第17話(最終話) 決着

「させるかよ!そんな事 クソ親父!」

「大介!お前、そんな情けねえカッコで何言いやがる!」

「この英治は、お前くらいの年から面倒見てきたんだ。それが、ワシのその恩義を忘れやがって」


「お、おやっさん!おやっさんが俺の面倒をみてくだすったのは、感謝してます、今でも」

「でも、俺…俺は大介を…大介の事…」


「愛しています!」

「おやっさんから、命(タマ)取られることになっても、最期まで言い続けますぜ」




龍三は、その手に拳銃を構えていた。


「じゃ、楽にさせてやるぜ!ワシにタマ取られたら本望だろ」


「おやっさん、俺が黙って殺(や)られると思ってたんすか」


英治の手には、いつの間にか拳銃が構えられている。


「てめぇ!親に銃口向けんのか!この野郎!」


「そっちが、先に向けてんだろうがよ、おやっさん」




バン!バン!





乾いた銃声が喜多川の邸宅の中に響き渡った。


龍三は、英治の放った銃弾が心臓付近に命中し、絶命した。


一方の英治は、龍三が絶命する前に銃弾を放たれ左脇腹に受け警察病院に入院する事になったが、摘出前のレントゲン検査で脊髄にまで達する玉傷であった為、銃弾摘出は無事済んだが、半身不随となり車椅子生活となった。


そして、英治は喜多川龍三殺害で医療刑務所にそのまま収監されたが、裁判で情状酌量の上、懲役5年が裁判所で言い渡された。





…………

それから、5年の月日が流れた…。



医療刑務所の通用門には、21才となった喜多川大介の姿があった。

季節はもうすぐ、クリスマスを迎えようとするところで、街にはクリスマスソングが流れていた。


「クリスマスか…英治兄貴と迎えてーな」

ニッカに、安全靴スニーカー、迷彩柄のMA-1を羽織った大介がいた。


「迎えが来てるぞ、125番じゃなかった若月!」

「兄貴!英治兄貴!」

「だ、大介か?大人になったな!見違えたぜ!」


英治は車椅子に乗ったまま、大介はその英治肩に手をかけて声をかけあっていた。


「おーおー、仲がいいな!お前達」

刑務官に冷やかされた2人は胸を張って答えた。


「だって、俺たち兄弟…」

と、言いかけた英治を遮って、大介が刑務官に言った。



「違いますよ!兄弟じゃなくて…夫婦です。」

「同性だけど、俺たち夫婦なんです!」



英治の車椅子を押しながら、大介は言った。


「兄貴!帰ろうな!俺たちの愛の巣に」

「ばぁーか!照れんだろ、大介」

こう言いながらも、英治は満更でもない様子であった。





(終わり)

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オヤジの恋人 ヒロマサ @hakuryu

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