第5話 サントラ#「犬、走る」

 これは崔洋一監督の映画で、主演が岸谷五郎さんと大杉漣さん。新宿警察署生活安全課の(悪徳)刑事の中山を岸谷五郎、在日コリアンの情報屋・秀吉を大杉漣さん。この映画は1度、松田優作さん、ビートたけしさんで撮る予定がお蔵入り(松田優作さんが亡くなったためと記憶しています)になってます。


 この映画の特徴は、とにかく走り回ってる。ネタバレになるので内容は避けておきますが、投げてる時の秀吉の「ぐわぁ、はぐわぁ、んがぁ」と言いながら走っている大杉さんを見てると、心配になってしまいます。

 この映画で、僕はハードボイルド系やVシネのヤクザ映画ばかり見ていたんですが、ドタバタ系のちょっとコミカルなのが好きになっていくんですねー。僕の3作目「ダブルプレイ」の佐々木博が逃げるシーンを書いてる時は、この大杉漣さんが頭に浮かんでます。

 当時、大杉漣さんが出てる映画を網羅しようといっぱい見たため、今年亡くなってしまった時はちょっと立ち直れなかなってました。「ゴチバトル」で大杉漣さんが出てないのを見ると、「あー、亡くなってしまったんだなあ」と思ってしまいます。


 崔洋一さんと言うと、高校生の時に女の子と映画(とりあえずデートというと映画が定番でしたね)を見に行こうと、当時映画祭というのがチケットを買えば、当日限り何本でも映画を観れるというイベントをやっていて、とりあえず内容も知らずに入ったのが「月はどっちに出ている」。ルビーモレノの裸のシーンばかりで、うぶな高校生にはとても気まずい雰囲気になってしまったのを覚えています。


 この『犬、走る』を見たの多分23〜24歳くらいですかね。それまでパンクやミクスチャーを主流で聴いていて、このサントラはその宝庫。この後、昔見た映画の曲が聴きたくなり、急にサントラCDばかり買うようになる時期です。ちなみに余談ですが、岸谷五郎にもハマり出し、近所の美容院に雑誌を持っていき、岸谷五郎の写真を見せ同じ髪型にしてもらうのでした。いつも格好から入ります。



 タイトル曲の鈴木茂&Night Surfersの「DOG RACE」は淡々ととした車の移動映像とぴったりで、ベンチャーズっぽいインストの曲。

 当時ミクスチャー系が流行っていて、このサントラにも『麻波25』や『小島』『山嵐』の曲がドカンドカンと流れてるわけです。


 その中でも1番好きで何回も聴き続けたのが、Kim Duc Soo-Samul Noriの「Things Change」。メロディが英語で女性が歌っていて、韓国語(ハングル)のラップが入ってきます。イントロが日本で言うところの囃子はやしみたいな感じとなんとなくレゲエっぽい気怠い感じで始まり、この英語とハングルが交互に、まったり続きます。聴くたびに、カッコいいです。


 ※映画のネタバレ注意※

 これは映画のエンディングで、岸谷五郎が疲れ切ってソファに座ったところ、ポン、と入りエンディングロール。鳥肌立ちます。


 このKim Duc Soo-Samul Noriというミュージシャン、検索しても日本のネットにヒットしません。英語やハングルのページには繋がるのですが、画像で出てくるのは太鼓のオジさん。多分「チャング」という楽器でしょうか。腹に抱えて、右左右左と独特な叩き方の太鼓でしょうか、多分この人チャング奏者なのではないかと認識しております。誰かご存知の方、教えてください。


 高校生の時に吹奏楽の顧問、「通称バーラ」に連れてってもらった『鼓童』のコンサート。『鼓童』は佐渡島の太鼓芸能集団です。それと沖縄で有名なエイサー集団、『龍神』。最近では時空を超えてやってきた太鼓集団『DURM TAO』。太鼓の集団演奏って、本当にカッコいいんです。猛々しいというか、多分自分の血の中にも狩猟民族の血が流れていて、今から狩りに行くぞ的なアドレナリンが出ちゃうんでしょうね。♪エイサー!


 この頃韓流ブームが若干始まりつつあり、映画『シュリ』や『JSA』で、ハン・ソッキュやソン・ガンホ、チャン・ドンゴン、イ・ビョンホン、その後冬ソナだったりK-POPが流行り始めるのです。そのブームに乗っかり僕も「映画のセリフを丸暗記で覚えるハングル講座・CD付」みたいな本でハングルを勉強し始めます。が、誰もKim Duc Soo-Samul Noriを知らない。僕も、この映画サントラでしか知らない。でもこの1曲だけで、むしろこの1曲だけの方が最高のまま聴き続けられるんではないかと、いまだに聴く1曲です。


 やっぱり物語と音楽はセットなんですね。自分でも小説書く時、こんなシーンを書きたい、というシーンに合ったBGMをかけ、ひたすらリピートし続けて書くんです。

 そうすると自分の小説が映像化されたらのオリジナルサウンドトラックが出来上がってしまい、こっちが勝手に選んでるもんですから予算とか無く、「これ全部採用したら、どんだけ著作料かかるんだろう?」と映像化も、まだ書籍化すらないのに、要らぬ心配をするのでありました。(アマチュア作家あるあるだと思います)

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