第14話 小さな懇願

 先兵の全滅で、ミオニスの、というよりもニュプトルの罪は赦された。部屋に戻ることを許可され、偵察の任も解かれて同盟主として扱われた。

 さらに、ニュプトルが完全にミオニスの指揮下に入った。戦果の報告後にニュプトルがジョーノに求めてきて、ミオニス、リオールに確認したところ認められたのだった。

 シロコーンの言では、ジョーノの力を見てすり寄ったとのことだが、ジョーノはそれ以外の理由を感じていた。結局のところ、一人きりでは寂しいのだろう。盗賊から逃げなかったジョーノには理解できる心情だった。

 ネゴは、自身がいよいよ戦争の深みに巻き込まれるとわかってから部屋から出てこようとしなくなった。夜になればジョーノに体を重ねに来たが、それは繋ぎとめるための誘惑と言うよりも不安を紛らわせるためのそれが大きかった。考えてみると、周囲には魔人しかおらず気軽に話せる相手もいない。如何に豪胆な彼女でも参ってしまうのは仕方がないことだった。

 ミオニス、シロコーンは連日リオールや他の魔人と会議を続けていた。セシュンの軍はあれから接近してこないものの、斥候の類の目撃情報は頻繁にあり、いずれ軍勢がやってくるのは明らかだった。ジョーノが創り出した砦はそのまま前線基地にされ、今では多数の魔人が駐在している。

 ジョーノは、訓練に日々を費やしていた。ミオニスは中々捕まらなかったので、ニュプトルを共にした。『異能』を読んだりするくらいなら彼にもでき、ニュプトルも他にすることもないので従っていた。

「ニュプトル様」

「んあ? 二ミーとこのだ」

 その訓練の最中、とある魔人が声をかけてきた。小柄で鼠の耳と鼻、そして特徴的な髭をたくわえた老いた魔人だった。子鼠族、人からはラットンと呼ばれる種族である。

「二ミーって、ミオニスとニュプトルの妹だっけ?」

「んあ、そだ」

 その老子鼠はミオニスへの面談を求めてきた。ミオニスに伝えると了承し場を設けさせ、ジョーノとニュプトルも出席させられた。

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