第14話 激情~仕置き~Ⅶ

彫辰 西山辰五郎は本名ではなく、先代の初代彫辰の名前を継いだものである。


辰五郎は先代辰五郎こと西山龍吾(にしやまりゅうご)が男好きであることを見抜くと、言葉巧みに取り入り、弟子となってその体に師匠の先代から九紋龍史進の二重彫りを彫ってもらい、その後二代目彫辰を名乗るようになってからは、自分の弟子に体を預け、どんぶり彫りにしていた。


「いやぁ、先生の九紋龍史進は見事ですなぁ!惚れ惚れしますよ。」


「何をおっしゃるんですか、龍三さん。あなたの背中の一匹龍もさすが名人と謳われた初代彫辰の手によるものだけはありますよ」


辰五郎と龍三は互いの体に彫られた刺青を褒めあった。


「下絵は書いてきましたので…こんな感じでどうですか?」


辰五郎の書いてきた下絵を見た龍三は、うんうんとうなずきながら、こう言った。



「いいでしょう、彫辰師匠! 存分に腕をふるって下さい」

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