やっぱり瞬が嫌いな我
何で会いたくなかったかって!?
そんなの決まっている。
どうやら、瞬のようなタイプは、無条件にモテるらしいからだ。
別に他の
「なんで、瞬がいるのだ?」
「ふふっ。真央君、その喋り方相変わらずだね」
「ぁあん!? っが!!」
瞬のその言葉に、軽く
痛い。
なんで我が殴られるのだ!? 瞬がなんかイラッとくる喋り方をしてきたのが悪いのではないか!!
沙羅は、部屋の端から椅子を持ってきて、瞬に座らせる。
「叶先輩、どういうことですか?」
「いや~、視えてる未来の中に……、いくつか瞬のおかげで助かってるのがあって……。まあ、少しでも助けになるなら引き込んじゃおうと思ってネ」
いくつかって……、一体どれだけ我は殺されかけるというのか……。
「ただの人間の瞬が我の何を助けられるというのだ?」
「ただの人間なのはあんたもでしょ? まあ、ただの人間だったら命を狙われることなんかないし、こんな『特別』、無駄に面倒なだけよね」
沙羅が鋭く突っ込んでくる。
……ぬぐうぅっ!!
瞬を部室に招き入れた後、元の席に座った叶は、また眼鏡を外して我をじっと見つめる。
整った容姿をしているから、見つめられると少したじろいでしまいそうになる。
「う~ん、マオ君とサラちゃんの世界の関係者じゃないって、狙ってる誰かに判断されるのが、ポイントなのかな? 断定はできないけど、私や瞬がいると、巻き込んだり死に至るような攻撃は仕掛けて来にくいみたいだネ? 今視える感じだと、先生がいる時は普通に狙われてるし」
「ということは、少なくとも我とメリナの関係を知っている者ということか」
全く、厄介なことだ。
だがメリナと我の関係を知る者となれば、やはり元の世界……しかも城のあった首都ケレディの周辺に住む上位種族の何者かということになるだろう……。その内の誰かが、この世界に転生していると考えるのが妥当だ。
あの城にある玉を使ったのか、他に方法があるのかは知らないが。
早急にこの街のどこかに我の見知った顔の者がいないかどうか探さなければ。
なにせ、どうやら……我らの顔の造形そのものは、割と前の世界のものと変わらず成長するようだからな。髪の色などは流石にこの国のものに落ち着くようだが。
「では、私の代わりに先輩たちが傍にいた方がいいということですか?」
「えっ!?」
そ、そんな……。
「それは違うよ~。結局私達じゃマオ君を守り切るのは不可能だし、サラちゃんがいる方がマオ君が痛い目を見る回数は結果的に減ってる」
「そ、そうだよな!?」
さっきの硬球だって、沙羅がいなければ致命傷とはいかないまでも、脳天に直撃していたのは間違いないだろう。
「そうですか。じゃあ仕方ないですね」
沙羅が、溜息を吐きながらそう言った。
そんなに、我と一緒にいるのが嫌か……。あからさまに溜息を吐くほどにか……。
「ちょっと、叶ちゃん。呼んでおいて僕を置いてきぼりにするのはやめてよ。一体何の話をしてるんだよ? 僕は叶ちゃんが来いって言うから来ただけなのに。真央君を守るってどういうこと? あと、ごめん。最初に聞くべきだったんだけど、この……すごい恰好をした女の子は一体誰? なんで小学生がコスプレして学校に?」
瞬がメリナを指差す。
コスプレ……、確かにそうとしか見えないか。
「魔王様、私元に戻った方がいいですか?」
「ああ、そうしてくれ」
「『
もくもくと三度目の煙が上がって、普通のスーツの筈なのに劣情をもよおす様な、ムチムチした担任教師更科の姿へと戻るメリナ。
「!? ?? !!???」
ぽかんと口を開けて、瞬は更科を凝視する。
うーん、そのイケメンの面をあほみたいに崩した顔、ナイスだ。
ナイスリアクション!!
叶がちょっとおかしいだけで、普通の人間は、魔法を見ればそうなるのだ。
まあ、叶には千里眼という魔法のような力が備わっているから、不思議なことに耐性があるのかもしれないな。
しかし、服まで元に戻るとは、メリナの使う『
『
「私、更科みちるよ。この学校の1-3、魔王様と勇者のクラスの担任なの。よろしくね☆」
「おい、クラスでうっかり魔王様なんて呼ぶんじゃないぞ更科先生」
「分かってるわよお、甲斐田君」
二人でニヤリと顔を見合わせる。
「今のを見て分かる通り、沙羅ちゃんも含めてこの三人は、普通の人間じゃないんだよネ。私達とは別の世界の住人だったんだって。マオ君は魔王で、サラちゃんは勇者で。この更科先生はサキュバスなんだよ」
「……も、もしかして小さい頃に真央君が言っていた話? あれ……幼馴染二人の、作り話じゃなかったの?」
少しまともな表情に戻って、瞬はそう返す。
「そういうことだネ」
「作り話だったら、どれだけ良かったか……」
沙羅が心底残念そうに呟く。
「まあでも、瞬が昔この二人に会ってなかったら、私も未来視できずに、今朝マオ君が死んでたかもしれない。そしたらもう11月までのカウントダウンを待つだけだったからネ。だからマオ君も、瞬に感謝してよネ?」
「……」
女々しいと言われるかもしれないが、我は昔のことを割と根に持つ方なので、素直に瞬がいてくれてよかったと感謝の言葉を投げかけることはできなかった。
瞬の裏切りを、我は片時も忘れたことなどない。
だから、感謝する気にはどうしてもなれない。
どんな顔をしていたのか自分でもよく分からないが、恐らく渋い顔をしていたのだろう。その我の顔を見ながら、「まったくもう……」と沙羅が呟く。
なぜ我を守る必要があるのか、そして11月22日までに我が死ぬと、この世界がどうなるのか、沙羅と叶が淡々と説明をする。瞬はそれを聞きながら、青ざめたり我の顔をチラチラ見たりしていた。
我の横に立っていた更科は、「私も、魔王様をお守りします。魔王様が大切なのはもちろんですけど、何十年も生きてきたこの世界も、大切ですから」と、我に囁いた。
「――そういうわけだから、11月22日まで、本当に、本当に申し訳ないんだけど、こいつを守ってやってほしいの。お願い」
沙羅が、瞬に頭を下げる。
「頭を上げてよ、沙羅ちゃん。まあ、
「というか、協力しないと結局私達も死んじゃうだけだからネ」
こうして、我を守る人間が揃った。
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