第2話 波乱の予感

えーーっ?英治兄ぃ!ガッコまで送ってくんないの?なんでだよぉ!」

英治の運転するバイクの後ろに乗りながら、不満げな声をあげた。

「坊ちゃん、すいやせん。おやっさんが仕事の打ち合わせがあるっておっしゃってるんで」

「ったく。。。やーめた!練習行くのやめた、やめた~っ!」

「ガッコもサボるわ、今日は。ねぇ英治兄ぃ、ウチ戻ってよ!」

「ちょっと、ま、待って下さいよ、坊ちゃん。それじゃ、あっしがおやっさんにボコられちまいやす」

渋谷駅へ向かう途中、バイクを停車させると、すでにバイクの後ろから降りてふて腐れている大介に、英治はこう続けた。

「坊ちゃん、学校にだけは行って下さい。でないと、あっしがおやっさんに叱られます。『これからの極道は頭のいい奴が生き残るんだ』と常日頃、おっしゃってるんです。ですから、このとおりです!坊ちゃん」

こう言うと、早朝とはいえ人通りが多くなりはじめた明治通りの道端に手をついて土下座をした。

大介はびっくりした。

”英治兄ぃが土下座までして、俺を学校に行かせたがってる。なんでだ?オヤジのため?あー、もう!!わけわかんね”

と思いながら、大介はこう言った。

「なら、俺の言うこと聞くな?英治。俺は組長の息子なんだからよぉ」

「わ、わかりやした。大介坊ちゃん、何をすりゃいいんですかぃ?」

「ここじゃ、出来ねぇな。どっか公園なかったっけ?」

「あ、あそこにありやすぜ、公園なら」

英治が指差す先には、身障者も使えるトイレがある小さな公園があった。

「あっち、行こうぜ!英治」

「へい、わかりやした」

18の高校生の後をでかいハーレーを押しながら、上背のあるライダーズを着た男がついていく。

端から見たら、奇妙な光景ではあった。

「ここですよ、坊ちゃん」

「身障者用のでかいトイレに入れよ、英治」

「えっ、な、なんでこんなとこへ・・・」

「つべこべ言ってねーで、はいんだよ、英治。言うこと聞くんだろ?」

「入ったら、着てるもん全部脱げ!」


観念したように英治は、ライダーズを脱ぎ、リーバイスの501のボタンフライジーンズも脱ぎすてた。

「まだ、残ってんじゃん。パンツも脱げよ!」

「坊ちゃん、は、恥ずかしいです。パンツは勘弁してやって下さい」

「ふん!なに言ってんだよ。英治兄、オヤジと昨日素っ裸で何やってたか知ってんだぞ!」

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