第21話 巨人には巨人を

 無論、セシュン軍による攻撃であった。『異能』により館の支配を奪い変形、操作しての本隊との挟撃というありきたりなものである。

 冷静に対応すれば、リオール軍には一撃を防ぐことは可能だった。しかし、本拠地を奪われたという心理効果、そして厳重な守備を敷いていた館が敵中に堕ちたという事実は予想以上に動揺を与えていた。

 腕、正確には調理場や食堂があった館の一室が振り上げられて、リオール軍を薙いだ。これまで身を護っていた防壁が破られて、魔人たちの血肉と破壊された館の破片がにわか雨のように大地に注いだ。

 その混乱を見逃すセシュン軍ではない、好機とばかりに攻撃を注いでリオール軍を追い込んだ。リオールたちも反撃を試みたものの、集団行動ができずに数でも劣るとあっては多勢に無勢。圧倒的兵力差が浮き彫りになっていた。

「ばかかおどれは⁉」

「ネゴさんがいるんだよ!」

 その最中に、ジョーノはネゴを救出しようと館に向かうのをミオニスに止められていた。無論向かえば死ぬという現実的な危機感はあったが、同時にネゴをジョーノが気にかけているのが気にくわなかった。

「細立は脆いちゅうとろうが!」

「だから一緒に来てくれよ!」

「っ、い、いやじゃあ‼ 逃げるんじゃ!」

「護るからよお―」

「御二方、まずは生き残るのを目指しませんと」

 シロコーンの言で二人は我に返った、戦争の真っただ中に身を置いていることをすっかり忘れていた。この間に何の攻撃もされなかったことは幸運に違いなかった。

「ほわっ」

「ニュプトル!」

「平気だあ、おいらこういうのには強いんだあ」

 飛んできた岩の直撃を、自身の体毛を操り衝撃を殺す『毛毛連』で防いだニュプトルは平然と立ち上がった。シロコーンやニミーらも危機には敏感で、むしろミオニスとジョーノこそ丸裸だった。

「確かに生き残らねえとネゴさん助けるも糞もねえ! ミオニス抱いてくれ‼」

「わしがおるからあの細立いらんじゃろが」

 文句を言いながらも、ミオニスはジョーノを抱き寄せた。

「ようし、エルファンの『見上げる者よ』‼」

 透明な、しかし目を凝らせば見えるほどの色合いの巨人が心臓部にジョーノたちを取り込んで発生した。魔人の巨人族でさえ見上げる程の巨大さで、人型ではあるものの細部は省略された子供の絵のような巨人であった。

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