を歩いていた学舎長の声だった。ルーチェは返答することなく、走り出す。アヴィスも無言で従った。



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