第6話 #登川誠仁

 登川誠仁は、沖縄のミュージシャンです。2013年に80歳で亡くなっております。

 登川誠仁は琉球民謡登川流宗家、琉球古典音楽湛水流名誉師範(なんのことやら)で、通称「誠小(セイグワー)」、三線さんしんを2本ずつ弦を張り、六線奏者として、「沖縄のジミヘン」と呼ばれた人。(本当に早弾きもできるらしい)。歌詞はウチナーグチに拘り、ほぼ何て歌ってるかわかりません。

『ハウリング ウルフ』の7曲目「ペストパーキンママ」では、歌詞の意味がピストルを降ろしてくれ、ピストルを持ったママ、ピストルを降ろしてくれ、といった戦争中の悲痛な叫びのような歌詞なのだが(ちゃんとした歌詞知らないです)、何言ってるかわからなくて、三線のリズミカルな音が、とっても楽しそうに聴こえてしまいます。

 多分、米軍基地の人たちが歌っていたのを、昔は楽譜なんかなければ歌詞カードもなかったでしょうし、自力で耳コピしたんではないかと思います。

 音は楽しめ、歌詞なんてどうでもいい、深いこと考えずに歌っちゃえみたいなノリが、沖縄をここまで復興させたのではないか、とちゃんと歴史の勉強をしてない僕が勝手に感じるほど、楽しくなっちゃうのが沖縄音楽かもしれません。


 僕、すぐにハマりやすいので、登川誠仁もそのうちの1人。30歳くらいの時に初めて小さい長男を連れて家族で沖縄に行って、「沖縄最高!」となり、静岡でも沖縄を堪能するためには沖縄料理と沖縄音楽。


 大の苦手だったレゲエも、初めてサイパンに行った時、ホテルのプライベートビーチでかかってたのを聴いて、日本に帰ってくるや否やレゲエCDの探索に走るのです。

 そして日本の南国、沖縄。妻の友達が以前転勤で沖縄に住んでいた時、まだ子供がいない時代、妻と僕の休みが全く合わないので妻だけ友達の家に泊まりに行って、「沖縄良かったよ、何食べても美味しいし、海は綺麗だし」と、いつか一緒に行こうと言ってから何年も経ってしまい、やっと子供が3〜4歳くらいの時に妻が無理やり有給を使って僕に休みを合わせてくれて、「俺はハワイに行きたい」と言っていたが、日数とパスポートと金額の問題で、沖縄旅行になりました。


「沖縄って言っても、どうせ日本だろ」と否定的な態度で旅行に。妻曰く、僕は初めてのことはなんでも最初否定的で、結果1番ハマりやすく、段取りも組まないくせに自分が1番楽しんでる、とのことです。結婚前のハワイ旅行も、「ハワイって日本人ばっかりなんだろ、わざわざ行くところじゃない」と言っていたが僕が、帰りまでには親指と小指を立てて「アロハ!」なんて言って、ウクレレやオムニバスのハワイアンCDを買って、「新婚旅行は絶対ハワイ!」と別のところに行きたかった妻を困らせるのでした。(結局ハワイでした)


 その頃、子供がいたこともあって、料理全然ダメな僕も、妻が下準備をした離乳食を作ることをキッカケに、小林ケンタロウの料理本(ケンタロウさん!早く体治ることを願ってます)を買ってきて夕飯に挑戦するなどして、妻はそれを褒めてくれて、僕は褒められて伸びるタイプで、おだてたり褒めたり妻は大変です。

 ケンタロウ氏も、「料理作り、食べるまでがマイルス・デイビスのアルバム1枚聴くのに丁度いい」と言っていたので、音楽と料理は切り離せないという持論が出来上がりました。


 沖縄から静岡に帰ってくるや否や、静岡にも沖縄のアンテナショップ「わした」があるんですね。沖縄食材、泡盛、そしてCDや本、三線まで売っている。ブルーシールアイスも食べれて、まさに静岡の中の沖縄。具志堅用高さんの伝説本「ちょっちゅね」も、わしたで買いました。


 沖縄旅行で登川誠仁を見たわけでも知ったわけでもなく、まずはTHE BOOMの「島唄」、BEGINのCDから始まり、喜納昌吉&チャンプルーズ、ネーネーズ、色々買いまくって、なんだこのお爺さん?と見つけたのが登川誠仁。(ちなみにうちの息子は、ネーネーズの『バイバイ オキナワ』を聴くと、旅行から帰る寂しい気持ちを思い出すそうです)


 それまでは、沖縄というとDA PUMPと安室奈美恵くらいしか知らないし、沖縄出身で沖縄音楽ではないし、全く少ない情報量の中辿り着いたのが登川誠仁。

 登川誠仁は、他の沖縄ミュージシャンと比べても、何がどうなのかわからないけど別格。


 聴きやすい歌いやすい沖縄ソングと違い、ウチナーグチで聞き取りにくいのに、なんか楽しくなっちゃう、意味がわかんないから洋楽聴いてるのと同じで、うまく言えないけどカッコいいのです。


 海ぶどうと、これさえあれば(泡盛は強くて飲めないので)オリオンビールで沖縄気分♫

 登川誠仁の曲を聴きながら、沖縄舞台の小説を思案しているのに、聴いてるそばから脱力感が襲ってきて、手首をクイクイ振って、カチャーシーを踊っていることに気づきます。


 ちなみに登川さん、映画にも出ていて、僕のオススメは笑えて泣ける『ホテルハイビスカス』に、沖縄妖怪キジムナーの役で出演してます。といっても普通にアロハシャツというかかりゆしウェアの叔父さんがリアカーを引いて登場し、主役の女の子に話しかけるのが登川誠仁。モニョモニョっと話しかけて、自分の住処の木に案内するのですが、キジムナーの引くリアカーの後ろには、手書きで「BMW」の文字が。外車です。

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