第20話 震誕
翌早朝、再度両軍は激突した。
相も変らぬ遠方からの撃ち合いで、セシュン軍の攻撃が積極的でないのをジョーノに恐れをなしたのだと一部の魔人たちは合点し士気を上げたが、リオールやミオニス、そしてジョーノ自身もそうは思っていなかった。
リオールはセシュンを知っているがゆえに、兄の魔人らしく正面から叩き潰すことに重きを置いていると同時に勝利のためには奇策も辞さない気性を備えていることを危惧している。
ミオニスは、味方の浮つきと対を成すような秩序だったセシュン軍の動きに不穏を嗅ぎ取っていた。
ジョーノは、ただ勘で、あまり状況が良くないことを察知していた。
「ミオニス、俺は今全力でやってるけどよ、やっぱり変だよな」
「防壁を厚くしたんじゃろな」
昨日と同じく、ジョーノはセシュン軍へ様々な『邪道』な『異能』を用いていた。しかし、それは前回のように立った効果をあげていない。全く通じていないわけでもないのだが、範囲も効果も目に見えて小さくなっていた。
理由は単純で、ジョーノの使用するような『異能』への警戒を強めているからだった。当初は面食らったものの、ジョーノの『異能』が想定していない殺傷を念頭にしていないものだと判明すればそれを封じるために防壁を重ねれば良いだけだった。
あくまで予想していなかっただけで、対抗手段がないわけではなかった。時間をおいて部隊を編成さえすれば封殺も可能である。
にも拘らず、攻撃に積極性がないのがリオールらの懸念であった。
「やめやめ、疲れるだけだなこりゃ」
「狙いはなんでしょうか?」
シロコーンやニュプトルらが集まってきた。ジョーノに遅れたものの、彼らも違和感に気づいてきた。
「そこがわしにも―」
それは、後方から鳴り響いた。確認のために振り返った者は例外なく驚愕の声をあげた、本拠地である館が宙に浮いていたのだ。
否、館が巨人よろしく人型に変形していた。負荷で砕けた玄関から、底冷えのする叫び声が発せられていた。
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