第11話

いろいろとトラブルもありはしたが、なんとか無事にフードコートで昼食を済ませた後、俺は先ほどと同じように白月がふらふらと立ち寄る店に問答無用で付き合わされた。


書店で雑誌を立ち読みしたり、雑貨屋で洒落たアンティークを手に取って見てみたり、ペットショップで売られているミニチュアダックスフンドと俺のどちらがより忠実かを検証してみたりと、行く先々で過度な罵倒を受けた。



「さてと……皇くんで遊ぶのも飽きたし、次は映画でも観ましょうか」


「勝手に人で遊んで、勝手に飽きるな。てか、何か観たい映画でもあるのか?」


「いいえ、特には。ただ、映画なら皇くんの相手もしないで済むし、時間潰しにもちょうどいいかなって思って」


「だったら最初から俺を呼ぶな」


せっかくの休日にわざわざ出向いてやったってのに、その言い草は一体何なんだ……


これならあの男たちから助けてなんてやるんじゃなかった。ホント、損した気分だ。


***


そんなことを考えつつも、白月の後について8階にある映画館までやってきた。



「皇くんはどんなジャンルの映画が好みなのかしら?」


「いや、俺あんまり映画とか観ないから。好きなジャンルとかは特にねぇよ」


「あら、そうなの。せっかく観る映画くらいは選ばせてあげようと思ったのに。それじゃ、この『劇場版 魔法少女マジカル・プリリン』でも一緒に観ましょうか。皇くんが好きそうな幼い女の子が沢山出てくるらしいし」


「言っておくが俺はロリコンじゃねぇぞ。あと、出来ればこっちのアクション映画にしてくださいお願いします」


流石に小学生女児に混ざって、館内配布のマジカルステッキを振り回し、ピンチのプリリンを応援するなんて恥ずかしいことは出来ない。


そういうわけなので仕方なく、下げたくもない頭を下げてなんとか観る映画を変更してもらった。


***


その後、カウンターで高校生2人分のチケットを購入し、指定されたシアターに入った。



「公開から日が経ってても、結構人いるもんだな」


「そうね。ところで皇くん、私たちの席はどこ?」


「あぁ、えっと、D-4と5だからあそこ——」


「……皇くん?」


館内を見回し、チケットに書かれた席番号を探していたその時、俺はよく見知った2人の姿を発見した。



「俺、このシリーズマジで好きなんだよなー!晴人も来れば良かったのにな」


「晴人は今日も勉強でしょ。僕たちの誘い断って、誰かと出掛けるとも考えにくいしね」


「俺らの誘い断って、もし女と一緒だったりしたら、今後一切あいつとは話すことねぇな!アッハッハッハ!」


「ないない。そんなのあり得るわけないって」



そこには先日、「映画でも観に行かないか」と俺を誘ってきた輝彦と誠の姿があった。


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