第31話 目覚め
「……『足元を這いずる』!」
逃げきれないと判断したジョーノは攻撃を選んだ。しかし、疲労による意識の低下は如何ともしがたく、その動きは単調極まりない。
「おっと、気を付けるにゃ」
おまけにクワガタの蟲人は以前にこの『異能』を受けている。あっさり見切られ、ロロムたちはジョーノの元へ向かってきた。
「もちょっとゆっくりしときやがれ……『枯渇の帝』‼」
全身全霊に殺すつもりでジョーノは『異能』を向けた。ここで獣人に『異能』を封じられると死しかない。
「ぐおっ?」
「あほだっちゃ」
「くそっ、『足元を這いずる』……‼」
が、未熟さがここでも足かせになる。獣人に集中せねば『枯渇の帝』は十分に力を発揮できなかった、つまり他の3人は自由な状態で容易にジョーノに手を出せる。それでも獣人だけでも排除すべきであるが、疲労に『枯渇の帝』の反動が重なって持久できず止む無く接近を止めるために中断してしまった。
「こ、『紅瞳』……!」
ミオニスの『異能』を使ったが、一撃目は難なく躱されて二撃目は発動しなかった。獣人が異能封じを使ったのだろう。
「やんなるぜ全く……」
気を抜けば失神してしまいそうな疲労の中、ジョーノは最後に残った体力と気力で必死に逃げようとした。無論、それは魔人たちが『歩いて』容易に追いつけるほどの無様な逃避行である。
「見苦しいやつっちゃね」
蔑みながらロロムが漏らした。もはや放置しておくだけでジョーノは衰弱し死ぬ、野宿に耐えきれる体力も、それを補うための支度の気力も残っていないのは目に見えていた。
それでもジョーノは進む、無様だろうが辛かろうが進む。死を前にしての恐怖と生存本能ではあるものの……
「ミオニス……」
もう一度会いたい。生まれて初めてその理由から、死にたくないと願った。
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