第13話 露払い

 そして、それは突然に来た。シロコーンへと見張りを任せ、食事のち休憩を取ろうとしていた瞬間にジョーノは巨大な地響きを聞いたのだった。

「来ましたよ!」

「敵襲かよ‼ 何がどうなったんだ⁉」

「山を崩してきたんですよ‼」

「山⁉」

 あり得ないと続けそうになって、その山を作ったのはそういえば自分だと気づいてジョーノはそれを止めた。

「で、で?」

「3000くらいの兵が控えてます、すぐにやってきますよ」

「案ずるんじゃねえのう」

「ミオニス‼」

「わしらの初陣じゃ、いっちょ派手にしてやろうじゃないか」


 砦を飛び出た一行は、えぐれた山とその向こうから進軍してくる魔人の軍を確認した。ネゴはどこかに逃げている。

「よ、よよよよし‼ お、俺はいつでもいけるぞ‼」

「緊張しすぎです」

「『紅瞳』‼」

 瞬間、山を貫いた道が爆発し周囲の岸壁が軍へと降り注いだ。爆破と土砂に苛まれ、軍はあっというまにその姿を消してしまった。

「わしを忘れてるのかの? 阿呆どもめが」

 ミオニスは得意げにジョーノを振り返った。

「すんげ、皆やられちまっただよ」

「残りがないでもないがな、上を見てみい」

 上空に影が見えた。魔人には当然飛行能力を有するものもおり、地上とは別の方法で進軍していたのだ。が、その数は数えられるほどに少なかった。

「どうれジョーノ、おどれの出番じゃ」

「そ、そうだな」

 ジョーノは迫る空影を見ながら身構えた。この時のための訓練である。

「……ああ! くそ! ミオニス! 傍に来てくれよ!」

「あん? ……しかたないやつじゃの」

 ミオニスが間近にいると、間違えれば殴られると言う恐怖と緊張、何より勇気が湧いてくる。

「……怒鳴り屋オポの『天降矢』‼ 出ろ‼」

 突如煌めいた雷の群れが空を割って降り注ぎ、飛んでいた魔人もろとも残った山を穿った。

「わあ!」

 余波でジョーノは転び、ミオニス達も押されないように踏ん張らざるを得なかった。

 どうにか起き上がり、まだ雷の残滓でちらつく瞳で確認をしたジョーノに飛び込んできたのは、ほとんど平地になってしまった黒焦げの残骸だった。

「少しは使い物になったようじゃのう」

 ミオニスは満足そうに呟いた。

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